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アライヘルメット 手作りのこだわり徹底、高品質生む ヘルメットの科学(3) 北岡哲子日本文理大学特任教授

日経テクノロジーオンライン

2017/2/27

4.下地処理

 カラフルなヘルメットを完成させるための準備だが、塗装も安全性能に少なからず影響を及ぼす。帽体が重くならないように、できるだけ厚塗りを避け、一つひとつ丁寧に仕上げる(図8、図9)。

 「目には見えにくいFRP特有のピンホールを、サーフェーサーの厚塗りで隠すなどはもっての外」だそうだ。

図8 サーフェーサーの塗布。手作業で一つずつ、ターンテーブルを回しながらスプレーガンで吹く
図9 水研ぎで表面を滑らかに

 この工程を2回繰り返すと、下地処理ができあがる。表面が滑らかでツルツルの、見慣れた帽体が現れる。

5.転写シートによる塗装

 ヘルメットの帽体にデザインを施すには2つの方法がある。転写シールを貼る方法(転写デザイン)と、マスキング塗装による方法だ。

 転写デザインは、1枚のシートに1個分のさまざまな模様が描かれたものを使う(図10)。簡単にいえば、パウチシールを貼る感覚。転写シートを水に漬けて台紙と分離させ、1つずつ人の手によって指定位置に置き、しわを伸ばしながら貼る(図11)。熟練者でも1日20個仕上げるのが限界という。

図10 貼り付ける前の転写シート
図11 転写シートの貼り付け

 転写マークは薄いため、曲がったり、伸びすぎて色ムラができたり、空気の泡の侵入により乾燥後に膨らんでしまったりしがち。熟練者でなければ何度も貼り直しになってしまい、作業は進まない。

 もう1つの仕上げ法であるマスキング塗装は、塗料を乗せたい場所以外を隠すマスキングを貼って、塗料を吹き付ける。1色ずつマスキングを貼り替えながら塗装していくため、8~9日を要する。

6.組み立て

・穴あけ・ヘリ巻き工程

 完成した帽体に、シールド取り付け穴、ダクト穴、通気孔などの穴を開ける(図12)。次いで帽体のふちや窓の周囲などに、ゴム製やビニール製の“ヘリ”を巻き付ける「ヘリ巻き工程」がある。その後、いよいよライナーを押し込む。

図12 穴あけ工程。ほんの少しずれたたけでも、ここまで作ってきた物が廃棄処分になってしまう
図13 帽体内のりギリギリの形状に造ったライナーを装着

・ライナー装着工程

 アライヘルメットがこだわっている、衝撃ライナーを手作業で帽体内部に入れる。まっすぐに押し込むのがコツだが、力を加えるだけでは入らず、匠の技が要求される(図13)。

 硬さが違う発泡スチロールが一体成形されているのが、アライヘルメットのライナーの特徴。衝撃はヘリに向かって広がるため、ヘリ部分が硬くなるよう工夫されているが、入り口が狭い丸い帽体に、内のりギリギリの形状で勘合性の高いライナーをセットするため、向きを偏らせずにまっすぐ押し込むのがどんなに難しいか、容易に想像できる。

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