昇進や達成感よりもあなたのヤル気がUPする要素は?
みなさんの中には、新しい年を迎えてキャリアの目標を立てた人も少なくないでしょう。ただ、働き方も仕事も多様化しているだけに、自分のキャリアプランはこれだ!と決められず「この会社で管理職として昇り詰めるぞ!いや、転職だ!そうだ、起業も見据えて……、うーん、やっぱりスキルを生かしてフリーランス?」と迷っている人もいるのでは。
私自身も紆余曲折を経て、今のような働き方になりましたが、今後、キャリアチェンジする可能性もあると思っています。でも、キャリアを考える上で、人の意見に過剰に左右されそうになったり、何かで迷うことがあったりしたときは、ある論文を指針に自分のキャリアを常に見据えるようにしています。
今回は、そんなキャリアにおいて皆さんの力になってくれるかもしれない学術研究を紹介していきます。
満足と不満を感じる要因は別
ハーズバーグという、人物の名前を聞いたことがある人もいるでしょう。というのも、彼の研究が企業内モチベーションや職場作りのベースになることが少なくないからです。
彼は、アメリカの臨床心理学者で、二要因理論(動機付け・衛生理論)を確立した人として有名です。
この理論は、モチベーション向上要因と、モチベーション低下要因への影響をまとめあげたものです。1959年に米国で確立された理論ですが、今もキャリアモチベーションにおいて、影響力を持つ考え方です。
この理論で興味深いのは、満足と不満足を感じる要因は別のものである、ということなのです。
モチベーションを上げ下げする5項目
例えば、給料が上がったときのことを考えてみましょう。二要因理論では、「給料」は下がると平均的にモチベーションを大きく下げることになります。しかし、上がったからといって平均的にモチベーションが大きく上がるとは限らない。
一方で、この理論によると「達成感」を感じると平均的にモチベーションアップにつながります。ただ「達成感」を感じなかったとしても、モチベーション低下に直結するわけではないんです。
以下に、モチベーションを上げる・下げる、それぞれの上位5項目を挙げています。
・達成感
・承認
・仕事そのもの
・責任
・昇進
・会社の管理体制
・上司の在り方
・上司との関係
・作業条件
・給料
日本人は「人とのつながり」がモチベーションに影響する
ここまで見てきて、「当てはまるなあ」と思う項目もあれば、「私はそうは感じないけどね」という項目がある人もいるでしょう。非常に古い論文ですが、日本でもこの理論が当てはまるのか分析されたことがあります。
Interpersonal Relation Factors on Motivation Hygiene Theory : A Study on Herzberg's M-H Theory by Means of an Empirical Approach (Part V)
これによると、日本人は、コミュニティーや人とのつながりが、米国よりもモチベーション満足度に貢献する可能性が示されています。つまり、上述した二要因理論のモチベーション低下要因を改善することで、日本人の場合はモチベーション向上につながる場合もあるとしているのです。
つまり、仕事仲間に恵まれることのほうが、自分の昇進や達成感以上にモチベーションアップにつながることもあるようです。
どんなキャリアを歩むか迷ったときは、お金や昇進・昇格というわかりやすい視点だけでなく、上述した要素それぞれについてじっくり考えてみてはいかがでしょうか。
きっと、個人それぞれ答えは違うはず。そこで初めて、自分が進むべき道筋が見えてくるのかもしれません。
マクロエコノミスト。Good News and Companies代表。昭和女子大学現代ビジネス研究所研究員。化粧品会社エイボン・プロダクツ社外取締役。1983年生まれ。神戸大学経済学部、一橋大学大学院(ICS)卒業。大和証券SMBC金融証券研究所(現:大和証券)では株式アナリストとして活動し、最年少女性アナリストとして株式解説者に抜てきされる。2012年に独立。経済学を軸にニュース・資本市場解説をメディアや大学等で行う。若年層の経済・金融リテラシー向上をミッションに掲げる。
[nikkei WOMAN Online 2017年1月18日付記事を再構成]
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