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ビジネス街の書店をめぐりながらその時々のその街の売れ筋本をウオッチしていくシリーズ。今回は定点観測している八重洲ブックセンター本店だ。前回年末に訪れたときは2017年の予測本が元気だったが、今回は秋の店頭をにぎわせた強力本『「言葉にできる」は武器になる』『やり抜く力』がふたたび勢いを取り戻している。そんな中、インテル中興の祖による経営書が装い新たに再刊され、若手のビジネスパーソンを中心に注目を集めている。

大物VC、ホロウィッツ氏が絶賛

その本はアンドリュー・S・グローブ『HIGH OUTPUT MANAGEMENT(ハイ アウトプット マネジメント)』(小林薫訳、日経BP社)。メモリーからの全面撤退とMPU(超小型演算処理装置)への経営資源の集中という事業戦略転換を指揮したグローブ氏が自ら著した経営書だ。原著の初版はメモリー事業で日本勢の攻勢にさらされていた1983年。邦訳も原著出版の翌年に同じタイトルで、さらに96年に加筆修正した新版が『インテル経営の秘密』のタイトルでともに早川書房から出ていたが、絶版になっていた。これを新たに版権を取り直し、95年刊行のペーパーバック版を基に再刊したのが本書だ。戦略転換を成し遂げた後に書かれたイントロダクションが付く。

再刊にいたったのは米大物ベンチャーキャピタリスト(VC)のベン・ホロウィッツ氏がその著書『HARD THINGS(ハード・シングス)』(日経BP社)で「世界最高の経営書」と激賞したのがきっかけ。エアビーアンドビー、フェイスブックなどへの投資で知られるホロウィッツ氏だけに、多くのスタートアップ企業や若手のビジネスパーソンからも復刊を熱望する声が相次ぎ、再刊されたのだ。

起業家という生き方教える

再刊版に序文を寄せたホロウィッツ氏は言う。「当時はまだブログもTED講演もないころで、起業家という生き方を私に教えてくれる人は誰もいなかった」。そこに現れたのが激務をこなすインテルの最高経営責任者(CEO)がわざわざ筆を執ったペーパーバック版だったという。本文は事業を3分ゆでのゆで卵とトーストとコーヒーを出す「朝食工場」にたとえるところから始まる。具体的なたとえをもとに生産の基本が語られ、マネジメントが動き出す。ミーティング、決断、プランニング――日々の業務遂行で出合う様々なマネジメント要素について具体的で本質的な話を展開していく。ホロウィッツ氏の絶賛が読むほどによくわかる。

「経済・経営・ビジネス書の全体では9位だが、一般の読者が手に取った本としては4番手の売れ行き。再刊が望まれていたのがよくわかる初速」と副店長の木内恒人さんは話す。

経団連の労働報告書が異例のベスト5入り

それでは今週のベスト5を見ていこう。

(1)修身のすすめ北尾吉孝著(致知出版社)
(2)幾代もの繁栄を築く後継社長の実務と戦略牟田太陽著(PHP研究所)
(3)アフリカで超人気の日本企業山川博功著(東洋経済新報社)
(4)チームを動かすファシリテーションのドリル山口博著(扶桑社)
(5)経営労働政策特別委員会報告日本経済団体連合会編(経団連出版)

(八重洲ブックセンター本店、2017年1月15日~1月21日)

『経営労働政策特別委員会報告』と『春季労使交渉・労使協議の手引き』はレジ脇に平積みされている

『経営労働政策特別委員会報告』と『春季労使交渉・労使協議の手引き』はレジ脇に平積みされている

1~4位に版元・著者関連のまとめ買いが入った本が並ぶ。ユニークなのは5位の『経営労働政策特別委員会報告』。まさに経団連による働き方や労働政策、労使交渉に望む姿勢などをまとめた経団連の指針を書いたリポートで毎年この時期に出る。「毎年売れるには売れるが、今年はちょっと異常なぐらい売れている」と木内さん。長時間労働問題の広がり、働き方改革への関心などで、複数冊買っていく企業読者が多いという。

一般客が購入した本は6位以下となった。簡単に紹介しておくと、6、7位が『「言葉にできる」は武器になる』(日本経済新聞出版社)と『やり抜く力』(ダイヤモンド社)、8位には教養書を相次ぎ出版している出口治明氏の新刊『座右の書『貞観政要』』(KADOKAWA)が入った。9位が冒頭の1冊で、10位が『生産性』(ダイヤモンド社)だ。

(水柿武志)

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