投信市場は資金流出続く 縮小均衡か発展かQUICK資産運用研究所 北澤 千秋

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投資信託市場の足元での最大の注目点は、分配金を引き下げた大型の海外REIT(不動産投資信託)型投信からの資金流出がいつまで続くかだ。高い分配金だけを目当てに買った投資家が、分配金の減額を機にファンドを売却するのは自然の流れ。ただ、多くの毎月分配型が運用実態に照らして不相応な分配金を払い続けてきたのは明らかで、分配金を減らす動きは今後も広がる見通しだ。だとすれば、個人マネーの流出が一巡するにはかなりの時間がかかる可能性がある。ここで道を誤れば、投信市場は縮小均衡に陥りかねない。

海外REIT型は解約加速

投信市場の拡大をけん引してきた海外REIT型投信が資金流出に見舞われている。

きっかけは昨年11月、株式投信で純資産総額トップだったフィデリティ・USリート・ファンドBが分配金を引き下げたことだ。分配金の減額は他の海外REIT型にも波及するとの見方から、残高が1兆円を超える上位3ファンドは、設定(購入)から解約を引いた資金流出入が一気に流出超に転じた。

QUICK資産運用研究所の推計によると、12月の純流出額は3ファンド合計で1000億円を超えた(グラフA)。

残高上位に顔を並べる新光US-REITオープン(ゼウス)、ラサール・グローバルREIT(毎月分配)も分配金を減らした1月は、13日までの7営業日で推計380億円の資金流出だった。両ファンドの分配金引き下げ発表後、解約額は日を追って増加しており、1月の月間純流出額は昨年12月を上回りそうな勢いだ。

もっとも、3ファンドとも昨年1年間の基準価格の騰落率(分配金再投資ベース)がマイナスだったように、分配金の引き下げは運用実態に照らせば当然で、むしろ遅すぎたともいえる。

それは海外REIT型だけでなく、毎月分配型全般にも当てはまる。投信業界がここ数年、繰り広げてきた分配金競争がほぼ限界に達していたからだ。

行き詰まった「分配金優先」の非常識

毎月分配型投信の残高の変化を「資金流出入」「運用増減」「分配金の流出額」という要因別に示した推移を見てみよう(グラフB)。2011年以後は資金の純流入を上回る水準で分配金を払い出してきた。つまり、毎月分配型は投信市場拡大の足を引っ張ってきたともいえる。

注目したいのは15年の動きだ。この年は運用による増減が3兆4000億円のマイナスだったにもかかわらず、分配金の総額は過去最高の5兆7000億円に達した。運用が不振なら、高い分配金を維持するには元本の食いつぶしである特別分配(元本払戻金)を増やすしかなく、その結果、多くの毎月分配型ファンドは基準価格の大幅な下げに見舞われた。

当時は通貨選択型やカバードワラント型など、分配金の原資をひねり出すための高リスク投信が全盛のころ。投信業界は高い分配金利回りをアピールしながら毎月分配型の拡販競争に明け暮れ、それが運用実態を無視した過去最高の分配金の支払いにつながった。

高額の分配金がいかに金融市場の常識を逸脱していたかを、別の面からみてみた(グラフC)。これは毎月分配型投信の残高に占める分配金総額の比率で、毎月分配型全体の分配金利回りとみることができる。

その比率は10年以後、一貫して10%台。どんなに運用が上手だとしても、10%以上の運用利回りを何年も続けるのは今の市場環境では不可能に近い。実際は、投資家の目をくらますために、投資元本の食いつぶしで高い利回りを維持してきたにすぎない。

しかも運用によって資産が増えた12~14年は低下したが、運用増減がマイナスに転じた15年に最高の15%に達していた。投信業界全体でみれば、15年は「安定的な運用よりも分配金の支払いを優先する」という、投信の常識を大きく外れた行いがピークに達した年だった。

DC・NISA生かして10年後の果実を

昨年来、運用実態にそぐわない分配金を見直す動きが広がっている。それは、金融庁の目が厳しくなっているからというより、高い分配金の維持がもはや限界に達したからと理解した方がよさそうだ。こうした動きは今年も続くだろう。

高分配の海外REIT型というけん引役の存在感が薄れ、投信市場全体はしばらく低迷が続く恐れがある。しかし、今さら海外REIT型に代わる高分配の毎月分配型を探し出し、相も変わらず退職世代に売り込むのでは、投信市場が縮小均衡してしまうのは目に見えている。

一方、個人型確定拠出年金(DC)や積み立てNISA(少額投資非課税制度)という制度を生かし、投信を国民の資産形成の手段として定着させられるなら、5年後、10年後には大きな果実を享受できるはず。投信業界は今が踏ん張りどころだ。

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