ブランドぽん酢 今夜はこだわり鍋
鍋用・しめ用 使い分け楽しむ
食卓に鍋が頻繁に登場するこの季節。ちょっとぜいたくなぽん酢で変化を付けてはいかが。かんきつの果汁にしょうゆ、だしなどを合わせたぽん酢は、鍋との相性抜群。水炊きの具材をぽん酢にくぐらせれば、酸味が口いっぱいに広がり、具材のうま味がとけ出していく。専門家におすすめのぽん酢を選んでもらった。
ぽん酢はオランダ語でかんきつの果汁を意味する「ポンス」が語源とされる。江戸時代に長崎に伝わり、日本独自の調味料として発展した。ゆず、すだち、かぼす、だいだいやみかんなど、使うかんきつはさまざま。それぞれ味わいが異なり、用途も幅広い。
価格もそんなに張らないため、いろんなタイプをストックしておける。関西ではぽん酢を2種類以上常備している家庭も珍しくない。最初の鍋用、しめの雑炊用など、料理に応じて使い分けるのも楽しい。
かんきつをたくさん搾っているので、成分が沈殿したり、表面に浮かんだりすることがある。よく振ってから使おう。
通年使える定番の味
ゆずで有名な高知県馬路村が手掛ける定番の味。人手が少なく、青果での出荷が難しかったため、加工品に活路を見いだしたのが「ゆずの村」の始まり。ゆず果汁を皮切りに、創意工夫で産地としての地位を固めた。ぽん酢は人口約900人の小さな村の、大きな看板商品だ。
化学肥料や農薬を使わず育てたゆずとかつおだしを使い、「素材を生かすナチュラル感が良く、誰でも好きな味」(民輪めぐみさん)。全国にも知られており広く店頭に並ぶ。「コクがあり、優しい酸味は鍋との相性がいい」(平手健介さん)、「コストパフォーマンスがよく、気軽に鍋に使えそう」(林幸子さん)。
鍋以外でもドレッシングや焼き肉のタレなど、一年を通して活躍する。「お造りにも合う」(菊地秀幸さん)との声も。
(1)500ミリリットル、580円(2)http://www.yuzu.or.jp/
丹波黒豆で爽やかな後味
七味やサンショウで知られる七味家本舗は、京都・清水寺近くに店を構える創業360年の老舗。スタイリッシュな形のビンは高級感が漂う。丹波産の黒豆から造ったしょうゆと、徳島の温暖な気候で育ったゆずをブレンド。ゆずの風味が際立つが、黒豆で爽やかな後味に仕上がっている。全国のぽん酢を飲み歩く女優の藤島琴弥さんは「他にはないまろやかさ」と指摘する。「うまみがある中で優しい酸味が良い。高いがこだわりぽん酢としての価値はある」(平手さん)
和風の総菜、おばんざいにも合う。「湯豆腐や焼き魚、サラダにもよさそう」(民輪さん)。鍋や豆腐はもちろん、ちりめんじゃこや香味野菜のアクセントなど、味付けの幅を広げるアイテムになりそうだ。
(1)200ミリリットル、1026円(2)http://www.shichimiya.co.jp/
ゆず丸ごと一番搾り
広島の食酢メーカーが手掛ける、一番搾りの生ぽん酢。接ぎ木をせず、種から育った高知産の貴重な実生(みしょう)ゆずを使った。香り豊かな実生ゆずを生かすため、ゆずの果汁には火を通していない。天然の地下水を使い、米酢のコメは有機栽培米。うま味調味料や合成保存料は使わず、かつお節と昆布のダシを加えた。「かんきつそのものを食べている気になる」(安達雅之さん)ほど、素材が前面に出る一品だ。「高級感があり、品のいい味がする」(斎藤洋子さん)、「酸味と塩分のバランスが良く、鍋に合う」(田中勝さん)。
(1)300ミリリットル、907円(2)http://www.sennari-oochi.jp/
サラダにマッチ
ミシュランガイドの星獲得店や有名ラーメン店などがこぞって使う「下総醤油」の製造元が手掛けるぽん酢。国産の大豆や小麦、塩を使い、職人が丁寧に醸造した濃い口しょうゆに、たっぷりのゆずとレモン果汁を合わせた。爽やかでフルーティーな味わいは、鍋はもちろん、サラダやギョーザなどとも相性がいい。
「かんきつ系の香りと味が強く、マイルドな味。うま味の余韻が長い」(青木敦子さん)、「だしがきいていて、キャベツの千切りにも合う。コストパフォーマンスもいい」(斎藤さん)と、香りとだしのうま味が高評価だった。
(1)200ミリリットル、378円(2)https://www.chibashoyu.com/
肉にも魚にも
老舗しょうゆメーカーのぽん酢。寒暖の差が大きく、自然に恵まれた奥出雲のわき水、国産の大豆や小麦、天日塩などから作った丸大豆しょうゆに、ゆず、すだち、だいだいの3種のかんきつ果汁をブレンドした。「しょうゆとかんきつがマッチしている」(藤井康生さん)。一滴垂らせば奥深い味わいが楽しめる。うま味調味料や保存料は使わず、かつお節と昆布でだしを取った。「手造り感がありおいしい。お造りにも合いそう」(菊地さん)。「肉にも魚にも合う」(池上正子さん)など、万能性を指摘する声が多かった。
(1)360ミリリットル、734円(2)http://morita-syouyu.com/index.html
料亭のコク
1795年創業のしょうゆメーカーが手掛ける。料亭の味のようなコクと、酸味の強さが特徴。徳島産のすだちに、香りの強いかんきつである「ゆこう」とゆずの果汁を加え、酸味と香りを引き出した。「ぽん酢の存在感がある。香りがよく鍋に合いそう」(民輪さん)、「しょうゆ、かんきつ、だしのバランスがいい。素材が強調されている」(藤井さん)。鍋に合う王道の味には「友人宅での鍋パーティーに持って行くのにちょうどいい一本」(池上さん)との声も。
(1)360ミリリットル、572円(2)http://www.maruten-shop.com
しょうゆの醸造に適した水どころの奈良・吉野で、味噌やしょうゆを造り続けてきた老舗。100年間使い続けた吉野杉の大だるで仕込んだしょうゆを1年間寝かせ、米酢と天然のゆず果汁を加えた。酸味や口当たりはほどよく、「おいしいしょうゆの味が残る」(藤島さん)。鍋のほか、焼き肉やステーキなどにも合い、「薄まった時でも酸味が出てくる」(林さん)との声も。
(1)360ミリリットル、648円(2)http://www.umetani.jp/
創業100年を超えるしょうゆの醸造元が、材料にこだわって作った。大豆や小麦、コメなどしょうゆの原料だけでなく、ゆずや米酢も有機栽培のものを使用。うま味調味料は使わず、自然な味わいのため、めんつゆとしても使える。
ゆずのほか、すだちやゆこう、だいだいを加えた。「風味がとてもいい」(黒須浩之さん)、「後味がフルーティー」(青木さん)。
(1)175ミリリットル、648円(2)http://yamaki-co.com/
鹿児島県のかつお節、北海道の昆布、徳島県のすだちに高知県のゆず。素材の産地にこだわり、添加物は使っていない。「酸味と風味のバランスが良い」(黒須さん)、「しっかりした味」(菊地さん)。「かつおのうま味が強い」(小山裕久さん)。
(1)300ミリリットル6本入り、4536円(2)http://ponzu.asia/
徳島県産のすだちをふんだんに使った。昆布とカツオのダシを加え、さっぱりとした中にも深いコクと味わいがある。「香り、甘さ、コクのバランスがいい」(平手さん)。「だしがきいている。刺し身に合いそう」(斎藤さん)。
(1)360ミリリットル、720円(2)http://www.banjo.co.jp/
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ランキングの見方 数字は選者の評価を点数化。商品名(販売・製造元)、所在地。(1)内容量、税込み価格(送料別)(2)購入方法
調査の方法 ぽん酢に詳しい専門家に聞き、取り寄せ可能な30品をリスト化。名前を伏せて試食し、評価を編集部で集計した。選者は次の通り(敬称略、五十音順)。
青木敦子(料理研究家)▽安達雅之(ウェブサイト「ポン酢ガイド」運営者)▽池上正子(料理研究家)▽菊地秀幸(「銀座天國」料理長)▽黒須浩之(「神楽坂くろす」店主)▽小山裕久(日本料理文化交流協会理事長)▽斎藤洋子(オフィスエル代表)▽田中勝(「赤坂ひかわ」料理長)▽民輪めぐみ(「料理王国」編集長)▽林幸子(料理研究家)▽平手健介(そごう・西武マーチャンダイザー)▽藤井康生(明治屋商品部)▽藤島琴弥(ブログ「全国ポン酢飲み歩き協会」主宰、女優)
[NIKKEIプラス1 2017年1月14日付]
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