運動会で「絆」引き戻せ オンワード、18年ぶり復活離れた職場、メールで交流希薄化…、運動会で手軽に団結

綱引きで盛り上がる社員たち(千葉市)
綱引きで盛り上がる社員たち(千葉市)

オンワードホールディングス(HD)が運動会を18年ぶりに復活させた。アパレルメーカーの社員は百貨店やファッションビルなどの売り場で仕事をしており、社員同士で交流する機会が少ない。運動会は飲み会や研修より気軽に参加できる。2020年に東京五輪・パラリンピックが開催されることもあり、社内イベントとして運動会を選ぶ企業は増えそうだ。

16年10月26日。千葉市の幕張メッセでオンワードHDの運動会が開かれた。店舗の販売員からデザイナー、営業担当、商品企画まで、約2000人の社員や家族が参加した。青と赤、黄、緑のユニホームに分かれて、綱引きやリレーなどに汗を流した。

運動会で体を動かす広内会長(中)

広内武会長は「消費者の衣料品に対する価値観が変化し、百貨店で買い物をする人も減った。逆境の時こそ、全員一丸となって前に進んでほしい」とあいさつした。

かつては多くの企業が運動会を開いていたが、個人の趣味やライフスタイルを重視する価値観が強まり、徐々に減っていった。オンワードHDが最後に開いたのは1998年だ。しかし最近になって取引先の百貨店や他のアパレル企業が開催し始めたことから、16年春から復活に向けて準備してきた。

総務部総務1課の杉山隆太さん(42)は、運動会の運営担当として、競技種目の選定や社員への告知をしてきた。「今の若い社員が前向きに参加してくれるだろうか」「同僚と『競争』をすることに抵抗を感じないだろうか」といった不安があったという。

綱引きで盛り上がる社員たち(千葉市)

しかし、運動会に参加した社員からは「次回も参加したい」、「来年はこんな競技を取り入れてほしい」といった声が多く、「グループの一体感が高まった」と感じたという。

社員のコミュニケーション向上の手段として運動会を選ぶアパレル企業や百貨店は増えている。百貨店では三越伊勢丹が15年、両国国技館(東京・墨田)で21年ぶりに開催したほか、松屋も16年に開いた。アパレルや百貨店は店舗や職場が分散していて、普段の仕事では同じ会社の社員と接する機会が少ない。コミュニケーションをより求めているようだ。

企業向け運動会開催を請け負うセレスポ(東京・豊島)によると、16年度(4~12月)の運動会受注件数は177件と、前年度(15年4月~16年3月)より26%増えた。10年前の4倍だ。

セレスポは「飲み会では上司に気を使うが、運動会なら全員がリラックスできるのが魅力。健康志向が高まっていることも背景にある」と説明する。運動会であれば、多くの社員も小学校や中高時代に経験があり、説明がいらない。フットサルやゴルフ、テニスといった競技より気軽に参加できる。会社側の費用はおおむね1人1万円程度という。

企業からの問い合わせが増え始めたのは、08年ごろ。専門サイトを立ち上げるなどして強化し、受注も増えてきた。00年代後半はスマートフォン(スマホ)が普及しはじめ、社内の連絡手段としてメールが一般的になった時期と重なる。同社は「会話がメールに変わり、対面のコミュニケーションの大切さが改めて認識されたのではないか」と分析する。

(佐竹実)

[日経産業新聞2017年1月24日付]