火星に生命は? 地中深くの極限環境微生物に期待

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/2/19
ナショナルジオグラフィック日本版

どう考えても生物など存在しそうにない場所で生き延びられる生物がいる。写真の微生物は、南極の氷の1キロ近く下で採取された。火星の生物もはるか昔に地表から撤退して、地中深くの氷の洞窟に潜っている可能性があるのではないだろうか。(Trista Vick-Majors and Pamela Santibanez, Priscu Research Group, Montana State University, Bozeman)

火星に生命は存在するのか、かつて存在したことはあるのか――。これはあらゆる火星探査計画が追究している大きな謎だ。米国のバイキング1号と2号が火星に着陸してから、すでに数十年の月日が流れている。データは何年もかけて解析され、26回もの生命検出実験が行われたが、望む答えが返ってくることはなかった。バイキングプロジェクトに関与した研究者のほとんどは、火星で生命は検出されなかったと考えたが、この判断に納得しない科学者も一部にいたため、探索は続けられた。

「バイキングのミッション以来、高度な科学技術を取り入れた火星探査が盛んに行われてきました。現在も火星の気候変動や、過去に存在した生命の痕跡の可能性について調査が進められています。また、火星で生物が暮らせるかどうかという点も、大きな研究テーマです」。こう話すのは、NASAのゴダード宇宙飛行センターの主任研究員ジェームズ・ガービン氏。彼が注目するのは、最近になって発見された有機分子の存在や、大気中に微量に含まれるメタンガスの量の変動だ。過去の火星の地質的変化には堆積過程が関わっていた形跡があり、水が重要な役割を果たした可能性が強く推測される。

火星探査車キュリオシティは化学成分の分析装置を備えており、掘り出したサンプルを幅広く分析できる。キュリオシティはドリルで穴を開けた場所で、磁鉄鉱らしき青灰色の尾鉱を発見した。磁鉄鉱は、生命との関連が推測される鉱物だ。(NASA/JPL-Caltech/MSSS)

「現在は死に絶えているかもしれませんが、かつて火星で生命が誕生したことはあるのかという問いは、私たちを引きつけてやみません」。こう話すのは、アリゾナ州ツーソンにある惑星科学研究所の主幹研究員ウィリアム・ハートマン氏だ。彼は、水について調べること、特に過去数百万年間における水の変遷と、水が火星の気候に与える影響を把握することが重要だと主張する。

「火星での過去の水の様子や現在水が果たす役割、そして現時点で水や氷が火星に存在するかどうかを調べるためには、地中でどのような過程が起こっているかを考えなければなりません。もちろん、火星の地下に大量の氷が埋まっていることは、バイキング号の時代から知られていることです」

火星にいくつもある地下の帯水層がずっと互いにつながっていたかどうかは、大きなポイントになるかもしれない。惑星の進化とともに移動する地熱地域を、微生物がわたり歩きながら生き延びた可能性があるためだ。

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