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起床後と寝る前の「1時間」 ウオーキングは避けよう 「やってはいけないウォーキング」著者インタビュー後編

日経Gooday

2017/2/5

速歩きの時に心がけたいのは、大股で歩くこと。「それさえ意識すれば背筋も伸びますし、自然と腕が振れ、膝も伸びたよいスタイルになります」(青柳さん)(c)Sergejs Rahunoks -123rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

 「1日8000歩/中強度運動20分」。これは、東京都健康長寿医療センター研究所の青柳幸利・運動科学研究室長が、群馬県中之条町に住む65歳以上の住民5000人を対象にした、15年以上に及ぶ調査で導き出した「病気にならない歩き方の黄金律」だ。ただ、一言で「中強度運動」といっても、体力や年齢によってその中身は異なり、目標とする歩数も変わってくる。インタビュー後編では、青柳式ウオーキング法を無理なく、効果的に続けるコツを紹介する(前編は「1日1万歩は間違い?ウオーキング黄金律の真実」をご覧ください)。

■人によって「中強度運動」の中身は異なる!

――前回「1日1万歩は間違い?ウオーキング黄金律の真実」ではウオーキングの中身によって予防できる病気の範囲が変わってくること、そして、「1日8000歩/中強度運動20分」がベストであるという話をうかがいました。中強度の運動は「なんとか会話ができる程度の速歩き」とのことですが、普段から運動している人としていない人とで実際に歩くスピードには個人差がありそうですね。

 そうですね。中には、「なんとか会話をしながら軽いジョギングを20分」できるという人もいるでしょう。ならば、軽いジョギングがその人にとっての中強度となります。

 注意したいのは、「軽いジョギングのほうがより効果アップが望めそうだし、私も速歩きじゃなくてジョギングにしようかな……」と考えるのは間違いということです。あくまでも「その人個人にとっての中強度」ということを忘れないでください。無理をしてもそれは先ほどから申している通り、「膝を痛め、疲れを残し、免疫力を落とす」だけでなんの意味もありません!

 また、40歳でも60歳でも年齢に関係なく、「1日8000歩/中強度運動20分」が病気にならない歩き方の指針です。歩く強さやスピードは個人差がありますが、歩数や、中強度の運動をする時間に年齢による区別はありません。さらに中強度の運動は、継続しても、細切れでも、1日でトータルして20分ならば問題ありません。

■75歳からは「1日5000歩/中強度運動7.5分」を目安に

――年齢に関係なくとのことですが、70歳、80歳になっても、一生「1日8000歩/中強度運動20分」が理想なのでしょうか。

 前回「1日1万歩は間違い?ウオーキング黄金律の真実」でも紹介した「身体活動(歩数・中強度の時間)と予防できる病気の関係」の図()を見てください。基本は、「1日8000歩/中強度運動20分」で万病予防が理想です。しかし、体に違和感を覚えたときは「1日7000歩/中強度運動15分」に目標を下げる勇気をもつことも大切です。1日8000歩いて翌日に疲れが出る、膝が痛くなってきたなど、体が危険信号を発した時が、歩数を見直すきっかけとなります。

 また、75歳まで元気な方は、その後は「1日5000歩/中強度運動7.5分」で、寝たきりや命に関わる病気を防ぐことを目標にしましょう。1年を通して「1日4000歩/中強度運動5分」以下の数値になるとさまざまな病気を引き起こしやすくなるため、これだけは下回らないよう意識しましょう。

――雪の時期や梅雨時期など、外でウオーキングも速歩きもできない場合は、どうしたらよいのでしょうか?

 毎日必ず歩かなければならない、運動しなければならないと肩肘張るのではなく、1日24時間の生活に組み込めば意外と歩けるものです。

 例えば、

・駅や会社ではエスカレーターやエレベーターを使わずに階段を使う
・駅の乗り換えが多いルートを使う
・トイレは違うフロアまで行く

など、ご自身の生活の中で歩けるシーンをなるべく作るようにしてみましょう。

 中強度の運動は「速歩き」以外にも、階段の上り下り、スクワット、かかとの上げ下げ、お風呂掃除、床拭き掃除などがあります。エネルギー消費が安静にしている状態の3~4倍以上であれば動きの種類は問いません。そのトータルが1日で20分あれば、大丈夫です。

会社や駅ではななるべく階段を使おう(c)Andor Bujdoso -123rf

 さらに言えば、雨で1歩も外出しなかったという日があっても問題ありません。1週間のうちで、平均して「1日8000歩/中強度運動20分」になるよう帳尻があえば、3日やって3日休もうが自分次第。そうやって1年の平均が「1日8000歩/中強度運動20分」になればいいのです。

 ただ、1カ月休んで2カ月目にその倍やるのは多少無理のある話ですし、2日以上空けてしまうと、せっかくの運動効果が蓄積しづらくなってしまうので、基本的にはコツコツやっていくことがお勧めです。

 継続は力なりです。もちろん、毎日やってもいい。ただ疲れを残さず、“ほどほど”が大切です。

■「起床後1時間以内」「就寝前1時間以内」の運動は避ける!

――他にも気をつけるべきことはありますか?

 起床後すぐのウオーキングは、心筋梗塞や脳梗塞を引き起こすリスクが高まるのでやめましょう。

 1日の睡眠で人は平均500mLもの汗をかきます。そのため、起床後は血液がドロドロ状態で血の巡りが悪く、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすいので、朝起きたらすぐにコップ2~3杯の飲料を飲むようにしてください。お水はもちろん、お茶やミネラルを補充できるスポーツ飲料でもOK。喉が渇いてから飲むのではなく、喉が乾く前に飲むことで脱水症状を防ぎましょう。

 さらに冷たい水ならば、腸に送られるスピードが高まり、早く吸収されるメリットがあります。運動する前にひと口。運動中にもマメに給水をしましょう。特に、梅雨時期から夏に向けては暑さが増していくので、これらのことを徹底してください。

 ウオーキングをするのに一番よい時間帯は、1日の中で体温がピークを迎える夕方です(下グラフ参照)。この時間帯に体温をさらに上げられれば、就寝時の体温を今より高くすることができ、不眠解消につながります。夕方歩くのがなかなか難しいという人は、少なくとも、起床後1時間以内と就寝前1時間以内の速歩きは避けてください。

――「8000歩/20分」の重要性ややり方は分かりました。ただ、運動不足の人がいきなり「8000歩/20分」を目指すのは難しい気がしますが、どうすれば…。

 おっしゃる通り、これまで1日2000~3000歩しか歩いていなかった運動不足の人が急に1日8000歩を目指すのはハードルが高いので、まずは「4000歩/中強度運動5分」「6000歩/中強度運動10分」と、2000歩刻みで歩数を徐々に積み重ねていくといいでしょう。

 2000歩増えるだけで予防できる病気も増えていきます(「身体活動(歩数・中強度の時間)と予防できる病気の関係」の図をご覧ください)。また、体を動かす習慣ができてくると、人は栄養にも気を使って自然とバランスのよい食事を摂るようになるので、疲れにくくなるなど相乗効果はたくさんありますよ。

 青柳式のウオーキング法は“無理なくほどほど”で長生きできるウオーキングです。ぜひ、今日から生活に組み込んでみてください。

■この人に聞きました
青柳幸利(あおやぎ ゆきとし)さん
 東京都健康長寿医療センター研究所運動科学研究室長。医学博士。群馬県中之条町生まれ。筑波大学卒業。カナダのトロント大学大学院医学系研究科博士課程修了。著書『やってはいけないウオーキング』(SB新書)が3カ月で7万部を超えるベストセラーに。「病気にならない歩き方の黄金律」は世界中から奇跡の研究と称賛を浴びテレビや雑誌、講演会などでも活躍する。

[日経Gooday 2016年6月17日付記事を再構成]

(ライター 近藤鈴佳)

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