進化するタレントショップ VRライブや交流カフェも

タレントショップが、タレント本人がそこにいなくてもバーチャル(仮想)にファンと交流する場として進化してきている。キャラクターのほかに、3次元(3D)やホログラムなどの立体映像技術を生かし、さらにタレントの考案した食べ物やグッズなどで魅力を高め、多くのファンを呼び寄せている。

1980年代に東京の原宿や全国の観光地にテレビタレントや歌手たちがこぞってオープンさせたタレントショップ。店先に自らのキャラクター人形を立て、肖像やロゴをプリントしたグッズを販売。ファンや観光客が長い行列をつくった。しかし、今やそうしたグッズは、全国どこからでも公式サイトのネット通販やオークション転売などで簡単に手に入る。そんなネット時代にファンが求めるのは、好きなアイドルやアーティストと実際に会えるリアルなライブエンタテインメントだ。

本人不在でもレア感味わう

ライブ会場では限定販売のグッズも買える。「会える」上に、レアグッズが「買える」ため、市中のショップでは「どんなに値下げしてもレア感のないグッズは売れなくなった」(都内のタレントグッズ店)。ライブなどイベントと直結しないグッズの販売は厳しくなった。

しかしいつの時代も人気者は多忙を極め、ショップでのサイン会やミニライブなど、来店イベントを頻繁に開くのは難しい。そこで今、芸能事務所やレコード会社、CDショップなどが、物販の会場にアーティストがいなくても、音楽や映像を使った演出でライブエンタテインメントを疑似体験できる仕掛けを設けたり、カフェなどの飲食スペースや写真撮影スポットを用意したりして、ファンの交流や憩いの場を提供。楽しみながらグッズも買ってもらえる滞在型のショップを展開する例が増えている。

2016年に日本でのライブ動員が最も多かったBIGBANGの場合、ライブ会場のグッズ売り場に長蛇の列ができる。そこで別途、ライブ会場でグッズを買う臨場感とレア感を追体験できる「スピンオフ空間」をファンに提供するため、映像や音楽が楽しめるカフェやレストランを展開。行列や満席になる人気ぶりだ。

日本のアーティストも同様で、CDストアチェーン大手のタワーレコードは、ファンとアーティストが集う場として新たにカフェを提供している。12年に東京の渋谷店内にオープンしたのを皮切りに、表参道店、大阪の梅田NU茶屋町店などがオープン。アーティストやアニメ作品などのプロモーションを兼ねたカフェイベントを年間合計30企画ほど展開中だ。

2月15日にニューアルバムを発売予定。4月にはD―LITE(写真右端)のソロドームツアーも
ライブ当日は深夜2時まで営業し、ファンで満席になった

VRで巡業 地方に活気

一方、多くの人気アーティストを抱えるエイベックスでは、ホログラムや3Dで彼らのライブを疑似体験できる「VRシアター」を展開。15年には愛知県のテーマパーク「ラグーナテンボス」にアーティストの映像を360度スクリーンの3D映像で楽しめる「エイベックス360°3Dシアター」を開設した。目標は、VR化したアーティストが全国を回り、地方創生に一役買うこと。小回りを利かせるため、小型の移動式シアターも地方で始めている。

ライブのようにアーティスト本人が稼働するわけではなく、ポスターやブロマイドのような完全な2次元でもない、バーチャルなショービジネスが日本のファンに受け入れられるのはなぜか。その理由として“日本人のキャラクター好き”を挙げる運営者は多い。

例えば、米国では子ども向けのキャラクターとして愛されてきたスヌーピーは日本では大人が主に愛好し、ミュージアムが連日混雑している。また、前述のBIGBANGの飲食・物販展開では、メンバーを模したキャラクターをファンは愛し、フードやアイテムに配された彼らの姿を楽しんでいる。「海外のファンは楽曲を愛するが、日本のファンはアーティストの存在を愛(め)でる」(外資系レコード会社の幹部)

「グッズやカフェなど版権ビジネスに強いのはアニメーションだが、映像の上映技術やグッズの多様化、各地でのカフェの成功を見ていると、本人が稼働できないアーティストの場合も、フードやマーチャンダイジングビジネスを、バーチャルな形で展開できると感じている」(複数の運営者)。バーチャルエンタテインメントが、日本市場を活気づける日も遠くないかもしれない。

(「日経エンタテインメント!」2月号から再構成。文・白倉資大)

[日本経済新聞夕刊2017年1月28日付]

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