WOMAN SMART

DUALプレミアム

パタハラ問題 男性の育児参加が進み始めた証拠だ 「男性学」田中俊之さんに聞く

日経DUAL

2017/2/16

日経DUAL

PIXTA

長時間労働が当たり前の日本で働き続けてきたパパ達が、子どもが生まれ、子育てに関わりたいと思ったとき、社会ではどんな困難が待ち受け、それをどう夫婦で乗り越え、家族の絆を築いているのでしょうか。

男性学の第一人者である田中俊之先生(武蔵大学社会学部助教)にお話を伺いました。田中先生も1歳の子どものパパです。日経DUALのアンケートでは「育児参画のために残業を減らした」パパが多いことが分かっています。周囲に気遣いしながら定時に帰り、帰宅後の時間を育児に充てているわけです。田中先生は、自身の体験からも、「真面目に育児に取り組んだら、これまでと同じペースで仕事は続けられない」と言います。そんな田中先生に、両立パパが直面している問題や解決策、また、両立しやすい社会に近づけるために、今、私達ができることを聞きました。

■育児に関わるなら、仕事のペースは落としていい

昨年、息子が生まれました。以来、毎日、18時に帰り、お風呂に入れていますが、育児に真面目に取り組もうと思ったら、とてつもなく大変です。子どもができたからといって、個人の能力が急激にアップするわけではありません。初めての子どもならなおさらのこと、経験がないのですから、不安だらけです。ただでさえ仕事でいっぱい、いっぱいのところに育児が加われば、今までと同じペースで仕事を続けるのは無理があります。

田中俊之先生

私は、これまで夜に行っていた執筆活動は、まったくできなくなりました。夜の3時間、育児にとられている分、3時間分の仕事のアウトプットが減りました。

育児に積極的に関わる男性を「イクメン」と呼ぶようになって久しいですが、育児への関心を集め、「気づきを与えるため」の言葉としては効果的なキーワードでした。

ただ、私が気になるのは、「フルタイムで働き、家事や育児もてきぱきこなす男性」といったイクメン像が独り歩きしている点です。

実際に仕事と育児を両立させている男性の嘆きや葛藤は語られず、「どうやったら仕事と育児を両立できるのか」といった具体的な話もなく、“育児も仕事もてきぱきできる男性”が素晴らしいというイメージが増殖してしまったように思うのです。

人一人の一日当たりのパフォーマンス量はほぼ決まっているわけですから、育児に参画するのなら、その分、仕事を減らさなければなりません。でも、男性には、「俺が働く」的な呪縛があるうえ、優秀なイクメン像に囚われていますから、仕事も家事も育児もどんどん積み上げてしまいます。それができないと、「できるのが普通なのに、自分はできていない」と落ち込み、「それでもやらねば」と、追い込んでしまいます。私はそれを懸念しています。

■まずは両立パパの現状を知るべし

社会学では基本的に、現状がどういうものであるかをまず分析し、それに対して、なぜ、そうした現象が起こっているか、要因を考えます。そこで初めて、どういう対策があるかに目を向ける。そうした手順を踏まないと、実行力のある提案ができないからです。ところがイクメンは、手順を踏まずに、一足飛びに対策の話まで行ってしまった。

本来は、どうして男性が育児参加できない状況にあるのか、なぜ、そういう状況が生まれたのか、だったら、その要因をこうやって除去し、男性の家事・育児を促しましょう――という順番で進むべきだと思うのです。

仕事と育児の両立を果たす過程で、実は何に苦しみ、どう対策を練り、乗り越えているかという経験談はとても貴重です。なかには子育てに積極的な男性の育休を妨げる「パタニティーハラスメント」(パタハラ)を経験する人もいます。フルタイムで働く男性の育児参画が、どれだけ困難な状況にあるのか、これを語る人が増えています。これは、イクメン問題を考える上での新たなステージだと思うのです。

先ほども言いましたが、育児は尋常でなく大変です。子育て世代のパパが、真っ向から仕事と、子育て、その両方に取り組もうと思ったら、困難に直面するのは当たり前。仕事でも同じです。真剣に取り組めば取り組むほど問題の複雑性に迫ることになり、いい面も悪い面も出てきます。

もっとも、晩婚化が進んでいますから、結婚が遅い男性なら、パパになった時点で、上位職に就いているケースもあります。それなら自分の権限で仕事を調節し、育児にコミットできるので有利でしょう。今後は、こうしたイクボスが増えることにも期待しています。

WOMAN SMART 新着記事

WOMAN SMART 注目トピックス
日経doors
鎌田安里紗 ギャルだった私が「エシカル」を選んだ
日経DUAL
大ヒット文具開発パパ「娘におもろい!を言い続ける
日経ARIA
氷河期世代の44歳 ブラックな働き方と専業主婦の狭
日経doors
社会心理学でズバリ診断 あなたはこんなリーダーに
日経DUAL
岡崎朋美 育児と五輪挑戦を両立したことは私の財産
日経ARIA
山梨の限界集落に移住、家賃2万円の古民家で2拠点生
日経doors
離婚弁護士が教えるブラック彼氏の見極め方&対処法
ALL CHANNEL