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実らなかった恋は、いつまでも美しい

[中原聡子さん(仮名) 第2回]

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NIKKEI STYLE

こんにちは。ライターの大宮です。たまに映画を見るぐらいしか趣味がない僕ですが、我を忘れるほど好きなことが1つだけあります。おいしい料理とお酒をゆっくり味わいながら、すてきな女性とおしゃべりすること。自分なりの意見や嗜好はあるけれど対話によって自分が変わることも楽しめて、なおかつ飲み食い好きの女性が相手だと最高の気分です。

都内の人材紹介会社でマネジャー職に就いている中原聡子さん(仮名、42歳)は、仕事着だというVネックのブラウスと黒いジャケットが細身のスタイルによく似合う美人です。銀座にある和食店に誘いました(前回記事:「42歳・人材紹介業管理職 忙しすぎた私の『適齢期』」)。上質の魚料理で人気があるお店です。白身魚が特に好きだという聡子さんが喜んでいるのが伝わって来ます。楽しいなあ。二軒目もお誘いしちゃおうかな……。その前にインタビューを終えなければなりません。

聡子さんが東京本社に引き抜かれて上京したのは3年前。それまでは生まれ育った地元・北海道で働いていました。車とスキーが好きなので、都会よりも地方のほうが暮らしやすいと振り返ります。31歳のときに地元で好きになった人も9歳年上のアウトドアインストラクターの耕平さん(仮名)でした。

尊敬から好きになったインストラクターの彼

「海外のリゾート地を転々としながら働いている男性でした。私もアウトドア好きなので技術も知識もすごい彼を尊敬していて、いつの間にかすごく好きになっていたんです。共通の知り合いと一緒に会っているときも好意を伝えていました。私は本当に好きだったのに、彼も含めてみんなから『それは年上に憧れているだけだよ』と相手にされなくて……。彼はバツイチで、前の奥さんとの間には子どもがいたので、女性関係には慎重になっていたのかもしれません」

硬派な耕平さんにますますのめり込んだ聡子さん。2人きりで食事に行ったこともありますが、恋人関係には進めなかったそうです。そのうちに耕平さんは海外に行ってしまい、2人は疎遠になってしまいました。現在、耕平さんは現地の女性と再婚して幸せに暮らしているそうです。

「できれば地元で暮らしたい私とはいろんな感覚が違いました。でも、すごくカッコいい人だったな……」

耕平さんの思い出話を語るとき、聡子さんの目は輝き、口元には哀愁のようなものが感じられます。少し酔いが回ってきただけかもしれませんが、聡子さんはまだ耕平さんが好きなのだと僕は感じました。以前にお付き合いしていた直之さん(前回記事参照)とは大きな違いです。

耕平さんとも実際に交際していたら、こんな風に切ない様子で思い出すことはなかったかもしれません。手が届かなかったからこそ、美しい記憶がそのまま保存されているのだと思います。

余談になりますけど、僕にも学生時代に片想いをしていた女性が2人います。それぞれに2年間ずつ熱を上げていました。「恋愛大学」の前期課程、後期課程みたいなものですね。どちらからも優しくフラれてしまったんですけど……。

彼女たちは今ではお母さんです。数年に一度ぐらいのペースで、共通の友だちも含めて顔を合わせることがあります。相変わらずキレイですけれど、昔のように胸がドキドキしたりはしませんよ。僕も今では既婚者ですしね。友だちとして和やかに会話をします。

でも、彼女たちのちょっとしたしぐさや言葉遣いで、あの頃の喜びと苦しさが入り混じった気持ちがよみがえることがあるのです。そして、他の女友だちに対するよりもほんの少しだけ親切にしたりします。下心があるわけではありません。懸命に不器用な恋をしていたあの頃の自分に花を手向けるような気持ちなのです。片想いも悪くはない。今ではそう思えるようになりました。

さて、聡子さんはそれからどんな恋をしたのでしょうか。続きはまた来週。

大宮冬洋(おおみや・とうよう)
 フリーライター。1976年埼玉県生まれ。一橋大学法学部卒業後、ファーストリテイリングに就職。1年後に退職、編集プロダクションを経て02年よりフリーに。著書に『30代未婚男』(共著/NHK出版)、『バブルの遺言』(廣済堂出版)、『私たち「ユニクロ154番店」で働いていました』(ぱる出版)など。電子書籍に『僕たちが結婚できない理由』(日経BP社)。読者の方々との交流イベント「スナック大宮」を東京もしくは愛知で毎月開催中。
ライター大宮冬洋のホームページ http://omiyatoyo.com/

「キャリア女子ラブストーリー ~アラフォーからの恋愛論」バックナンバー

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