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火災保険、古い契約なら見直しも 自宅の再建困難に

2017/1/28

糸魚川市の大規模火災では多くの建物が全焼した

 新潟県糸魚川市の大規模火災から1カ月余り。木造住宅が密集する地域が多い日本では火災や延焼のリスクは小さくない。被災した場合、住宅の再建には火災保険による備えが有効だ。適正な保険金額で加入しているかどうか改めて確認しておこう。

 糸魚川市街地で昨年12月発生した火災は、120戸が全焼する大災害となった。新潟県は被害が拡大したのは強風によるとして、自然災害を対象とする被災者生活再建支援法の適用を決めた。火災での適用は初めてだ。

 同法では住宅が全焼した場合、最大300万円を支給する。県・市の制度の上乗せで最大400万円になるが、この金額では戸建て住宅の再建は難しいのが実情だ。火元となった中華料理店に賠償責任があるかどうかは現時点で不透明だが、失火責任法では重大な過失がない場合は延焼の責任を負わない。仮に重い過失があるとされても賠償できる資力がなければ、被災者の住宅再建は難しい。

 こうした事情は糸魚川の例に限らないため、元の場所で住宅を再建するには火災保険による備えが大事になる。内閣府の調べでは、持ち家(マンション含む)世帯の火災保険・共済の加入率は9割を超える(グラフA)が、保険金額が再建に必要な水準かどうか確認しておきたい。

■経年劣化で減価

 まずチェックしたいのが火災保険金の支払い基準だ。「時価」と「再調達価格」の2つの基準があるからだ。時価で契約していると、焼失したときの損害は時価で評価する。建築・購入したとき1000万円の保険金をかけた住宅でも、経年劣化で時価が700万円であれば、保険金は700万円しか受け取れない。

 一方、再調達価格であれば損害の評価は同等の住宅を新たに建築・購入するのに必要な価格とされる。古い家でも同等の家を建てるのに1000万円かかるなら、1000万円を受け取れる。

 1998年の保険料自由化前は時価が中心で、それ以降は再調達価格での契約が主流。2010年前後からは多くの損害保険会社で新規契約は再調達価格のみとなっている。時価契約でも一定の金額は受け取れる可能性があるが、自宅の再建費用を確保したいなら再調達価格で契約し直す方が無難だろう。

 では保険金の適正額がどのくらいか知るにはどうすればいいだろうか。基本的には保険会社に見積もりを頼むのが一案だが、自分で大まかな額を調べる方法がある(図B)。まず自宅の構造や延べ床面積を確認する。登記済み権利証などを参考に「木造・120平方メートル」という具合だ。

 次に調べるのが一平方メートル当たりの建築単価。国税庁がホームページで公開している「建物の標準的な建築価格表」が参考になる。自宅の構造に応じて、最新の建築年の工事予定単価を調べる。木造の場合は15年で1平方メートル当たり16万5400円だから、延べ床面積が120平方メートルなら建築費用は1984万円になる。

 これをカバーする2000万円が保険金額の目安といえる。「住宅の所在地や施工方法などによって費用は変動するため、損保会社も上下3割ぐらいの幅で金額を提示するのが一般的だ」とファイナンシャルプランナー(FP)の平野敦之氏は話す。

 保険料はどれくらいになるだろうか。住んでいる地域や建物の構造などによって様々だが、三井住友海上火災保険によると木造住宅(新潟県、非耐火構造)で保険金2000万円の場合、保険料は年3万6220円だ。

■期間長期なら割安

 保険料の負担が重いようなら補償内容を見直すのが一案になりそうだ。例えば水災。マンションの上層階だけでなく、戸建てでも氾濫するような河川が近くになければ外してもいいかもしれない。保険期間を長期にするのも有効だ。「契約期間を5年にすれば、1年のときと比べて毎年の保険料が約5%割安になる」(三井住友海上)

 「相続した実家の火災保険をどうすればいいのか相談を受けることがここ数年で増えた」。平野氏はこう話す。亡くなった親から家を引き継いだものの、当面住む予定がないので保険は不要と考える人が珍しくないという。

 ただしリタイア後などいずれ住む予定があるなら、住宅向けの保険に加入するのが選択肢だ。一方、住む予定がなく、立地などから売るにも売れない物件でも加入しておくのが無難だという。

 こうした物件は原則として住宅用保険の対象外で、店舗や事務所向けの保険に入る。「住宅用と同じ保険金を設定する場合、保険料は2~3割高くなることが多い」(FPの松浦建二氏)。火事になっても失火責任法があるので賠償責任を問われる可能性は低いが、「火災後の片付け費用が発生するため、最低限の保険はかけたい」と平野氏は助言している。(川鍋直彦)

■隣家に延焼被害 類焼特約で備え
 自宅の火災で隣家に延焼被害を及ぼした場合、重大な過失がなければ失火責任法により賠償責任は問われない。それでは心苦しいなどといった場合に備えて多くの損害保険会社が用意するのが火災保険の類焼損害特約だ。延焼や消火活動で隣家の建物や家財が被害を受けたときなどに損害を補償できる。自動車や現金などは対象外だ。
 隣家が加入する火災保険でカバーできなかった損害を補償するのが一般的。保険金1億円、期間1年で特約保険料は2000円以内の例が多い。類焼リスクの高い木造密集地域でのニーズが強く、ある大手損保は2016年度の契約件数が前年度比約1割増の見通しだという。

[日本経済新聞朝刊2017年1月21日付]

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