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所得別に試算 税と社会保険料、1000万円超で負担増

2017/2/5

 2017年以降も税金や社会保険で制度や仕組みの見直し・改定が続く。現役世代は年収によって負担額が変わるが、中でも1000万円を超える世帯で支払う金額が大きく増える。手取り収入減の影響を抑えるには、家計に合った防衛策が必要だろう。社会保険・税金の今後の予定と負担増加について調べてみた。

 17年からの主な変更点は表Aの通り。会社員世帯に影響の大きい「給与所得控除の縮小」をはじめ、全体的にはさらなる負担増につながる見直しが目立つ。

 ポイントを社会保険から見ていこう。

 会社員らが加入する厚生年金保険については今年9月、保険料率が18.3%(報酬額比、労使で折半)に引き上げられる。料率はこれまでも毎年、上がり続けてきた(図B)。

■総報酬割に移行

 今回の改定を機に保険料率はひとまず固定される。現役世代には朗報だが、それでも保険料の支払額をみれば、例えば年収700万円世帯でおおむね60万円台。家計には重い負担だ。

 健康保険と介護保険で注目すべきは、現役世代への負担の割り当てが段階的に見直される点だ。「ケースによるが、高所得者ほど負担は増える可能性が高い」(社会保険労務士の池田直子氏)。どういうことか。

 健康保険と介護保険の保険料は、加入する医療保険制度ごとに徴収される。大企業の会社員ならそれぞれの健保組合、中小企業なら全国健康保険協会(協会けんぽ)といった具合だ。

 各制度が負担する介護保険の保険料額はこれまで、加入者の「人数」に比例させる形で国が決めていた。今年8月からは「収入」に応じる方式(総報酬割)が一部導入され、4年かけて全面移行する予定だ。

 給与水準が高い健保組合ほど保険料率は上がりやすい。厚生労働省の試算によると、1000を超える健保組合と多くの共済組合で上がり、協会けんぽや400弱の健保組合で下がる。

 健康保険では、保険料の一部で負担している「後期高齢者支援金」で収入に連動するこの仕組みを15年から一部導入し、今年4月から全面移行する。高所得者への影響が大きそうだ。

 次に税金を見ていこう。

 給与収入から経費として差し引いて納税額を減らすことができる「給与所得控除」は縮小の方向で見直しが続く。以前はどんなに収入が多くても控除できる額に制限はなかったが、13年から上限が設けられた。

 対象となる年収水準も切り下がってきている。今年から1000万円を超えると、控除額220万円が上限となる。昨年は年収1200万円超(上限230万円)が対象だった。

 税関連でもう一つ現役世代への影響が大きいのが「配偶者控除」。18年から、配偶者の収入要件が緩和(年103万円→150万円)される一方で、世帯主に収入要件が加わる。

 世帯主の収入が1120万円を超えると控除額が徐々に減り、1220万円を超えるとゼロになる。世帯主の収入が多いと控除できる金額が減り、増税となる可能性が出てくる。

 高所得者を中心に負担が増すような見直しが並ぶが、年収別にみると負担額はどうなるのか。ファイナンシャルプランナー(FP)の八ツ井慶子氏に試算してもらった。介護保険の総報酬割が全面導入される20年時点の負担額を、16年と比べたのが表Cだ。

 20年時点の健康保険料率は、健保組合の過去10年平均の上がり幅(年0.18%)が続くとして設定。介護保険料率は厚労省のデータを基に16年比1.14倍の水準とした。

 試算の結果、負担の増加額(手取りの減少額)は年収500万円、700万円の世帯で2万円強となる。1000万円では3万7000円だ。

■独自の防衛策を

 年収が1000万円を超えると、給与所得控除の縮小の影響が出てくる。半面、全額所得控除できる社会保険料が増えるため課税所得の増加は抑えられる。

 所得税・住民税が増えるのは年収が1100万円を超えたあたりから。1150万円、1300万円でみると、社会保険料増とのダブルパンチで、手取りの減少額は約10万円、約20万円にも上る。

 これらの世帯では配偶者控除の改正も増税の一因となっている。試算結果からも、税・社会保険料の負担は幅広い所得層で増え、特に高所得の層で影響が大きいことが確認できた。

 FPの深田晶恵氏によると、負担増はここ15年ほどですでに家計を直撃。「年収700万円世帯の手取りは15年前に比べて50万円程度も減っている」。今後の影響にはなおさら注意を払う必要がある。

 大切なのは「わが家の場合、自分の場合はどうなのかという視点を持つこと」(深田氏)。源泉徴収票などで額面や手取りの年収を押さえ、今後の展望を頭に描く。健保組合の動向や予算にも敏感でいたい。

 そのうえで家計に見合った対策を考える。妻が専業主婦なら働きに出るのが手っ取り早く手取りを増やす手段だ。「手取り収入が増えにくい時代だからこそ、どう使うかが大事な時代だといえる」(八ツ井氏)。手元資金に余裕があるなら、資金運用を考えるのも一案だろう。(土井誠司)

[日本経済新聞朝刊2017年2月1日付]

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