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熊本にもある幻のワイン 復興支援の一滴に ライター 猪瀬聖

2017/3/7

熊本城から車で15分のワイナリー「熊本ワイン」

 多くの犠牲者を出した昨年4月の熊本地震。屋根にブルーシートがかかったままの家も少なくなく、復興は道半ば。その熊本地震の震源地からそう遠くない場所に、一軒のワイナリーがある。九州でワイン、と驚く人も多いかもしれないが、実は、ここで造られるワインは数々のコンクールで入賞し、今や入手困難な「幻のワイン」だ。ワインで熊本を元気にしたい。生産者からはそんな熱い思いが伝わってくる。

■幻のワイン 熊本城から約15分

 ワイナリーの名は「熊本ワイン」。熊本地震で大きな被害を受けた熊本城から、車で北に約15分。まわりを緑に囲まれた高台にある。

 場所は、食品関連の施設が集まるテーマパーク「フードパル熊本」内だ。ソーセージづくりやパンづくりを体験できたり、フリーマーケットが開催されたり、休日には多くの家族連れやカップルが集う。熊本ワインでも、ワインが瓶詰されるところを見学できたり、隣接する土産物店でワインを試飲したりすることができる。

 熊本地震の時は、熊本ワインも少なからぬ損害を受けた。土産物店の棚から製品が落ちて壊れるなどしたほか、倉庫内に積み重ねてあった空き瓶が、何千本と割れた。「翌日、割れた瓶を片づけたら、その翌日に本震が来て、また片づけるはめになった」と、醸造を担当する西村篤さん(32)は振り返る。

 揺れの影響で、水や電気が一時ストップしたり、瓶詰前のワインが入ったタンクが動いたりもした。だが幸い、醸造そのものは、大きな影響を受けずに済んだ。

 「直後から、多くの人たちから電話やメールで励まされた」と西村さん。その年の夏、歴史ある日本ワインコンクールで、同ワイナリーの「マスカットベーリーA樽熟成2014」が金賞を受賞した時は、「地震の後だったので、とても安堵した」という。

「熊本ワイン」醸造家、西村篤さん

  熊本ワインの設立は、1999年。現在は独立した株式会社だが、もともと大手飲料メーカーのグループ会社として出発。同じグループ内のワイナリーから指導を受けながら、ワイン造りのノウハウを蓄積していった。

 ワインが好きでワインの仕事に就きたいと思っていた西村さんは2009年、大学卒業と同時に地元の熊本ワインに入社。同社で長年、醸造責任者を務めてきた幸山賢一さんのアシスタントとして、現場で醸造を学んできた。昨年、幸山さんが社長に就任したのを機に、実質的な醸造責任者に就任した。

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