「日本人は反抗的」と疑われる3つの英語
デイビッド・セイン「影の英語」(13)理由を聞く
ひとつの言葉は様々な顔を持っています。日本人の言葉が意図していない意味合いで伝わることもあります。日本人向けの英語教育で豊富な経験を持つデイビッド・セインさんが、日本人が使いがちな言葉から「影にある意味」を紹介します。今回は企画書が通らなかったとき、その理由を聞くシチュエーションです。
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Sorry, but this is not a very good proposal. 「残念だが、この企画書はそれほどよくないね」と言われて、ショックもありますが、まず一番聞きたいのがその理由でしょう。
「えっ、なぜ?」「どうしてなの?」。これがなかなか聞けません。相手を怒らせたり悪感情を持たれたくないと思えばなおさらです。
正しい訳:なぜ、好きではないのですか?
影の意味:いったい、何でなの?
明確な答えを知りたい場合に使うのがこれ。Why…? Because…は「理由」を尋ねる場合の問答の基本形のように思われていますが、実はイライラ感があります。Why…? と尋ねられると、相手はかなりのプレッシャーを感じ、必死で抗弁しようとします。結果雰囲気は最悪に。Why did you do this? 「どうして、こんなことをしたんだ!」 Because you told me to do it.「だってあなたがしろって言ったじゃないの」 このようなニュアンスになってしまいます。
正しい訳:あまり好きではないのですか?
影の意味:何だって?! 好きじゃないの?!
「なぜ?」相手の気持ちが信じられずに思わず出てしまったというイメージ。目上の人に使うことはできません。
正しい訳:どうしてですか?
影の意味:なぜなのよ?!
How come? や Why? のように短い言葉を相手に言うのは、基本的には丁寧さに欠けていると覚えておきましょう。この言い方ではちょっと反抗的、批判的に聞こえてしまいます。
これなら「影の意味」はない!
どうすれば、よくなるでしょうか?
この問いかけからは、自分の企画書が拒否された「理由」ではなく、どうすれば、受け入れられるような企画書にすることができるのだろうかという気持ちが読み取れます。非常に効果的なテクニックになります。
* If you could tell me why, I'd like to try to improve it. 「もし、理由が分かれば、もっと良くしたいと思います」と言うのもよいでしょう。
心から理由を知りたいと思っています。
want to…よりも大人の言い方であるwould like to…にreally をつけることで、あなたが心から理由を知りたがっていることが伝わります。きつい言い方にならないように注意しましょう。
* I'd really like to know the reason why. もよく使われます。
そうですか、分かりました。理由を教えていただけますか?
いきなり「理由」に言及するよりも Oh, I see. を入れることでニュアンスが和らぎます。それから理由を聞けばいいでしょう。その後に、 Maybe I can improve it. 「もっと改善することができると思います」を入れてあなたの気持ちを更に伝えます。
あなたが知らない本当の使い方―― reason
・There's reason enough to take him to court. 彼を裁判沙汰にする理由は十分にあります。
*reason enough to: ~する十分な理由
*take…to court: ~を裁判沙汰にする、~を裁判にかける
・It won't do any good to reason with him. He'll never say yes. 彼にいくら言っても何の役にも立たないよ。うんとは言わない。
*not do any good: 何の役にも立たない、何の効果もない
*reason with: 納得させる、説得する、理を尽くして説明する
・He's trying to find reason for hope, but it's difficult. 彼は必死で希望が持てる理由を探しているけど、難しいね。
*reason for hope: 希望が持てる理由
・I'm sure she can do it. There's no reason for concern. 彼女ならできると思います。懸念材料はありません。
*reason for concern: 懸念材料、心配の種
・Let's try to reason out this problem before we make a decision. 決定する前に、この問題を理論的に考えてみましょう。
*reason out: 理論的に考える、理論的に解決する
・I have every reason to believe that this plan will work. 私にはこの計画がうまくいくと信じるに足る十分な根拠があります。
*every reason to…: ~するに足る十分な根拠。 I have reason to believe that she is lying to us. 彼女が私たちにうそをついていると信じるに足る根拠/理由がある
・He likes to get in arguments without (any) reason. 彼はむやみに言い争ったりするのが好きだ。
*get into arguments: 口論になる、言い争う
*without reason: むやみに、理由もなく
・ABC canceled the contract without good reason. ABC社は正当な理由もなく契約を破棄しました。
*without good reason: 正当な理由もなく
・He suddenly quit his job without rhyme or reason. 彼は訳も分からない理由で突然職を辞してしまった。
* rhyme or reason: 理論、筋道、分別
・If for any reason you want to quit, please let me know first. 何らかの理由があってあなたが退職したいなら、私に最初に教えてね。
*if for any reason: 何らかの理由・事情があって/何らかの理由・事情により (肯定文の場合)
・If for any reason you can't come, please let me know. いかなる理由/事情でも来られないなら、知らせてください。
*If for any reason: いかなる理由・事情でも/いかなる理由・事情があるにせよ(否定文の場合)
自分に否定的な意見や決定に異議を申し立てるのはなかなか大変なことです。まずは「なぜ?」の理由を聞く必要がありますが、自国語であってもうまく言えないときにましてや外国語(この場合は英語)で言うなど、考えただけで気が重くなるかもしれません。しかし、ビジネスをする場面においては、必ず必要になるはずです。ダメである理由が分からなければ次のことが考えられません。臆せず、勇気をもって理由を尋ねてみましょう。もちろん、テクニックは忘れずに。
You can do it!
:D セイン
米国出身、20数年前に来日。 翻訳、通訳、執筆、英語学校経営など活動は多岐にわたる。企業や学校の人気セミナー講師。英語関連の出版物の企画・編集を手掛けるAtoZ(http://www.atozenglish.jp)・AtoZ 英語学校代表。長年にわたる豊富な英語教育経験を生かし、数多くの英語関連書籍を執筆。著者に「英語サンドイッチメソッド」シリーズ(アスコム)、「カシオ英会話学習機 入門ビジネス英会話 Joy Study」、「TOEIC テスト完全教本 新形式問題対応」(研究社)などの他ベストセラーも多数、累計300万部以上の著作を刊行している。日本経済新聞、朝日新聞、毎日新聞などでコラムを連載。NHKの日本語学習番組にレギュラー出演。英語教育推進事業団(EEPS) の学術顧問。受験生向けの英語学習サイト(http://david-thayne.com/)と日本文化を英語で紹介す る英語学習サイト(http://www.wakaru.guide/ )を監修。