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発信できる人になる! 苦手克服、プロが勧める上達法

日経ウーマンオンライン

2017/2/6

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 仕事でもプライベートでも、発信力を高めることができれば、やりたいことができる環境が整う時代。せっかくの実力が発信力の弱さで埋もれぬよう、さまざまな実例をあげ、女性らしくしなやかに自己主張ができるようになる手法を、プレゼンノウハウに詳しい池田千恵さんが指南します。

■発信ベタを直してから発表しようとしては遅い

 「発信が苦手ですが、どうしたらよいですか?」と聞かれたら、私は第一に「苦手なままでいいのでとにかく人前にでたり、ネットで考えを発信する練習をしたりして慣れてください」と答えます。なぜなら、発信が苦手だと自覚している人ほど、「話し方」「うまいコミュニケーション」などに対する知識を得ること(インプット)に貪欲な一方で、実際に場数を踏むこと(アウトプット)をおろそかにしているからです。「苦手だ苦手だ」と言いながら練習をしないから、いつまでも「苦手だ」から抜け出すことができません。

 例えば私は発信力向上をテーマに講演や研修を行うことが多く、文章での発信力向上にはブログやSNSなど、自分以外の人の目に触れる場所で書くことが最適だとアドバイスします。しかしそのアドバイスを聞いて実行するのは10%にも満たないのです。10%しかできないということは、逆に言えばその10%に入れればすぐに上達するのにな、といつも残念に思います。

■最良の学びは教えること。走りながら学ぼう

 アウトプットをおろそかにしてしまう理由も分からないでもありません。苦手だ→勉強しよう→勉強しているうちに本番に→うまくいかなかった→やっぱり苦手だからもっと勉強しよう……というループにはまってしまうのでしょう。しかし、インプット過多で吐き出さないでいると、結局インプットしたものは使う機会を逃したままあなたの頭の中で腐ってしまい、使えなくなってしまいます。新陳代謝は、自然界だけでなく、あなたの脳内の知識にも起きていることなのです。

 よく、「最良の学びは教えることだ」という話を聞きます。自分の部下や後輩に仕事の仕方を教えようとすると、自分自身が分かっていないときちんと伝えることができないので、いつもとは違う頭の使い方ができ、自らの学びにもつながるという意味です。あなたが学んだ知識を、部下や後輩に教えるようなつもりで発信の練習をしてみましょう。

■「発信したい」理由をホンネで考えよう

 とはいえ、慣れないことを始めるのはやはりおっくうだし、時間がかかることですよね。「やりたくない」を「やりたい」というモードに変えるのには大きなエネルギーが必要です。そこでまず考えてほしいのが、あなたが「発信力を向上させたい」と思う理由です。どうして発信力向上が必要なのか、その状況がどれだけ切実かをよく考えてみましょう。なぜ必要かがきちんと理解できれば、あとは行動するだけ! と覚悟が決まります。

 ポイントは建前でなく、自分のホンネを見すえることです。「将来のスキルアップのため」などという耳あたりの良い言葉は建前の可能性が大きいので注意しましょう。耳あたりが良い言葉で自分を納得させてしまうと、発信力を向上させなければならない切実な理由が見つからず、つい後まわしにしてしまうのです。

 例えばあなたに「営業職なのに口ベタのままでは食いっぱぐれてしまう」という危機感があるなら、危機感がある、と認めてしまいましょう。発信力を向上させるのは手段であって、「食いっぱぐれない」ようになりたいということがあなたのホンネであり、目的かもしれないのです。

 余談になりますが、口ベタだから営業職が無理というのも思い込みのことが多いです。仕事柄たくさんの優秀な方に出会いますが、口ベタで多くを語らなくても、それが誠意を感じていい、とたくさんのお客様に支持される営業マン、営業ウーマンも数多くいらっしゃいますよ。

 笑い話のようですが、「運動したい」「早起きしたい」などずっと思っててるのにできない、という人のホンネを引き出すと、実は運動したくなかったり、早起きしたくなかったりするのです。ホンネは「健康診断にひっかからないようにしたい」「モテたい」ということがあります。だとすれば、「運動」「早起き」以外の手段で自分のホンネを満たすための方法はたくさんありますよね。

 もちろん、ホンネを探って「私はそこまで発信力を上げなければいけない切実な理由はない」と分かってしまったら、無理に発信力を上げなくてもOKです。今までそこに使っていたエネルギーを、どうか他のところに使ってください。

 ホンネを探り、「やっぱり私は発信力を向上させたい」と思ったのなら、いよいよ発信力向上のためのアクションに進んでいきましょう。

■面倒臭いことこそ、朝さっさとやってしまう

 場数を踏むためにはまず、練習する時間をつくる必要があります。慣れないことを始めるのはおっくうなので、つい後まわしにしてしまいがちなので、私がオススメするのは朝の時間に「えい!」と時間を作ってしまうことです。

 時間は貯金と似ています。給料日に自動引き落としで毎月お金をためている人は自然にお金がたまりますが、給料日の前日に余ったお金を貯金しようとしてもさっぱりたまりませんよね。

 時間も一緒です。朝起きた時にすぐに自分のための時間をつくらないと、「あれを終わらせたらやろう」「これがまだ残っている」と思っているうちにあっという間に夜中になってしまいます。

 また、夜は「たっぷり時間がある」と思ってのんびりしがちですが、結局、集中力が長時間続くわけではありません。「仕事は、完了するために割り当てられた時間に応じて複雑なものへと膨れあがっていく」という「パーキンソンの法則」を聞いたことがある方も多いでしょう。やるべきことは締め切りが長ければ長くなるほど膨らんでいって、やる必要もないことに時間をかけてしまうことになるのです。

 最近私が出版した『朝の余白で人生を変える』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)では普段昼や夜にやっていることを朝に持ってくることで、時間の余裕、心の余裕をつくる方法を書きました。夜ほっとしようと思ってもあれこれ詰まっていて全くほっとしませんが、朝すべきことを終わらせれば、いち早くほっとすることができます。「今日私は1日のはじめを自分のために使った!」という満足感が生まれますし、たとえば始業の朝9時前までにものごとをすすめよう! といったように時間の締め切り意識も身につきます。

■「朝の余白」ですべき発信力向上法

 では、朝の時間を捻出し、「余白」を作ることができたあとすべきことは何でしょうか。おすすめは次の2つです。

1.とにかくコツコツ練習を続ける

2.自分の最高パフォーマンス、最低パフォーマンスを思い出してみる

 順番に説明します。

<とにかくコツコツ練習を続ける>

 まずは、下手だという自覚を持ちながらで良いので練習をしましょう。

● 人前に出て話すことが苦手なら、大きな鏡の前で自分の姿を見ながら話したり、動画を撮ったり声を録音して、実際に自分がどんな感じで話しているかを第三者目線で確認できるようにするのがおすすめです。

● 文章を書くのが苦手なら、匿名で良いのでブログやSNSを使い、実際に文章を書いて発表するという経験に慣れていきましょう。

 なぜ練習をここまですすめるかというと、練習をおろそかにすればするほど、本当の自分の実力が見えなくなってしまうからです。「本当の私はこんなにできないわけじゃない」とか、「あのときは、たまたま体調が悪かったからうまくいかなかった」と、失敗した原因を他に求めるようになるのです。

 逆に、「大丈夫!」と思ったところまでやったのに失敗すると、とても落ち込みます。「ああ、私ってまだまだだな」と思い知らされることも多いでしょう。しかし、ここで目をそらすと、いつまでたっても「本当はもっと実力があるはずだ」と勘違いしながら人生を送ることになってしまいます。起きたことを事実として分析するためには、全力でぶつからないといけないのです。

 これを夜やろうとすると疲れてしまったり、必要以上に落ち込んだりと感情的になりがちですが、朝の時間で行うことでより前向きな気分になれますよ。

<自分の最高パフォーマンス、最低パフォーマンスを思い出してみる>

 発信が苦手だと思う人でも、「そんな中でもましなほうだった」というときと、「あのときは最悪だったから二度と経験したくない」というときのように、自分の最高パフォーマンス、最低パフォーマンスがあるものです。そのときの状況を細かく思い出してみましょう。最高パフォーマンスのときに何があったかを思い出せば、験担ぎのように、「これをすれば成功する」という暗示を自分にかけることができますし、最低パフォーマンスを思い出せば(思い出すのは辛いことですが)、あのようにならないためにはどうしたら良いかを肝に銘じることができるようになります。

 五郎丸選手の仕草で有名になった「ルーティン」や、イチロー選手のバッターボックスに立ったときの独特の仕草のように、自分の「ここ一番」のときにすることは多かれ少なかれ高パフォーマンスを出す方なら誰でももっているものです。

 ちなみに私の尊敬する経営者の方で毎朝必ず一杯のビールを飲むという方がいらっしゃいます。最初は「え!朝からビール?」とビックリしましたが、理由を聞いて納得しました。ビールをおいしい、と感じられるときは心身ともに健康であるというバロメーターチェックのためなのだそうです。

 「朝からビール」の例は極端かもしれませんが、あなた独自の「ルーティン」があったら、かっこいいと思いませんか? 電話やメールなど、周囲の邪魔がすくない朝の時間だからこそ、このような振り返りの時間をゆっくり取ることが可能ですよ。

 どんなに話がうまい、文章がうまい人でも、「どうしてそんなにうまいのですか?」と聞くと必ず「慣れ」と答えます。慣れるためにはまず場数から。しっかり準備さえできれば、きっとあなたの発信力も上がっていきます。今日お伝えしたコツを意識して今後もコツコツ発信してみてくださいね。

池田千恵(いけだ ちえ)
 株式会社 朝6時 代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部卒業。外食企業、外資系戦略コンサルティング会社を経て現職。企業や官公庁、個人に向け、図を活用したプレゼンテーション資料作成術、企画書作成術や会議進行術など、「伝わる」コミュニケーション全般について指南。女性のキャリア形成、ダイバーシティなどをテーマに講演、著述活動も行う。『絶対! 伝わる図解』(朝日新聞出版)、『描いて共有! チーム・プレゼン会議術』(日経BP社)などプレゼン・図解に関する著書多数。最新刊は『朝の余白で人生を変える 』(ディスカヴァー21)。

[nikkei WOMAN Online 2016年12月12日付記事を再構成]

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