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節税メリット大きい自営業 小規模共済や青色申告利用

2017/2/4

 個人事業主などとして働く自営業。最近はIT(情報技術)分野を中心に企業から独立する人が増えているが、節税の巧拙が手取り収入を大きく左右する。まずは小規模企業共済や青色申告といった税制優遇メリットを十分に活用するのが基本だ。法人化すれば節税効果が大きくなる場合もある。

 「所得控除になる定期預金のような有利な仕組みなのに、意外に知られていない」。起業に詳しいファイナンシャルプランナー(FP)の氏家祥美氏がこう指摘するのが小規模企業共済。個人事業主などがいずれ第一線を退くときのために毎月お金を積み立てるもので、月7万円まで税金がかからない。これに税率をかけた分だけ節税になる。

 事業をやめたり、子どもに譲ったりした場合に同共済で受け取れる「共済金A」の利回りを計算すると、年率1%台に相当する。15年以上の積立期間があって65歳以上なら、事業を継続しつつ「共済金B」を選択することができ、これも利回りが約1%。管理手数料のかかる個人型確定拠出年金(DC)で超低金利の定期預金で運用するよりも手取りは多くなる。

 20年未満で中途解約すると元本割れになるが、仮に資金繰りが厳しくても掛け金は月1000円まで減額できるため継続は難しくない。同共済を運営する中小企業基盤整備機構(東京・港)によると、2015年度は共済金AとBが受取件数の84%を占めた。税理士の今田隆幸氏は「個人事業主にとって、ほぼデメリットのない仕組みになっている」と加入を勧める。

■65万円の特別控除

 次に青色申告をみてみよう。税務署に青色申告を利用することを届け出てから損益計算書と貸借対照表を添えて確定申告をすると、65万円の特別控除がある。こうした複式簿記はハードルが高い印象があるかもしれないが、税理士の高橋敏則氏は「事務経験がある人なら、1万円くらいの市販の会計ソフトで作成できる」という。分からないことは税務署に聞いてもいいし、面倒なら帳簿や申告書の作成を10万~20万円ほどで税理士に依頼できることも多い。

 個人事業主は税務上、自分自身に給与は出せない。ただし青色申告をすると、生計を同じくする配偶者など家族には事前に届け出た金額の範囲で「青色事業専従者給与」を支払える。その分だけ自分の課税所得を減らせるわけだ。

 配偶者の実際の働きに対して給与が明らかに過大であれば税務署に指摘される可能性があるが、実務上は「月十数万円までの給与なら問題にならないことが多い」(高橋氏)とされる。

 このほか、赤字が出た場合に翌年から3年間、所得と相殺できたり、オフィス家具や飲食店のキッチン設備なども30万円未満のものなら減価償却せず一括して経費に計上できたりする。

 青色申告の個人事業主から株式会社など法人に衣替えするとどうだろうか。一概には言えないが、年間所得が1000万円くらいであれば節税になる可能性が大きい。まず自分自身への給与を経費に計上でき、給与に給与所得控除が適用される。さらに税理士の井上栄次氏は「配偶者など家族への給与も青色申告のような制約が少なく、所得分散による節税がしやすい」と指摘する。

 年間所得1000万円の事業で試算してみよう。青色申告の個人事業主が配偶者に年間103万円の給与を払う場合、納める税金は事業税を含めて231万円。これを法人化して夫婦2人にそれぞれ500万円の給与を出せば法人所得はゼロで、夫婦2人と法人の税金は合わせて112万円にほぼ半減する。所得税率が23%から10%に下がる効果が大きいからだ。

■経費しっかり計上

 自営業で働くなら事業規模にかかわらず、認められる経費はしっかり計上することも節税の基本だ。自宅の一部をオフィスや作業場に充てている場合、賃貸なら家賃、持ち家なら建物の減価償却費がそれぞれ事業用に相当する面積などに応じて経費になる。

 持ち家の場合は住宅ローン控除にも影響するため、節税の計算がややこしいが「新築物件の広いスペースを事業に使っているなら、減価償却メリットは小さくない」と高橋氏は話す。取引先の慶弔費、電車賃など領収書のない支出も、式典の案内状を取っておいたり、自分で明細書を付けておいたりすれば、税務調査で認められやすい。

 足元ではソフトウエアの設計・開発やウェブデザイン、ライターや翻訳・通訳といった分野でフリーランスとして働く人が増加。中小企業庁がまとめた「小規模企業白書」によると、フリーランスになった人の約4割は大企業、中小企業の出身者が占める。

 自営業は会社員などの給与所得者に比べて節税の余地が大きい。起業のリスクや苦労に見合う収入が得られるよう税務面からの経営チェックが欠かせない。(表悟志)

■優れた事業計画に補助金200万円も
 新しく起業する場合、優れた事業計画であれば国の「創業補助金」を受給できる可能性がある。2016年度は全国で143件が対象になった。補助金は設備投資や人件費、広告宣伝費など起業にかかる費用に充てることができる。
 補助金は金融機関から融資を受ける場合は最大200万円で、補助率は2分の1。経営や財務、販路開拓、人材育成に関する研修の受講のほか、17年度からは1人以上の雇用が条件になる。過去にどの地域でどんな事業テーマが対象になったかは中小企業庁サイトなどで確認できる。地方では地元特産品を生かしたレストランなど地域密着型ビジネスが多いようだ。

[日本経済新聞朝刊2017年2月1日付]

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