オリパラ

2020年から見える未来

今から備えよう 東京五輪もボランティア現場は英語!

2017/1/19

リオのゴルフ会場でボランティア仲間と記念撮影する竹澤さん(後列左)。7人のメンバーのうち竹澤さんを含め5人がブラジル以外からの応援組

2020年の東京五輪・パラリンピックを支えるのは日本人ばかりではない。五輪には全世界から大量のボランティアがやってきて、会場整理や通訳などにあたる。その数は数万人規模に上る。リオデジャネイロ大会に参加した3人のボランティアの経験談から、東京での「おもてなし」の姿が見えてくる。

11日夜、日本スポーツボランティアネットワークの主催で、リオ大会を支えたボランティアの報告会が都内で開かれた。報告会には英国で経営コンサルタントを営む西川千春さん(56)、様々な分野でボランティアや国際交流活動を続ける島村直子さん(54)、会社員、竹澤正剛さん(44)の3氏が登壇、スポーツボランティア経験者ら約80人が聞き入った。

開催地までの交通費は自己負担。宿泊先も自分で調達。

3人ともリオまでの飛行機代は自己負担。会期中はホテルなどの宿泊費が高騰するなかで、ホームステイなどの手段を使って宿を確保。運営側からはユニホームと食事、滞在先と会場までの交通費が支給された。

東京五輪・パラリンピック組織委員会によると、東京大会も無償での活動で、原則として東京までの交通費は自己負担。宿泊場所も自分で探してもらう方針で、活動中の飲食やユニホームについては、過去の五輪と同様の対応になる見通しだ。

ボランティアの共通語は英語。1万人規模の海外組が来日する。
リオでのボランティア体験を報告する西川さんと島村さん

リオ大会のボランティアは開催の約2年前からネットで募集が始まり、英語によるオンライン研修などを経て、1年ほど前に採用が決まった。西川さんと島村さんが卓球やバドミントン競技が開催されたリオセントロ会場で通訳、竹澤さんがゴルフ競技の会場で運営を担当した。

大会運営の共通語は英語。約1万人が海外からボランティアに参加して、二十数カ国語の通訳やドライバー、会場誘導、医療サポートなどで大会運営を支える。高額の渡航費と滞在費を自己負担して駆けつけるボランティアのモチベーションは高く、それぞれの活動に誇りを持って当たっている。

東京大会にも「間違いなく同規模のボランティアが来るだろう」(西川さん)とみる。9万人を超えるといわれる東京大会のボランティア。その大半は日本人かもしれないが、組織運営の多くは英語で行われることになりそうだ。

日本になじみの薄い競技でもしっかりサポート。
ワニやカピバラのいる池でゴルフ競技を見守った竹澤さん

竹澤さんによると、ゴルフ競技会場では約70人のボランティアのうち、およそ半分がブラジル人で、残りが海外からの参加。大会前のミーティングでいきなり現地のポルトガル語で運営について説明があったが、共通語であるはずの英語での説明はなかったという。困惑する海外組の一方で、現地組はゴルフのことはほとんど知らなかったらしい。「でもそれが五輪ボランティア。例えば、日本で近代五種競技を知っている人は非常に少ないが、それを海外組のボランティアと支えなければならない」と竹澤氏。

野生のワニとカピバラがいる10番ホールの池の近くで飛んできたボールを確認したり、ギャラリーの質問に答えたり。当初、大会全体で7万人とされたボランティアは経費削減で5万人に減らされ、さらに応募したのにやってこなかった現地の人などもいて、ゴルフ競技会場は圧倒的な人手不足で悲惨な状況だったという。ボールが入ったコース内の草むらにヘビがいないかの確認などに走り回った。「英語が通じなくても、無線連絡が混乱しても、最後はジェスチャーで意思疎通していました」(竹澤氏)

競技が開催されたゴルフ会場はブラジルで初めてできたパブリックコース。日本ほどなじみのある競技ではなかったようだ。しかし、東京大会ではテレビ放映されないようなマイナー競技でも実際に選手が競い合う。「競技を支えよう」という姿勢はより多くの人に求められる。

アスリートと感動を共有。メダル獲得の瞬間に遭遇も。
リオの卓球会場のミックスゾーンで通訳ボランティアの仲間と記念撮影する西川さん(左端)

通訳で重宝されるのがロシア、中国、韓国、日本の4カ国語とされる。「メダル有望な種目が多い一方で、語学が不得手な選手が多い」(西川さん)ためだという。

自国選手に寄り添う通訳ボランティアは、他では味わえない感動の場面に遭遇する。バドミントンでは高橋礼華、松友美佐紀両選手の「タカマツ」ペアが金メダルを取った。学生時代にバドミントンをしていた島村さんは眼前での快挙に感動を共有できたという。元卓球部だった西川さんは団体銅に輝いた女子卓球のメダル記者会見の通訳を担当。終了後に福原愛選手から「本当にありがとうございました」と握手を求められ「このまま人生終わってもいい」というくらいの喜びに震えた。

1万人以上のボランティアが活躍する東京マラソンで10年にわたってボランティア活動を続ける竹澤さんは「選手との一体感は地域スポーツの大会の延長線上。世界的なアスリートでも自分の近いところに下りてくる」と魅力を話す。

ただ、中には堂々と自国選手との記念撮影をしていて、ボランティアのリーダーに「IDカードを返却させるぞ」ときつい注意を受けた人もいたという。

実はしっかりしている日本人の英語。たとえジェスチャーでももてなす精神を。
リオセントロ会場で出会ったブラジル人の少女と記念撮影する島村さん

英語教育がしっかりしている一方で会話に難があるとされる日本人。西川さんは「英語の基礎能力は他国と比較して非常にしっかりしている。もっと自信を持っていい」とボランティアへの参加を促す。一方「ブラジル人は基本的な単語を知らないが、伝えようとする努力がすごい。言葉が通じなくても心が通じ合う」と評価する。

島村さんも「日本人は感情を表に出さない人が多い。ジェスチャーでも何とかなります」。最近増えてきた外国人観光客に「May I help you?(何かお困りですか?)」と笑顔で話しかけることを勧める。「あとは出たとこ勝負です」。「基本的には中学英語でOK」と竹澤さん。街中も外国人の観光客らであふれる2020年。「それに向けて英会話の勉強を頑張りましょう」(竹澤さん)

「目的は自国の選手の応援で、日本観光ではない」という人も多く訪れるだろう。通常の観光客よりも言葉が通じにくくなるかもしれない。それだけにホスピタリティーの精神が必要になる。

選手はアスリートの代表。ボランティアは一般の人の代表。
卓球男子個人で銅メダルに輝いた水谷隼選手へのインタビューに臨む西川さん。インタビュアーの女性スタッフに英語に訳して伝える

渡航費などを自己負担して無給の大会ボランティアを「安い労働力」と受け止める人もなお多い。西川さんは「それは大きな誤解で、東京大会までに解いてほしい」と訴える。大会までのオンライン研修やユニホームや食事の支給など、大会運営には大きなコストがかかっている。組織委員会もボランティアについて「大会に関わる多くの人と一丸となって大会を作り上げることで、他では決して得られない感動を体験する貴重な機会となる」と位置づける。

大会はわずか2週間。「それまでの3年間をどうするのかが大切」。竹澤さんは準備の重要性について強調する。島村さんも「ただボランティアを集めればいいという性格のものではない。何が起きるのか一人一人の準備は欠かせない」と話す。

「選手はアスリートの代表。ボランティアは一般の人の代表となる」。ロンドンやソチでもボランティアを経験した西川さんは「日本人は思った以上に海外で信用されている。自信を持って、熱い思いで海外の人を迎えましょう」と話している。

■東京大会のボランティアの募集条件(案)
2020年4月1日時点で満18歳以上で、日本国籍を有するか日本に滞在資格を持つ外国人。活動期間は10日以上。大会運営を支える大会ボランティアのほかに、国内外の旅行者に観光や交通案内を行う都市ボランティアも募集する。募集は18年夏ごろとしているが、都市ボランティアについては17年度末ごろに前倒しで募集を開始。人員は9万人を超える見通し。

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