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熊本にもある幻のワイン 復興支援の一滴に

ライター 猪瀬聖

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NIKKEI STYLE

多くの犠牲者を出した昨年4月の熊本地震。屋根にブルーシートがかかったままの家も少なくなく、復興は道半ば。その熊本地震の震源地からそう遠くない場所に、一軒のワイナリーがある。九州でワイン、と驚く人も多いかもしれないが、実は、ここで造られるワインは数々のコンクールで入賞し、今や入手困難な「幻のワイン」だ。ワインで熊本を元気にしたい。生産者からはそんな熱い思いが伝わってくる。

幻のワイン 熊本城から約15分

ワイナリーの名は「熊本ワイン」。熊本地震で大きな被害を受けた熊本城から、車で北に約15分。まわりを緑に囲まれた高台にある。

場所は、食品関連の施設が集まるテーマパーク「フードパル熊本」内だ。ソーセージづくりやパンづくりを体験できたり、フリーマーケットが開催されたり、休日には多くの家族連れやカップルが集う。熊本ワインでも、ワインが瓶詰されるところを見学できたり、隣接する土産物店でワインを試飲したりすることができる。

熊本地震の時は、熊本ワインも少なからぬ損害を受けた。土産物店の棚から製品が落ちて壊れるなどしたほか、倉庫内に積み重ねてあった空き瓶が、何千本と割れた。「翌日、割れた瓶を片づけたら、その翌日に本震が来て、また片づけるはめになった」と、醸造を担当する西村篤さん(32)は振り返る。

揺れの影響で、水や電気が一時ストップしたり、瓶詰前のワインが入ったタンクが動いたりもした。だが幸い、醸造そのものは、大きな影響を受けずに済んだ。

「直後から、多くの人たちから電話やメールで励まされた」と西村さん。その年の夏、歴史ある日本ワインコンクールで、同ワイナリーの「マスカットベーリーA樽熟成2014」が金賞を受賞した時は、「地震の後だったので、とても安堵した」という。

 熊本ワインの設立は、1999年。現在は独立した株式会社だが、もともと大手飲料メーカーのグループ会社として出発。同じグループ内のワイナリーから指導を受けながら、ワイン造りのノウハウを蓄積していった。

ワインが好きでワインの仕事に就きたいと思っていた西村さんは2009年、大学卒業と同時に地元の熊本ワインに入社。同社で長年、醸造責任者を務めてきた幸山賢一さんのアシスタントとして、現場で醸造を学んできた。昨年、幸山さんが社長に就任したのを機に、実質的な醸造責任者に就任した。

現場で一から学んだ異色の醸造家

 醸造家は、大学で醸造学を学んだり国内外のワイナリーで修行を積んだりしてから、ひとり立ちするパターンが多いが、西村さんは熊本ワインの現場で一から醸造を学んだ異色の醸造家だ。

熊本ワインは約20種類のワインを醸造しているが、中でも評価が高いのは、「菊鹿(きくか)」シリーズ。

同シリーズは、ワイナリーから車で北に約1時間の場所にある山鹿市菊鹿町の契約農家から買い入れた欧州品種から造る。完成度が高く、初めて飲んだ人は「これが九州で造られたワイン」とびっくりするという。

特に、シャルドネ種から造る辛口白ワイン「菊鹿シャルドネ樽発酵」や「菊鹿シャルドネ樽熟成」は、愛好家から引き合いが強く、発売後すぐに売り切れになる。

ブドウの出来が特によい年にだけ造る「菊鹿ナイトハーベスト」も人気だ。気温の下がった夜間に収穫し果汁を搾ることで、香りのよいワインに仕上がるという。

シャルドネが人気なのは、「ブドウの栽培に適した水はけのよい土質に加え、温暖な気候のため、実がよく熟し、酸味も穏やかで、口当たりがまろやか」(西村さん)なのが理由のようだ。

仏ボルドーワインと同じカベルネ・ソーヴィニヨン種から造る辛口赤ワイン「菊鹿カベルネ・ソーヴィニヨン樽熟成」も、果実味と酸味、渋味のバランスがよくとれ、料理と合わせやすい。

九州のワイン 大敵は台風

ブドウの栽培には、九州ならではの苦労もある。大敵は台風。収穫時に雨が降ると、ブドウの実が水っぽくなり、ワインの味わいにも影響するためだ。

雨の影響を最小限に抑えるため、熊本ワインでは、ブドウの木に傘をかけるなどの工夫をしている。毎月、栽培農家をまわり、きめ細かい指導も欠かさない。「台風の時は、毎日、畑を見に行く」(西村さん)。

 ワインの味わいの8割はブドウの質で決まると言われる。西村さんらワイナリーの担当者と契約農家が、協力しながら丁寧なブドウづくりを心掛けていることが、高品質のワインにつながっているようだ。 

当初、たった4軒だった契約農家数は現在、31軒にまで増加。その分、生産量も増えているが、それでも需要に追い付かない。新たな畑の確保が急務となっている。

すでに手も打ち始めている。来年をめどに、菊鹿地域に新たにワイナリーを建てる予定だ。初めて、自社畑も持つ。新たな品種にチャレンジする計画も立てている。

「初期のころは、造ったワインがさっぱり売れなかった」と話す西村さん。地道な努力で品質を向上させ、ワインブームの追い風にも乗り、今や菊鹿シリーズは入手困難なワインとなっている。

「契約農家さんたちの平均年齢は70歳以上。若い人たちも徐々に農業に参入しているが、このままだと、熊本の農業の将来は厳しい。ワインが、熊本の文化、地域の特産品と呼ばれるようになるような、そんなワインを造っていきたい。そうすれば、ブドウ農家も増え、熊本の農業の発展に少しは貢献できると思うんです」。西村さんは力強く語った。

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