コレステロールと中性脂肪 どうすれば正常化する?

日経Gooday

これらの薬はPCSK9阻害薬(プロ蛋白転換酵素サブチリシン/ケキシン9型)という種類の薬で、家族性の脂質異常症の患者さん、もしくは心筋梗塞のリスクが高く、スタチンの効果が不十分な患者さんに対して使われます。

PCSK9は、LDL受容体に結合して分解を促進する働きを持ちます。その結果、血中のLDLは細胞に取り込まれにくくなります。エボクロマブやアリロクマブはこのPCSK9の作用を阻害し、LDL受容体が分解されないよう働きます。それにより、血液中の過剰なLDLが減って数値が下がるのです。

ただし、いずれも皮下注射による薬で、価格が高いのが難点です。たとえば月2回の注射であれば、3割負担の人で1カ月に約1万4000円も薬剤費がかかります。この出費は患者さんにとっては負担です。

――中性脂肪が高いタイプには、高LDLとは別の薬を使うのでしょうか。

寺本 中性脂肪が肝臓で作られる過程をブロックするのがフィブラートで、中性脂肪を下げるのに高い効果を発揮します。この薬は、リポ蛋白リパーゼ(LPL)という酵素が中性脂肪を分解するのを促してくれます。

フィブラートの問題は、腎臓の悪い人に使いにくいことです。多くのフィブラートは腎臓から排せつされるので、腎臓が悪い人が使うとフィブラートがうまく排せつされず、血中にたまってしまいます。そのため副作用が出やすく、注意を要します。

2017年頃には、新しいフィブラートのペマフィブラート(商品名未定)が発売予定です。この薬は肝臓で分解・排せつされるので、腎機能の心配はいりません。ただ、新薬は長期に処方できないので、2週間に1回は受診することになります。その煩わしさから、発売後1年ほどはペマフィブラートの恩恵にあずかる人は少ないかもしれません。

善玉のHDLを増やす特効薬は「運動」

――善玉のHDLが低いタイプの人は、何に気をつければいいですか。

善玉のHDLを増やすにはジョギングなどの有酸素運動が有効(c)warrengoldswain -123rf

寺本 善玉のHDLには食事はほとんど関係なく、代わりに効くのが運動です。低HDLの原因は、喫煙、肥満、運動不足の3つですが、多くの場合、運動すれば数値は上がります。運動は、中性脂肪が高いタイプにも有効です。

特に効果的なのが有酸素運動です。その証しに、マラソン選手はHDL値が高い人ばかりです。走るなら、少し息がはずむ程度の軽いジョギングがいいでしょう。ここで肝心なのは継続すること。中断しないよう、無理のない運動を選ぶ必要があります。早歩きでも何でもいいので、とにかく続けてください。

有酸素運動に加え、筋力トレーニングも重要です。筋肉の動きが活発になると糖の利用が増え、糖尿病のリスクが下がります。動脈硬化にはストレスも関与するため、筋肉を使ってストレス解消できれば一石二鳥です。

この人に聞きました

寺本民生(てらもとたみお)さん
帝京大学理事・名誉教授 臨床研究センターセンター長/寺本内科・歯科クリニック内科院長。1973年東京大学医学部医学科卒業。1980~82年シカゴ大学留学後、1990年東京大学医学部第一内科医局長、1991年帝京大学医学部第一内科助教授、97年同内科教授、2001年同内科主任教授、2010年同医学部長を歴任し、2013年より現職。専門は内分泌・代謝(脂質異常症)・動脈硬化。「患者のための最新医学 脂質異常症(コレステロールと中性脂肪)最新の食事療法」(高橋書店)、「中性脂肪とコレステロールをぐいぐいさげる本(楽LIFEシリーズ)」(笠倉出版社)ほか監修/編集多数。

(医療ジャーナリスト 田中美香)

[日経Gooday 2016年9月26日付記事を再構成]

医療・健康に関する確かな情報をお届けする有料会員制WEBマガジン!

『日経Gooday』(日本経済新聞社、日経BP社)は、医療・健康に関する確かな情報を「WEBマガジン」でお届けするほか、電話1本で体の不安にお答えする「電話相談24」や信頼できる名医・専門家をご紹介するサービス「ベストドクターズ(R)」も提供。無料でお読みいただける記事やコラムもたくさんご用意しております!ぜひ、お気軽にサイトにお越しください。


ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント
ウェルエイジング 健康で豊かな人生のヒント