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使わなきゃ損! 個人型DC iDeCo

iDeCo、最初は預金でもいい 徐々に「投資」広げる iDeCoをマネーハック(5)

2017/1/30

個人型確定拠出年金のパンフレット

 今月のマネーハックは、2017年1月から利用対象が大きく拡大した個人型確定拠出年金(愛称iDeCo)を取り上げました。自分の老後のために積み立てると所得税や住民税の負担が軽くなり、積立金が将来自分のものとなって戻ってくるという素晴らしい仕組みです。最後の回は「運用」の方法について考えてみたいと思います。

■iDeCoは実はリスク商品に投資しなくてもいい

 iDeCoについては、「必ずリスク商品に投資しなくちゃいけない」と思い込んでいる人が多いように思います。

 これは大きな誤解です。確定拠出年金においては必ず「元本確保型商品」と呼ばれる安全性の高い金融商品が含まれます。これは満期まで保有すれば元本と利回りが得られるという金融商品で、銀行の預金や生損保の保険商品が該当します(来年には法改正で元本確保型商品の商品採用義務がなくなるものの、1本も採用しないiDeCoプランはまずないと思われます)。

 iDeCoの運用では「定期預金100%」でもOKですし、「定期預金と投資信託を組み合わせる」ということもOKなのです。仮に50%を定期預金、50%を投信に振り向けたとすると、「超低金利だが絶対に元本割れしない資産」を半分、「長い目でみてインフレ率以上の利回りを得られる可能性があるが、短期的には元本割れする可能性がある資産」を半分持つことになります。

 もちろん、投資は自己責任で決められますから「定期預金:投信」の割合は「3:7」でも「7:3」でも「9:1」でもいいのです。

■定期預金100%でも十分に有利な資産形成

 iDeCoで投信などに投資するにあたっては、実際に購入する商品の仕組みや条件(手数料など)について理解する必要があります。もしその理解度がまだ足らないと自覚している場合、「まずはiDeCoに加入し、全額を定期預金として運用する」という選択もありえます。

 確かに運用で増える余地はほとんどないものの、所得税や住民税の軽減効果があれば、年率15%以上の運用利回りを確保したも同然だからです。

 家族構成や年収にもよりますが、掛け金に占める所得税や住民税の軽減分が20%だとします。これを言い換えれば、80%相当の掛け金を積み立てるだけで、本来所得税や住民税に引かれていたはずのお金がiDeCo口座に残って100%になったということです。

 iDeCoには口座管理手数料が生じるものの、十分にプラスになる計算です。定期預金100%であっても、利用しなければもったいないほどの、十分に有利な資産形成になりうることがわかります。

■複利効果を期待するならリスク商品にもチャレンジ

 しかし、定期預金だけを保有している限り、利回りについてはほとんど望めません。中長期で行う資産形成では利息をさらに運用に回すことで雪だるま式に増やしていく「複利運用」の効果が期待できるのですが、これも利回りがあってこそです。

 22歳から毎月1.2万円の積み立てを行い、年0.01%の利息で再投資を続けていくと、60歳時点では525万円になりますが、これが年2%なら784万円、年4%なら1228万円と大きく差がつきます(口座管理手数料を月500円と仮定)。積立期間、積立額が同じであっても、運用成績を積み重ねた複利効果の差は大きいのです。

 iDeCoは資産形成によって得られた収益部分にも課税されない(通常は原則20%課税)ことにも大きなメリットがあります。これを生かしたければやはりリスク商品への投資にチャレンジしてみる必要があります。

 仮に平均的なリターンが年4%であったとすれば、本来税金を引かれて手取りが3.2%に下がるところ、iDeCo内なら4%を丸取りできます。普通預金金利が年0.001%の時代に、せっかくがんばって投資して得られた収益から0.8%も税金を引かれるほどもったいないことはありません。

 先ほどの、毎月1.2万円を38年間積み立て、年利4%であった場合の例で、仮に運用益が課税されて3.2%であったとしたら、最終受取額は207万円もダウンしてしまいます。それほど運用益の非課税メリットは大きいのです。

■投資は難しくない 投信1つ買うだけでOK

 といっても、iDeCoの投資は難しいことはありません。日本株式あるいは外国株式に投資をしてみたいなら、マーケット全体に投資する投信を1つ買うだけでよく、個別企業の業績をチェックして企業選びをする必要はないからです(逆にいえば、個別企業を選択した投資はiDeCoではできない)。

 投資というと毎日ニュースウオッチしなければいけないイメージがありますが、仕事に手がつかなかったり、プライベートにも支障が出たりするような負担は必要ないのです(むしろ負担が多いなら投資方法を見直すべきです)。

 バランス型の投信(手数料が低いものを最優先すること)を選択すれば、国内外の株式と債券(投信によっては不動産投資も含む)を同時に投資先とすることができ、かつ配分割合の調整も運用会社にお任せすることができます。

 普通の人ならバランス型投信を1つ購入するだけでiDeCo投資は十分です。たったそれだけで、毎月の掛け金が1000円程度であっても世界中に投資を行うことができるのです。

■iDeCoでは「100%投資」を目指してみよう

 iDeCoへの積み立ては必ずゼロからスタートしますので、ほとんどの人は最初の数年がんばっても元本は数十万円程度でしょう。毎月の積立額も月1.2万円や2.3万円が上限であり、個人が保有する資産残高に占める割合もそれほど高いものにはなりません。

 あなたの財産全体に占める投資割合が数%程度であれば、投資の元本割れの影響もそれほど大きいものとはなりません。そうであれば運用益非課税の税制メリットを生かすべく「iDeCoの運用は100%リスク商品に投資」としてみてはどうでしょうか。定期預金などは手元に同額以上をしっかり保有しておけばいいのです。そして、徐々にあなたの財産全体に占める投資割合が高まっていくようなやり方はどうでしょうか。

 個人が有する資産全体を見つつ投資割合を考えるアプローチを「アセット・ロケーション」といいます(資産配分の最適化をアセット・アロケーションということのもじり)。マネーハックの発想で「自分の財産全体を運用する」という視点を持てるようになれば、iDeCoの魅力のフル活用につながり、きっと豊かな老後を引き寄せる力となるはずです。

マネーハックとは ハックは「術」の意味で、「マネー」と「ライフハック」を合わせた造語。ライフハックはITスキルを使って仕事を効率よくこなすちょっとしたコツを指し、2004年に米国のテクニカルライターが考案した言葉とされる。マネーハックはライフハックの手法を、マネーの世界に応用して人生を豊かにしようというノウハウや知恵のこと。
山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ) 1972年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。AFP、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。所属は日本年金学会、東京スリバチ学会。近著に『お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣』(明日香出版社)『誰でもできる 確定拠出年金投資術』(ポプラ新書)などがある。趣味はマンガ読みとまちあるき(看板建築マニアでもある)。Twitterアカウントは@yam_syun。ホームページはhttp://financialwisdom.jp

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