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初心者の投信選び 値動き安定のバランス型は長期向き

2017/2/4

 筧ゼミでは「初心者の投信選び」をテーマにした発表が続いています。今回は宗羽士郎君がバランス型投資信託を取り上げます。1本の投信で株式、債券など様々な資産に分散投資するタイプです。どんな特徴があるのでしょうか。

筧花子(かけい・はなこ、50=上)経済大学院教授。家計の経済行動や資産形成、金融リテラシーが専門。 宗羽士郎(そうば・しろう、23=中)大学院1年生。中堅証券「宗羽証券」創業家の一人息子。IT好き。 岡根知恵(おかね・ちえ、38)パート主婦。将来の家計に不安を覚え、金融知識を身に付けようと大学院に。

 宗羽 「卵を1つのかごに盛るな」という投資の格言がありますが、バランス型はこの考え方を具体化した投信だと言えます。異なる値動きをする複数の資産にお金を分散するのが基本です。一つの資産だけに投資するのに比べ値動きが安定しやすいとされます。

 岡根 具体的にはどんな資産に投資するのですか。

 宗羽 投信によって違いますが国内外の株式と債券に投資する例が目立ち、最近は不動産投資信託(REIT)でも運用する投信が増えているようです。

  バランス型は資産配分が大切ですね。

 宗羽 はい。バランス型の資産配分の考え方は大きく分けて2種類あります。1つは「資産配分固定型」などと呼ぶもの。「国内外の株・債券に25%ずつ」という具合に、どの資産に何%のお金を振り向けるかを事前に決めて、原則この比率を守るタイプです。

 岡根 比率を守るとはどんなことをするのですか。

 宗羽 あらかじめ比率を決めても、運用中は各資産の値上がりや値下がりによって少しずつズレていくのが一般的です。このままだと値動きが不安定になりかねないので、値上がりで比率が上がった資産の一部を売り、値下がりで比率が下がった資産を買い足すといった定期的な調整が必要です。「リバランス」と呼ぶ作業です。

  その通りですね。ではもう1つのタイプの説明をお願いします。

 宗羽 「資産配分可変型」などと呼ぶ投信です。株、債券、REITなどに分散するのは固定型と同じですが比率は市場動向に応じて見直すことが特徴です。例えばアセットマネジメントOneが運用する「投資のソムリエ」は目標とする価格変動リスクを年率4%に定め、これに基づいて各資産の比率を決めます。月単位で基本配分を決める一方、相場急落時は比較的リスクが低い資産の配分を増やすといった機動的対応ができる仕組みです。

 岡根 なるほど。

 宗羽 一方、東京海上アセットマネジメントの「東京海上・円資産バランスファンド」は、あらかじめ「国内債券70%、国内株15%、国内REIT15%」と基本の比率を示します。価格変動リスクが大きくなると、中核資産である債券の比率は維持する一方、株式とREITの比率を2.5~15%の範囲で変更し、安定性を重視した運用を目指します。こうした手間をかけるため、可変型の信託報酬は固定型に比べ高い場合が多いようです。

 岡根 バランス型は実際に相場が下落した時に値動きが安定しているのか気になります。

 宗羽 全く影響を受けないわけではありませんが、下落相場への抵抗力はあると言えます。2016年1~3月の日本株は新興国の景気減速などを背景に荒れましたが、楽天証券経済研究所の調査でバランス型は国内株式型に比べ緩やかな下落にとどまりました。

  上げ相場の局面ではどうでしょう。

 宗羽 例えば日本株は10~12月にトランプ氏の米大統領選勝利などを背景に活況でしたが、バランス型の上昇率は国内株式型に及びませんでした。比較的大きな上げ、下げが交錯した昨年は値動きを抑えるバランス型の特徴がよく表れた1年だったといえます。

 岡根 もっと長い期間でみた場合でも同じですか。

 宗羽 この一覧表を見てください。資産配分可変型のうち一定の基準を満たす投信を対象に、過去3年間の上昇率上位をまとめました。同じ期間の日経平均株価の上昇率は17%程度で、多くの投信はこれを下回ります。ただ何度かあった下げ局面では底堅さが目立ちました。ある程度のリターンは得たいけれど、大きなリスクは取れないという人にバランス型は選択肢になります。

  ところでバランス型は少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(DC)で利用する人が多くいます。理由は何でしょうか。

 宗羽 NISAの非課税枠は年120万円の上限があります。値上がりした資産を売ってもその分の枠は再利用できず、リバランスが難しい面があります。バランス型は運用会社が資産配分の調整をしてくれるため、個人は投信自体を売却する必要がなく、投資枠を温存したままリバランスができます。個人型DCは長期的な視点で積み立てる投資なので、リスクを抑えたバランス型とは相性が良いとされます。

 岡根 バランス型と一口に言っても様々ありますね。どう選べば?

 宗羽 まずはそれぞれの投信が示す投資方針がポイントです。最近は価格変動リスクの目標値を示す投信もあるので、自分がどの程度の変動までなら投資を続けられるかを考える必要があります。もちろん運用実績にも目を向けないといけません。楽天証券経済研究所の篠田尚子さんは「基準価格の騰落率だけでなく、値動きが一定の幅に収まっているかが重要」と教えてくれました。特に昨年初めのような下落局面で、どんな値動きだったかは確認したい点だそうです。

■配分可変型の優位目立つ
 楽天証券経済研究所ファンドアナリスト 篠田尚子さん
 バランス型投信の中でも資産配分固定型は、近年の相場急変にうまく対応できない例が増えています。英国の欧州連合(EU)離脱や米トランプ大統領選出など1つの国で起きたことが即座に世界の市場に影響を及ぼすようになり、機動的な対応ができる可変型が優位に立つ例が目立ちます。
 ここ数年で様々なインデックス型投信の低コスト化が進みました。こうした投信を組み合わせることで個人投資家が自分で国際分散投資をしやすくなり、固定型で運用する必要性は下がっています。一方、可変型は資産配分の調整が運用のプロとしての腕の見せどころです。個人では難しい機動的な配分変更が魅力ですが、巧拙の差も投信間で大きくなりがちです。目論見書や運用報告書などをよく読み込んで、慎重に商品比較をすることが大切です。(聞き手は堀大介)

[日本経済新聞朝刊2017年1月28日付]

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