『逃げ恥』で注目の大谷亮平 ドロドロの不倫劇に挑戦
2016年後半のドラマ界で最も話題となった『逃げるは恥だが役に立つ』。TBS火曜22時ドラマ枠の歴代視聴率を更新し続け、最終話(12月20日放送)で20.8%を記録。そのドラマで「あの人、誰?」と注目を集めたのが大谷亮平だ。主人公・森山みくり(新垣結衣)が契約結婚する相手、津崎平匡(ひらまさ、星野源)の職場の後輩・風見涼太を演じ、結婚には否定的ながら、仕事もデキるし、料理もデキるスーパーハイスペックなイケメンという役どころで、回を追うごとに存在感もアップ。人気も急上昇することなった。
大阪府出身で、「バイト先の先輩に勧められて」モデルとしてキャリアをスタートした後、03年、韓国のダンキンドーナッツのCMで注目され、04年、韓国の芸能事務所から誘いを受けて渡韓。韓国ではCM、ドラマ、映画で活躍する日本人俳優として知られていた。"第2のディーン・フジオカ"とも称される逆輸入俳優は、どのような経歴をたどってきたのか。
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「モデルを始めたときも軽い気持ちでしたが、韓国に行くときも気軽でした。韓国語も話せなかったけど、迷いはなかった。仕事しながら言葉を覚えて……という感じ。僕は学生時代ずっとバレーボールづけで、そこからモデルの世界に入ったんですが、体育会系の世界とは対極で。そんな人間が今度は海外に行ったので、まず生活することが面白くてたまらなかったんです。そういう意味では、最初は軽かったかもしれないですね(笑)。
ただ韓国の事務所とはCMからゆくゆくは俳優業へ、という話だったし、心のどこかにモデルを始めたときに俳優業に進みたいという思いは漠然とありました」
06年、韓国で俳優としてシチュエーション・コメディ番組『ソウルメイト』でデビュー。数々のドラマや映画に出演。なかでも、韓国で大ヒットした『神弓‐KAMIYUMI‐』(11年)で監督の目に留まり、『バトルオーシャン 海上決戦』(14年)にも出演。シリアスな時代劇にキャスティングされがちだったが、近年はリアリティー番組の『ルームメイト』(15年)で人気を集めた。
「韓国・ソウルに暮らして11年半。振り返ると、縁があっていい仕事をもらえていたと思います。反面、ネイティブではないので、メインの役はもらえない。セリフをうまく言えないと韓国の俳優に取られる。やりたい役がなかなか来ないという葛藤はいつもありました。そんななかで、日本での活動を考えなかったわけでもなかった。ただ、僕は自分から道を切り開くタイプじゃなくて(苦笑)。自分でやろうとするとうまくいかない。待っていれば、そのうち流れが来るんじゃないかと思っていました」
福山雅治に教わったこと
そして現実に、チャンスは舞い込んだ。15年秋、釜山国際映画祭でアミューズのスタッフと出会ったことから、16年にアミューズと契約。月9ドラマ『ラヴソング』で日本の芸能界にデビューした。
「『ラヴソング』を始めたときは、まだ韓国でのレギュラー番組があったので、キャリーバッグを引きずって羽田からスタジオに通い、撮影が終わると、深夜2時の便でソウルに戻っていました。ドラマへの出演は5話目からでしたが、事務所の大先輩の福山雅治さんが主演で、ファーストシーンがその福山さんと2人だけ。ひよこの刷り込みじゃないですけど(笑)、最初に会った大スターで本当に良くしてもらったんです。現場でのあり方とか、演技する上での助言もいただきました。
本当に、今の40代の俳優さんって、男の目から見てもカッコいいと思うんです。一本筋が通っていて、どっしりとしている。4年後、僕がそうなれるか。なるためにはとにかく場数、経験を踏むことが大切だと思っています。実際、『逃げ恥』では、まだ僕は日本では俳優として未知数だから、現場ではみんながすごい目で見ている、見られているなと感じました。
最初ラブコメだと思っていたので、役に対しても浅いアプローチでいいかなと思っていたんです。ところが、現場に入ってみたら、演出が細かいし、やってることも新しいことが多い。ラブコメとかシリアスとか、そんなジャンルで簡単に考えるものじゃない。とても深いメッセージが入っているから、役に対してどう向き合ったからいいかすごく戸惑っちゃって、序盤で演出家やプロデューサーと話しました。そして作品の狙いや、僕に何を求められているのかも理解できたからこそ、演じられた気がします」
ただ軽いだけでなく、今の30代の空気を出せたからこそ、視聴者の目に留まったのだろう。現在36歳。「竹野内豊に似ている」といわれるなど、ワイルドな容姿で華がありつつも、素直で人懐っこい。「主役をやりたいですか?」という質問に「いつかは…。でも今は、積み重ねていきたい」と答えた。
そんな大谷の17年第1弾は、1月期の連続ドラマ『奪い愛、冬』。倉科カナふんする主人公の元彼で妻帯者という役どころで、ドロドロの不倫劇に挑んでいる。
「『逃げ恥』もそうでしたが、『奪い愛~』もパーフェクトな男。でも、今回はそれだけじゃなくて、心に深い傷や闇を抱えている。妻役の水野(美紀)さんとも話したんですけど、『私生活では普通経験しないようなドロドロが描かれている。そこをどう見せるか楽しみ』と。僕も今までと違う面を見せられるので頑張りたいですね」
(ライター 前田かおり)
[日経エンタテインメント! 2017年2月号の記事を再構成]
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