センター試験を襲う大寒波 都心に雪は降るか編集委員・気象予報士 安藤淳

2017/1/13

天気のなぞ

2、3年に1度という強力な寒波が日本めがけて南下してきた。冬型の気圧配置が強まって日本海側だけでなく近畿・東海地方の太平洋側でも雪が積もり、大学入試センター試験がある14、15日は交通が混乱しそうだ。冬型の時に首都圏はよく晴れるが、実はまれに雪が降る場合もある。今回はどうだろうか。

1月14日午後9時の天気図と寒気の予想(気象庁作成)

都心にいると日中は日差しのぬくもりを感じ、いまひとつ「大寒波」の実感がわきにくい。しかし寒気の動きが見えやすい高度約5000メートルの天気図からは、日本全体が「冷凍庫」に入ったような状況が浮かび上がる。

14日には北海道~東北地方の上空は、零下42度を下回りそうだ。大雪のリスクが高まる目安とされる零下36度以下は、北関東以北に大きく広がる。雨か雪かの境目となる高度約1500メートルで零下6度以下の領域も、九州南部から伊豆諸島を結ぶ線まで南下する見通しだ。

冬型の気圧配置になると、いてつくような冷たい風が、海水温がセ氏10度以上もある日本海の上を吹く。海からは水蒸気が立ち上がり雪雲ができる。風がぶつかり合う場所では雲は発達する。陸地に吹き込み山に達すると上昇気流が強まり、さらに発達しやすくなる。

こうして日本海側では大雪が降るが、山を越えた空気は水分を失って乾燥し太平洋側の地方に吹き降りる。ただ、中国山地などの標高が比較的低い所や、山に切れ目がある場所では、雪雲は太平洋側までやってくる。名古屋、京都、大阪などで雪が降るのはこんな時だ。今回もこのパターンになり、名古屋などで大雪の恐れが出ている。

首都圏を含む関東平野は高い山々にブロックされて、雪雲はまず入ってこない。それでも寒気の勢いが特に強い時には雪雲が強風に運ばれて多摩地方に達し、八王子などで雪が降る。筑波山のような低い山でもちょっとした上昇気流が発生し、周辺でにわか雪が舞うことがある。

何とか関東平野に達した雲も、東京都心にやってくるまでには蒸発して消えてしまうのが一般的だ。冬型の気圧配置が強い時に、いくつか夏の入道雲のような雲が空に浮かび、だんだんと小さくなっていくのがわかることもある。一瞬、曇ってもすぐに晴れてしまう。

ただ、例外がある。それは東京湾から日本のすぐ南海上にかけての上空で風がぶつかり合い、上昇気流で雲が発生しやすくなる場合だ。専門家の間では「収束帯」と呼ばれている。

気象衛星「ひまわり」の画像に目をこらすと、冬型特有の筋状の雲とは別に、東京湾から神奈川県にかけてや房総半島あたりに収束帯に対応する局所的な雲の塊が見えることがある。寒気が強く気温が低ければ、この下では雪になる。多摩地方からやってきた雪雲が重なるなどして、思わぬ積雪になるケースもある。

今後の気象の傾向
日本海側を中心とした大雪  14、15日がピーク
ブロッキング現象と偏西風の蛇行  17日以降解消へ
北極振動  マイナスから徐々にプラスへ
日本付近の冬型の気圧配置  17日以降いったん緩むが再発も
低気圧  下旬にかけ南岸低気圧も

気象庁の松本積主任予報官によると、こうした仕組みで都心に雪が降った最近の例は2012年1月23日だ。天気図のパターンとしては冬型だが、収束帯のために関東には雲が広がった。局地的な低気圧も発生して雨が降った後、夜に雪に変わった。気象庁がある大手町では4センチメートル、羽田空港でも1センチメートルの積雪があった。

では、今回はどうだろうか。松本主任予報官によると、13日昼頃の段階では収束帯が発生するような兆しはみられなかった。午後には都心でも黒い雲が出て、千葉県にかけて広がったあと夕方~夜に太平洋に抜けていったが降水は観測されなかった。

収束帯の発生は狭い範囲の現象なので何日も前からコンピューターの計算で予測することはできない。半日前くらいに、急に兆候が現れる場合もある。寒気流入のピークを迎える14日には収束帯によって雪が降っても不思議ではないという。このため、13日夕方に出た東京地方の14日の予報では「所により昼過ぎから夕方に雪」という一文が入った。

今回の寒波は既に1週間近く居座っている。天気を変化させる上空の偏西風が蛇行し、高気圧や低気圧の動きが事実上止まってしまう「ブロッキング」現象が主な原因だ。北極に寒気がたまりやすくなったり低緯度地方に向けて流れ出やすくなったりを繰り返す「北極振動」も影響している可能性がある。ちょうど、寒気が南下しやすい「マイナス」のパターンになっているからだ。

気象庁の予想では、ブロッキング現象は17日以降は解消し、冬型の気圧配置も緩む。ただ、その後も寒気が日本付近に流れ込みやすい状況はしばらく続くという。

実は、寒気の勢いが少し弱まったくらいの時の方が、首都圏では雪が降りやすい。冬型に伴う雪ではなく、「南岸低気圧」による降雪だ。北からの空気に押されて日本に近づけなかった低気圧が、南岸沿いを通れるようになる。北に寒気、南に暖気があって「爆弾低気圧」と呼ばれるほどに急発達すれば、首都圏は大雪に見舞われる。強力な寒波が一段落した時にこそ、首都圏では雪への警戒が必要になる。

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