高利回り投資 「債券」より「株」に魅力(窪田真之)楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト

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「日本の個人マネーは株式投資のリスクには敏感だが、高利回りの債券や毎月分配型投信には無警戒だ」

株は狩猟民族向き、債券は農耕民族向きという人がいます。欧米の個人投資家は株に積極投資しているのに、日本の個人投資家はほとんど株に投資しない理由を説明するときに使われるたとえです。

 「日本人はもともと農耕民族だったから、狩猟民族のように動くもの(株)を追いかけるのは苦手」「種をまき時間をかけて育て、実り(利息)をいただくのが性に合っている」などといわれます。

 これが妥当かどうかはともかく、日本の個人マネーが株を敬遠していることは日銀が発表している「家計の金融資産構成」からわかります。2016年9月末時点で日本では家計の金融資産1752兆円の52.3%が現金・預金に眠っており、株式には8.6%しか投資されていません。米国では家計の金融資産の35.4%、ユーロ圏で16.3%が株式に投資されていることと比べて、低い比率となっています。

株式投資のリスクに敏感な日本の個人マネー

 日本の個人マネーの大部分は、株式投資のリスクにきわめて敏感です。最近はヘッジファンドの売買によって日経平均株価が短期で急落・急騰を繰り返すようになり、日本株は安心して投資できる投資対象とはいえなくなりました。個人が銀行預金や国債が好きなのもやむを得ない面があるでしょう。

 そんな日本人にとってきわめて困難な時代がやってきました。10年国債の利回りまで0%近くに下がってしまったからです。銀行預金や国債では、ほとんど金利が得られない時代となりました。その一方で、日本株の配当利回りはたいへん魅力的になってきています。配当利回りは東証1部平均で現在、約2%もあります。大型の優良株には、配当利回りが3%以上に達している銘柄も存在します。投資対象としては魅力的ですが、日本の個人マネーは依然として株式投資のリスクには敏感なようです。

 ところが、不思議なことに日本の個人マネーは突然、リスク不感症になることがあります。高利回りを求める個人マネーは、株式投資のリスクに敏感でありながら、内在するリスクがきわめて高い「高利回り債券」や「高分配利回りの毎月分配型投信」には無警戒になります。

 これは一体どうしてでしょうか? 日本の個人マネーは投資対象が高利回りの債券や、見かけ上分配金利回りの高い投資信託であったりすると、そこに内在するリスクに目がいかなくなるためです。これは本来おかしいことですが、日本人の心理として投資対象が株式ではなく、債券であるというところに安心してしまうのかもしれません。

 高利回りを求めた日本の個人マネーが好むのは、残念なことに見かけ上の分配金利回りが高い「毎月分配型投信」です。毎月分配投信のほとんどが、今や利益ではなく元本を払い戻していることがわかっていますが、それでも見かけ上の利回りが高いことに引かれて、個人マネーが大量に流入しています。そうして人気化する毎月分配ファンドには、往々にしてリスクが高く、手数料も高いファンドが多く、要注意です(毎月分配型投信については2016年12月6日付当コラム参照)。

 私は日本の投資家は高利回り債券の投資や、分配金利回りの高い毎月分配型投信に隠れているリスクに敏感になるべきだと思います。一方、日本の高配当利回り株については、そのリスクをきちんと理解した上で、もう少し、投資対象として見直してもいいと思います。

 もちろん、株は値動きが激しく、買った途端に大きく値下がりすることもあります。また、株の配当利回りは確定利回りではありません。減配になって利回りが下がり、株価が下落することもあり得ます。

高利回り株投資、最初は「通信」や「電鉄」から

 高配当利回り株に投資する際には、減配リスクの低い銘柄を選びましょう。そのためには、不況になっても業績がボロボロになることのない不況抵抗力の強い業種から、投資銘柄を選ぶといいでしょう。

 最初は(1)通信(2)電鉄など、国民生活に不可欠な公共サービスを提供している会社から、配当利回りの高い大型株を投資対象として選ぶのが無難です。それから少しずつ、配当利回りの高い金融株や製造業などにも、分散投資していくとよいと思います。

 株に投資する際のリスク管理として重要なのは、余裕資金の範囲で投資するということです。自身の金融資産で一定比率を決めて株式に投資するのもよいと思います。個人により、金融資産に占める株式の比率は異なりますので、一概にいえませんが、たとえば日本最大の公的年金であるGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)は現在、運用資産の25%を日本株に投資するのを標準としています。

 まとめて一度に大きな金額を投資するのではなく、毎月コツコツと積み立てで投資していくのが理想です。

プロのポートフォリオは運用に精通したプロが独自の視点で個人投資家に語りかけるコラムです。原則火曜日掲載で、楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジストの窪田真之氏とレオス・キャピタルワークス社長兼最高投資責任者(CIO)の藤野英人氏が交代で執筆します。
窪田 真之(くぼた・まさゆき) 楽天証券経済研究所所長兼チーフ・ストラテジスト。1961年生まれ。84年慶応義塾大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行、91年ニューヨーク駐在。92年住銀投資顧問(当時)日本株ファンドマネジャー、99年大和住銀投信投資顧問日本株シニア・ファンドマネジャー。2014年楽天証券経済研究所チーフ・ストラテジスト、15年から所長兼務。大和住銀投信投資顧問では日本株運用歴25年のファンドマネジャーとして活躍した。著書に「投資脳を鍛える!株の実戦トレーニング」(日本経済新聞出版社)など多数。
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