幻のヤマネコの赤ちゃん発見 南テキサスで20年ぶり
米国テキサス州で、小柄なヤマネコの一種であるオセロットの巣と子どもたちが見つかった。この発見は、GPSとカメラトラップ(自動撮影装置)を活用したものだ。南テキサス地方の保護区でオセロットの巣が見つかったのは実に約20年ぶりで、生物学者たちが感激している。
このニュースは2016年の年末に発表されたばかりだが、米魚類野生生物局の野生生物学者であるヒラリー・スワーツ氏は、オセロットの子どもたちは4月に2つの場所で見つかっていたという。
そのひとつである南テキサスのユトゥリアの保護区で研究者たちが見つけたのは、4頭の子どもたちだった。この場所は個人所有の牧場であるものの、「保全地役権」が設定されており、土地所有権と関係なく野生生物のすみかとして永久的に保護されている。
「私たちは子連れの母親を3頭見つけました。そのうちの1頭には双子がいました。珍しいことなのでとても興奮しています」とスワーツ氏は言う。
さらに、ユトゥリアの南にあるラグナアタスコサ国立野生生物保護区のカメラトラップにより、健康な子どもを連れた母親が3頭いることがわかった。現在、保護区全体にいるメスはこれで計7頭になる。
「見つけた巣は7頭目のメスのものでした。そこには驚いたような顔をした400グラムの小さなオスの赤ちゃんがいたのです」
母親の首に取り付けられたGPSのデータから、これはその子どもを育てるための2つ目の巣であることがわかっている。
「よくあることですよ」とスワーツ氏は話す。「母親は1つの場所で子どもを2、3週間ほど育て、別の場所に移ってまた数週間育てます」
オセロットが巣を移動するのは、捕食者から身を隠したり、ノミやダニを避けたりするためだと考えられている。
確かな成果
一連のかわいい子どもオセロットのニュースは、南テキサスでは歓迎されている。生物学者たちが毛皮の模様を分析した結果、南テキサスに生息するオセロットは約50頭と判明した。テキサス州全体でも、オセロットの総数は80頭から100頭ほどと見られている。
オセロットは南米から中米にかけて生息しているが、テキサスでは絶滅寸前だと考えられている。かつてはテキサス州の東のアーカンソー州やルイジアナ州にもオセロットが生息していた。しかし現在では、テキサス州にわずかな数が残っているにすぎない。さらに、スワーツ氏によれば、もともとの生息地の約95%が失われてしまった。
「失われたというのは、つまり、居住地が細分化されてしまい、ある場所から別の場所に移るには、人間の手が入った場所を通らなければならなくなったということです。それが、車にはねられるかもしれないという別の大きな脅威につながっています」
オセロットにとってのもう1つの問題が遺伝的隔離だ。遺伝的多様性が失われると、病気への抵抗力が低下するといった問題も生じる。
とはいえ、スワーツ氏は楽観している。「今年は子どもがたくさん生まれました。統計的にみて、当たり年とまで言えるかどうかはわかりませんが、すばらしいのはオセロットがしっかりと繁殖をしていることです。そして私たちも、脅威を減らすという点においては、一定の成果をあげています」
(文 Alexandra E. Petri、訳 鈴木和博、日経ナショナル ジオグラフィック社)
[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2017年1月10日付]
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