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シアトルにあるアマゾンの新オフィス「アマゾン・バイオスフィア」

シアトルにあるアマゾンの新オフィス「アマゾン・バイオスフィア」

アマゾン・ドット・コム、マイクロソフト、スターバックス――。世界的な企業を次々生み出している町、米西海岸のシアトル。一般の日本人にこの町が知られるようになったのは、任天堂が大リーグ、シアトル・マリナーズを買収し、イチローが活躍してからだろう。なぜシアトルはシリコンバレーと並ぶ世界的な起業家都市になったのか。その軌跡を解き明かす。

1991年12月6日、シアトル・マリナーズのオーナー、ジェフ・スムライアン氏が、チームの身売りを決めた。仮にワシントン州以外の実業家が買えば移転もありうる。ただ、本拠地キングドームとのリース契約が残っていたことから、120日間は地元企業、もしくは実業家と優先的に交渉することとなった。

わらにもすがる気持ちで任天堂へ

そのとき、なんとかチームをシアトルに残そうとワシントン州選出のスレイド・ゴードン上院議員らが奔走したが、地元経済をけん引していたマイクロソフトやボーイングは興味を示さず、八方ふさがり。シアトル郊外のレドモンドに米国任天堂を訪ねたときにはわらにもすがる思いだったのかもしれないが、その時点で米国任天堂がシアトルにおいて優良企業として認知されていたことがうかがえる。

米国任天堂は80年にニューヨークで設立された後、81年にレドモンドへ移転。85年に米国版ファミリーコンピューター「NES(ニンテンドー・エンターテイメント・システム)」を発売すると爆発的な売上高を記録し、10年で球団買収を打診されるまでの世界的企業に成長した。

もっとも、米国任天堂も当初は、買収に乗り気ではなく、特に後にマリナーズの最高経営責任者(CEO)となる副社長だったハワード・リンカーン氏が強く反対したが、それを本社の故山内溥社長(当時)が押し切った。

「シアトルにはお世話になった。今度は、恩返しをしたい」

当時、米国任天堂の社長を務めていた荒川寛氏が、その旨をゴードン上院議員に連絡をしたのは12月23日のこと。この即決がひいては、イチローがマリナーズのユニホームを着る縁につながる。

マイクロソフト、アマゾン次々誕生

さて、シアトルには他にも、この地を拠点に発展し、今も本社を構える世界的な企業が少なくない。マイクロソフトも、ビル・ゲイツ氏とポール・アレン氏が75年にアルバカーキで起業した後、2人が生まれ育ったシアトルに戻って今の礎を築いた。94年にはジェフ・ベゾスが、アマゾンを立ち上げている。さらに倉庫のような大型店舗を展開するコストコもシアトル郊外のイサクアが発祥。また、スターバックス、ボーイング、旅行サイトのエクスペディア、アウトドア用品のREI、アウトドア衣料のエディ・バウアーなども同様で、日本でもなじみのある会社が少なくない。

なかでも最近は、IT(情報技術)関連の起業が相次ぎ、街に活気がある。ダウンタウンでオフィスビルの建築ラッシュが続くのは、まるでそれを象徴するかのよう。

シアトルでは高層ビルの建設ラッシュが続く

シアトルでは高層ビルの建設ラッシュが続く

インターネットを通じてゲーマーを結びつける「BEAM」、セキュリティ関連のアプリを開発している「Auth0」、エンジニアなどを養成する「Coding Dojo」といった若くて成長著しいところの他にも、マーケット動向から不動産価値をはじき出す「ZILLOW」、不動産を仲介する「レッドフィン」といった2000年代の半ばに産声を挙げたところも健在だ。

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