還付申告で税金を取り戻す 新制度や意外な落とし穴も第3回 確定申告

確定申告のシーズンがやってきました。今年の主な変更点は「マイナンバーを記載するようになった」「債券と株の損益通算ができるようになった」「相続した空き家の譲渡で利益が出ても、最大3000万円まで控除が使えるようになった」などですが、多くの人にとっては、税金を取り戻すための「還付申告」が主な関心事でしょう。この時期、還付申告に関する話題は日本経済新聞のM&I面(Money & Investment面)や「日経マネー」誌でしばしば紹介していますので、基本的な部分はよく知られています。しかし、今年からの新制度もありますし、落とし穴やテクニックなど案外知られていない話もあります。そこで還付申告の中でもよく話題になる「医療費控除」「住宅ローン控除」「雑損控除」の3つにつき、動画で解説してみました。

動画の前に予備知識として、会社員の年末調整と確定申告の関係について説明します。まず会社員は毎月の給与から、源泉徴収という形で「仮の」所得税を先に納めています。これは1年間昇給もなく、扶養する家族構成にも一切変更がないと仮定して計算したものなので、本来納めるべき税額とは少し違います。そこで年末に社員が「今年は地震保険料や生命保険料をいくら払いました」「家族を扶養しました」などと書類で申告し、勤務先も1年間の給与総額を計算し直して、12月の給与支払時に精算してくれます。これが年末調整です。

収入が給与だけで他に控除がなければ会社員の所得税はこれで終わりで、確定申告する必要はありません。ただ、その社員がどのくらい医療費を支払ったか、どこかの自治体に寄付をしたかなどは会社にも分かりません。そのため年末調整で精算しきれなかった分を今度は税務署に申告して、二度目の精算をしてもらうわけです。これが確定申告です。もっとも、確定申告すれば常に税金が戻ってくるとは限らず、精算の結果不足していたら追加で課税されることもあります。

さて最初の動画は「医療費控除」です。「何が認められて何が認められないのか」を中心に、還付申告で一番よく質問される部分です。また「医療費のレシートを10万円分集めると10万円の還付がある」「10万円を超えた額がそのまま還付される」といったひどい誤解が非常に多い部分でもあります。基本は「1年間に支払った医療費から受け取った保険金や高額療養費を引く。それが10万円を超えていたら申告でき、超えた分にその人の所得税率を掛けた額が還付される」のです。ただ10万円超えはやはりハードルが高いということで、今年から加わった特例が「セルフメディケーション税制」。市販薬の中の「スイッチOTC薬」の購入額が年に1万2000円を超えた場合に申告できます(申告は来年から)。ただ、こちらには医療費控除にもない「条件」がもう一つあり、日ごろそれをおろそかにしている人は申告できません。さてその条件とは?

次の「住宅ローン控除」は、マイナス金利を生かして昨年マイホームを買った人、これから買おうという人に向けて基本を解説しました。ただ、これにも落とし穴があり、特に「床面積が50平方メートル以上でないと住宅ローン控除は受けられない」という問題は、買ってからではもう取り返しがつかないので、ここでも書いておきます。また超低金利を生かして借り換えをした場合に、住宅ローン控除は継続して使えるのか、そこで終わりになるのかなども意外に知られていないポイントでしょう。

3番目の「雑損控除」を申告すると、不幸にして地震や水害、火災などの災害で資産に損害が出た場合に所得税を安くしてもらえます。ただ、そうした場合は「災害減免法」の適用を受けて所得税を軽減してもらうこともできるため、それぞれの特徴やどちらを使うのが有利なのか、がポイントになります。一般的に雑損控除は適用範囲が広く、盗難や横領なども対象になりますが、詐欺や恐喝の被害は申告できない(従って振り込め詐欺の被害は認められない)などは盲点かもしれません。

では最後に、長さの関係で動画で説明できなかった「寄付金控除」の注意を少々。前回の動画ではふるさと納税の長所を解説しましたが、実際は「ふるさと納税はしても確定申告はしない」方が何割もいるのだそうです。純粋に寄付をしたいならそれでも問題はないのですが、「持ち出しが2000円で済む」ところに魅力を感じて寄付したのなら、寄付金控除を申告するのは必須です。特に、寄付する自治体が5つ以下だと確定申告しないで済む「ワンストップ特例制度」がくせもので、会社員などで他の控除がなく本当に確定申告しない人はいいのですが、仮にその年、たまたま医療費がかさんで医療費控除の還付を受けるなんてことになると、ワンストップ特例の方は無効になってしまうのです。この場合は改めて自分で寄付金控除を申告しない限り(還付申告は最長5年まで遡って申告できます)、自治体からものすごく高い牛肉、何十万円もするカニをもらったことになってしまいますので、ご注意を!

(マネー研究所編集長 大口克人)

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