初心者の投信選び インデックス型で値下げ競争

「初心者の投信選び」をテーマに議論をしている筧ゼミ。今回はインデックス型投資信託を取り上げます。ここ1~2年、信託報酬の引き下げが相次ぎ、投信のコスト競争のきっかけとなっています。発表者は岡根知恵さんです。

筧花子(かけい・はなこ、50=上)経済大学院教授。家計の経済行動や資産形成、金融リテラシーが専門。 岡根知恵(おかね・ちえ、38=中)パート主婦。将来の家計に不安を覚え、金融知識を身に付けようと大学院に。 屋久仁達夫(やくに・たつお、54)大手製造業の技術職。定年を控え年金・介護など老後資金に関心。

岡根 投信はどんな運用を目指すかで大きく2つのタイプに分かれます。その一つがインデックス型です。投信は株式や債券などに投資しますが、例えば株式なら日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)など市場全体の値動きを示す指数があります。インデックス型は指数の動きに投信の値動きが連動するように運用するのが特徴です。もう一つがアクティブ型で、指数を上回る運用成績を目指します。

屋久仁 つまりインデックス型の運用成績は指数が上昇すれば上がり、逆に指数が下落すれば下がるということですね?

岡根 その通りです。そうした商品性が分かりやすいことなどから初心者向きとされ、普及が進みつつあります。三菱アセット・ブレインズによると、2016年に新規設定された投信のうちインデックス型の割合は18.4%(11月末時点)と、12年のほぼ2倍になりました。さらに最近は信託報酬の引き下げ競争が激しくなっています。

屋久仁 信託報酬とは何ですか。

岡根 投信のコストの一つです。投資家が資産の運用と管理などを任せる手数料として支払い、運用会社や販売会社、信託銀行の3者で分けるのが一般的です。金額は保有残高に対して一定の比率をかけて算出します。もう一つの大きなコストである販売手数料は、購入するとき購入額に応じて1回だけ払いますが、信託報酬は運用期間中ずっと発生します。

 それだけに信託報酬が下がるのは投資家にとって朗報ですね。

岡根 はい。値下げが加速したのは15年9月からです。まず三井住友アセットマネジメントが、確定拠出年金向けに販売していた信託報酬の低い投信を一般向けにも売り出しました。日本債券、海外株式、外国債券、新興国株式の4本です。すると、それまで「購入・換金手数料なし」シリーズで低コストを売り物にしていたニッセイアセットマネジメントが11月、国内債券、外国株式、外国債券の3本で三井住友アセットより引き下げたのです。

屋久仁 日本株のインデックス型で低コストの例はありますか。

岡根 もちろんです。日経平均連動型の例を一覧表にまとめました。こちらも引き下げ合戦が繰り広げられています。まず15年12月に当時のDIAMアセットマネジメント(現アセットマネジメントOne)が「たわらノーロード」を発売すると、翌年1月に三井住友トラスト・アセットマネジメントが投入しました。9月に大和投信がネット専用の「iFree」で続き、11月にはニッセイアセットが最低水準を塗り替えるといった具合です。

 アクティブ型でも低コストの投信が出始めていますね。

岡根 例えばピクテ投信投資顧問「iTrust」シリーズの信託報酬は税込みで年率0.9612~1.4364%、大和住銀投信投資顧問「ひとくふう」シリーズは0.27~0.324%です。いずれも16年からの運用で、日本のアクティブ型の平均1.5%程度を下回ります。アクティブ型は指数を上回るために独自の銘柄選択に力を入れ、調査に人手や時間をかけるので信託報酬は一般的に高くなりがちです。しかし低コストのアクティブ型は金融工学の手法を活用し、株価や業績などのデータを基に投資先を決めたりすることなどで人件費を抑えています。

 低コスト化の理由として何がありますか。

岡根 信託報酬の差は、長期運用になるほど収益を左右するからです。例えば100万円を年3%で運用すると、資産は20年後に税金を考慮しない場合で約180万円です。信託報酬が年0.6%なら運用資産は約160万円になりますが、0.2%なら約173万円と13万円多い計算です。30年運用する場合は26万円の差になります。

屋久仁 それは大きいですね。

岡根 さらに投資家は長引く超低金利で運用難に悩んでいるので、コストの差に敏感にならざるを得ません。金融庁が金融行政方針で「フィデューシャリー・デューティー(受託者責任)」を盛り込んだことも見逃せないでしょう。金融機関は資産を預かった顧客の利益を最重視すべきだという考え方です。

屋久仁 日本投信全体の信託報酬は足元で1%程度と米国全体の0.7%程度をまだ上回っています。

岡根 アクティブ型が高止まりしているのが大きな理由です。一部で低コストの例があるとはいえ、純資産総額の上位は1.5~1.7%台の毎月分配型が占めています。ただ最近は運用の苦戦を理由に分配金を減らす投信が目立ちます。また今年から個人型確定拠出年金(DC)の加入対象が主婦や公務員などに広がり、現役世代のほぼ全員が利用できるようになりました。18年1月には積み立て型の少額投資非課税制度(NISA)も始まる予定です。投資家が長期投資をより意識するようになり、信託報酬引き下げの流れは続くとの見方が出ています。

■指数との乖離にも注意
三菱アセット・ブレインズ ファンドアナリスト 吉田開さん
長期の運用では信託報酬が高いか低いかが運用成果を左右するひとつの要素になりますが、投資信託を選ぶ基準はそれだけではありません。インデックス型投信では、例えば日経平均やTOPIXなど目標にしている指数の動きに、投信の基準価格がきちんと連動しているかを確認することが大切です。新興国株式や外国リートの指数に連動する投信の場合は、乖離(かいり)が目立つ例もあるので注意しましょう。値動きが指数の動きを常に下回るようでは、せっかくの成長を取り込めません。
インデックス型投信に限った話ではありませんが、資産残高の増減にも注意が必要です。資産が減り続けていると、償還される可能性があるからです。相場全体が急落して基準価格が下がっているときに償還されると、投資家は損失を被りかねません。
(聞き手は川鍋直彦)

[日本経済新聞朝刊2017年1月14日付]

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