日本の広域警備が変わる? 自律走行の監視ロボ登場アルテックが米VBから導入

米国では太陽光発電所で、ロボットを複数使って巡回警備に使う事例もある
米国では太陽光発電所で、ロボットを複数使って巡回警備に使う事例もある

米ベンチャーのSMPロボティクスシステムズは無人走行の監視ロボット、Sシリーズの提供を日本でも始めた。360度見渡すカメラを備え、自動で走らせられる。テーマパークの巡回、空港での鳥害対策など、広大な土地での警備の効率を高められるという。東京五輪・パラリンピックの警備でも活躍する可能性もある。

機械商社のアルテックが、SMPと日本での販売代理店契約を結んだ。SMPはSシリーズを日米のほかブラジル、スイス、オーストラリアなどで、代理店を通じて販売している。

車輪が4つついた車両型ロボットで、見た目はアヒルのよう。幅は80センチメートル、奥行き160センチ、高さ137センチ。総重量は110キログラムあるが、時速13キロで無人走行できる。ボディーは繊維強化プラスチックを採用し、衝撃に強い。

人間がリモコンを持ちながら、ロボットが見回りするルートを通らせて、あらかじめマッピングする。周辺の障害物など、読み込んだ情報はロボット本体に記憶される。一度の充電で10時間程度、読み込んだ情報どおりに敷地内を走行する。

高性能なカメラで周囲を撮影しながら自動で巡回する

アヒルの頭のてっぺん部分に、高性能のPTZカメラが付いている。自動車が歩行者や障害物を検出するのと同様の機能を持つ。顔の部分には、6方向から外部環境をとらえるカメラが埋め込まれている。こうしたカメラで不審者や不審物を正確にとらえられる。夜間でも機能する。

日本では監視カメラの設置が行き届いているが、管理者が動画や写真を確認するのは、リアルタイムではなくアフターフォローが9割といわれている。Sシリーズでは、カメラに映された情報を即時に管理者に伝える機能があり、非常時への対処が迅速になる。

路肩のブロックなどの段差は、一定の高さまで超えて走ることができる。設定次第では、カメラでとらえた不審人物を追跡しながら撮影することも可能だ。複数台取り入れると、車体同士が通信しあい、等間隔を保ったまま監視走行するといった秩序もあるのだ。

10通り以上の部品を付け替えられる。カメラの代わりに突起の先端に薬剤の噴射装置を配置すると、害虫駆除に向く。ガス漏れを検知する専用の器具は後部に取り付けられるようにする。監視だけでなく1台で幅広い用途に対応できる。

導入済みの米国では空港や太陽光発電所、テーマパークといった広大な現場での事例がある。

航空機のエンジンに鳥が衝突し、事故につながるバードストライクの多くは滑走路からの離着陸時に起こりやすい。巻きこまれやすい位置で空港職員が周辺の鳥を追い払う必要があった。ロボットを導入した実例では、鳥を追い払うために音や薬剤を発して空港の安全を守っている。

Sシリーズは3年契約のリース方式で提供する。月単位の料金は17万~18万円程度を見込んでいる。年内にも実機デモを開く。

日本ではまず、警備分野でのロボットの活用を提案していく。日本の警備業界は人海戦術への依存度が高いといわれる。東京五輪・パラリンピックなどで人材確保の必要性が高まるにもかかわらず、今後不足が目立っていくとの指摘もある。

警察庁の調べでは、2015年の国内警備員の数は14年に比べ0.2%しか増えておらず、53万8347人だった。5年間、53万人台の横ばいが続いている。

一方、東京五輪に向けて、民間の警備員は1万4000人程度必要になるとの試算もある。だが、簡単に臨時雇用できるかどうかわからない。

警備業界では、人手に頼らないサービス提供が始まっている。

最大手であるセコムは15年に、敷地内に不審者がいることを感知するとドローンが飛び、追跡して撮影するサービスを始めた。飛行船を飛ばして上空から広域を監視するサービスも16年に始めるなど、矢継ぎ早に打ち出した。

警備の担い手には高齢者もいて、犯罪などの被害に対応しきれないケースがある。ロボットを「つながる機器」として活用する動きは、製造業や物流業界と同じように、生活を守るセキュリティー分野でも広がっていくだろう。

(川崎なつ美)

[日経産業新聞2017年1月11日付]