MONO TRENDY

デジタル・フラッシュ

新ダイナブック 実用性に振り切り、コスパも抜群 戸田覚のPC進化論

日経トレンディネット

2017/1/25

新登場のdynabook V82は実用性重視の2 in 1だ
日経トレンディネット

 東芝のパソコン事業が再編され、ようやく“らしい”製品が登場した。ボディーはもとより、メーンの基板まで新しく設計したという「dynabook V82」は、新生ダイナブックの象徴となるモデルだけに興味は尽きない。新生ダイナブックはV42、V62、V72、V82の4種類がラインアップされており、価格は15万~21万円前後となっている。

 「ZenBook 3」や「HP Spectre」「MacBook」など、最近登場した薄型軽量の新モデルは、どれも派手で目を引く外観で、自動車メーカーでいうところのスポーツカーのような存在。さほど台数が売れなくてもいいが、そのメーカーコンセプトや技術力などが集約された象徴的なモデルに位置付けられているわけだ。

 ところが、今回レビューするdynabook V82は違う。思い切り実用性に振った地味な外観なのだ。スペックを見れば実用性を徹底して追求していることがよく分かる。薄さや軽さだけでなく、処理性能やバッテリー駆動時間、拡張性などもユーザーが使いやすいように考えられているのだ。

外観は非常に地味で最近の薄型軽量モデルらしくない

■軽さ、薄さより長時間駆動

 dynabook V82の重量は1099g。つまり、ほぼ1.1kgだ。この軽さなら余裕で持ち歩けるのだが、このクラスで最軽量というわけではない。薄さも15.4mmと、不満はないが一番ではない。しかし、それらは17時間という長時間駆動とのトレードオフなのだろう。

 回転式の2 in 1は、通常のクラムシェルに比べるとヒンジや各部の強化が必要になる分だけ重くなる。軽さや薄さを追求しても仕方ないわけだ。確かに、われわれユーザーとしても「世界一薄い」「世界最軽量」などの言葉は聞き飽きた。僕なんぞは、自分が求めるスペックなら世界で何番目だろうとまったく気にならない。

 約1.1kgの軽さよりも、15.4mmの薄さよりも、現実的にありがたいのは17時間駆動だ。もちろん、カタログ値なので、使い方によって数時間は短くなるだろう。しかし、重量950gで10時間駆動と、1.1kgで17時間駆動なら、僕は迷わず後者を選ぶ。僕としては、20時間駆動と言われてもオーバースペックだとは思わない。常に駆動していて、必要な時にすぐに作業できなければ、タブレットモードを利用できる意味がないのだ。しかも、バッテリーはカタログ値の6~7割しかもたないのが普通だ。

こんなスタイルで使えるのも2 in 1モデルのメリット
パナソニックのLet's note SZと比べると薄さがよく分かる

■縦横比16対9のワイド液晶はバランスが悪い

 僕はdynabook V82を高く評価しているが、縦横比が16対9のワイド液晶はいかがなものか。13型クラスのパソコンなら妥当ともいえるが、12.5型だとちょっと狭く感じる。特に液晶をくるりと裏返してタブレットとして使うときには、やけに画面が細長く思える。一般的なタブレットには16対10以上の縦横比が多い。いまではスマートフォンは16対9、タブレットは16対10や3対2などの液晶を採用している。

 最近のモバイルノートは高解像度モデルが多いので、フルHDのdynabook V82は解像度的に劣っているように思うかもしれないが、緻密さは十分で、粗さを感じることはまずない。液晶がアンチグレアなのも地味さにつながっているが、僕はその点も高く評価する。ちなみにタブレットはほぼすべてのモデルが光沢液晶だ。

 液晶の上部には赤外線CMOSセンサーが搭載されていて、顔認証でログインできる。ちょっと残念なのが、アウトカメラがないことだ。僕は、ホワイトボードなどを撮影して資料に貼り付け、手書きでメモを取ることが少なくない。そんなときにはアウトカメラが欲しくなる。

ワイド液晶は、タブレットとして使うときにちょっとガッカリ
映り込みが少ないアンチグレアは何より見やすい

■USB Type-A端子とType-C端子を1基ずつ搭載

 拡張性は最低限で、充電を兼用するUSB Type-C端子が1基と、通常サイズのUSB端子が1基にとどまる。とはいえ、厚さ15.4mmのボディーを考慮すれば、通常サイズのUSB端子を1基だけでも搭載しているのは大きなポイントだ。極薄のモバイルノートは、USB Type-C端子1基しか搭載しないモデルが多いのだが、通常サイズのUSB端子が1基でもあればUSBメモリーなども利用できるし、スマートフォンなどの充電にも使える。USB Type-C端子も「Thunderbolt 3」に対応しているので将来性も文句なし。4Kモニターにも接続できる。

 また、標準でUSB Type-C接続のアダプターが付いてくる。このアダプターを使えば、HDMIやUSB3.0、RGB、有線LAN、電源にもつなげるので、ミニドックとしてdynabook V82を机の上に置きっ放しにしてもいいだろう。ディスプレーや各種周辺機器を接続しておけば、1台でデスクトップとモバイルを兼用可能だ。

 dynabook V82の充電にはUSB Type-C端子を利用するのだが、市販のACアダプターやモバイルバッテリーからも充電できた。付属のACアダプターと違って急速充電は利用できないだろうし、メーカーとしては保証しないはずだが、付属のACアダプター以外でパソコンを充電できる時代がついに来たのだ。これはすごいことだと思っている。

付属のUSB-Cアダプターには、各種のポートを搭載。ドックとしても使える

■キーボードは合格、ペンの書き味は最高だ

 dynabook V82のキーボードは75点といったところだ。本体のパームレスト面よりキーが低い構造にちょっと違和感を覚えるが、ストロークが1.5mm確保されているのは素晴らしい。この点も、薄さを追求しなかったからこそだ。

 残念なのは、タッチパッドに左右のクリックボタンがないこと。東芝は他のモデルでボタンを復活させているだけに、新生ダイナブックでも採用してほしかった。

 付属のペンはワコム製だ。処理性能が高いので、筆記が遅れるようなケースはまったく見られない。僕が何より注目したのは、アンチグレア処理による表面仕上げと、1mmの細いペン先の書き心地だ。とにかく書き味が良く、使っていてうれしくなってしまった。光沢液晶とペンだと書いていてペン先が滑ってしまうが、アンチグレア液晶だと紙とボールペンに書き味が近いのだ。ペン先はすり減るだろうが、そこは書き味優先で妥協したい。

ストローク1.5mmのキーボードはとても打ちやすい
タッチパッドに左右のボタンがないのが残念。また、指紋センサーがここに付いているのも個人的には好ましいとは思わない
ペンはとても書きやすいが、単6乾電池はちょっと困る。コンビニなどでは扱っていないからだ

■処理性能は文句なしでコスパも高い

 dynabook V82は、CPUにCore i7を採用している。それも「Kaby Lake」と呼ばれる第7世代の新しい世代のプロセッサーだ。体感上の速度は「十分に高速だ」としか言いようがない。

 ただし最近はCPUが全体的に高性能化し、しかもOSやアプリが軽くなっているために、Core i7でも、1つ下のCore i5と比べても体感上の速さを実感しにくいかもしれない。大量の写真の転送やビデオの変換など、ヘビーな作業をしてこその高速CPUなのだ。

 そしてCPU以上に注目したいのが、512GBのSSDを搭載していること。現時点で店頭で販売されているモバイルノートとしてはハイエンドのスペックだ。にもかかわらず価格は21万円程度と、かなり抑えられている。Coer i5に256GBのSSDを搭載する1つ下のモデルが18万5000円程度なので、僕なら迷わず顔認識にも対応する最上位モデルを選ぶ。

 東芝が久々にリリースした新モデルは、非常に魅力的で完成度も高い。僕としては液晶の縦横比が気に入らないくらいのものだ。実用的な回転式2 in 1を手に入れたいと考えているすべてのユーザーにおすすめする。

スピーカーは東芝らしく、ハーマン・カードン製だ
戸田覚(とだ・さとる)
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。

[日経トレンディネット 2017年1月10日付の記事を再構成]

MONO TRENDY新着記事

ALL CHANNEL