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ビートルズの新事実続々 史実研究書や新ライブ映画で

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ポール・マッカートニーの東京ドーム公演が4月に決まり、新作アルバムも予定されるなど、2017年に入ってもビートルズ関連の話題が尽きることはない。昨年から今年にかけては、とりわけ2つの大きなプロジェクトが注目を集めた。1つはビートルズ研究の第一人者マーク・ルイソンが10年の歳月をかけて新たに書き下ろした史実研究書『ザ・ビートルズ史』の発刊、もう1つが46年ぶりとなるビートルズの公式映画『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』である。この2つによって、ビートルズの新たな事実が続々と明らかになり、ファンを驚かせ、また喜ばせた。ビートルズ研究家の広田寛治が、その新事実について考察する。

     ◇     ◇     ◇     

少し前、といっても1990年代半ばのことなのだが、ビートルズのアンソロジープロジェクトが始動したとき、彼ら自身が自らを歴史として総括しようとしているのだなと感じた。ビートルズの新曲「フリー・アズ・ア・バード」と「リアル・ラヴ」が話題になった頃といえば、思い出す方も多いかもしれない。そのとき、ビートルズ自身が語るビートルズの歴史、いわばビートルズ神話が新たに編まれたのだ。それから20年の歳月が流れ、ビートルズの歴史を客観的事実で検証し直した、画期的な歴史書と公式の映像作品が登場した。ビートルズの歴史を客観的に事実検証して描く、ザ・ビートルズ史の時代が到来したのだ。

『ザ・ビートルズ史』の刊行が始まる

その画期的な歴史書とは、マーク・ルイソン著『ザ・ビートルズ史』だ。ビートルズの歴史を大きく書き換えたことで世界的な話題となり、米国ではベストセラー賞を受賞。その日本版刊行が、ついに始まった。

『ザ・ビートルズ史』は、完成までに25年の歳月を要する全3部作のプロジェクトで、16年に発売された日本版は、その第一部「誕生」編(上下巻)だ。上巻では、レノン=マッカートニー・コンビの誕生から、ハンブルクで実力を磨きリバプールで大ブレイクする1960年末まで。下巻では、ビートルズというグループが幾多の苦難を乗り越え、レコードデビューを果たし、成功への道を歩み始めた1962年末までが描かれている。

著者は世界のビートルズ研究の第一人者マーク・ルイソン。これまでにもビートルズの会社アップルからビートルズが残した音楽遺産の検証などを任され、『ザ・ビートルズ レコーディング・セッションズ』などの名著を生み出してきた人物である。

『ザ・ビートルズ史 誕生』は上下2巻で合計1656ページに及ぶ大著だ。書店で現物を見ると、その圧倒的なボリュームに尻込みしてしまいそうになるが、ビートルズの音楽をより深く知りたいと思うなら、ちゅうちょしてはならないだろう。これを読破せずしてビートルズを語れない時代が、すぐにやってくるからだ。

ジョン・レノンが歌う「マザー」の真相

ルイソンのビートルズ史がこれまでの伝記や回想録と一線を画するのは、メンバー自身の発言で語り継がれ、信じられてきた数々のエピソードや出来事を丁寧に事実検証することで、これまでの定説を覆すまったく新しい歴史物語になっているからだ。これは決して大げさな物言いではない。ビートルズのことを知り尽くしていると思っている人も、ページをめくるごとに定説が覆され、新事実が提示されることに驚かされるに違いない。

一例を挙げておこう。ジョン・レノンが「マザー」で歌ってきた両親との別れの衝撃の現場では、実際には何が起こっていたのか。これまでジョンの歌世界のなかでの物語として理解されてきた出来事の事実関係までもが、徹底的に検証され、事実が解き明かされているのだ。日本版発売にあたっての取材で、この事実に到達したときの心境をルイソンに聞いてみたところ、次のようなとても謙虚な回答が戻ってきた。

「私はほっとしました。当時あの現場にいて、事実を公平かつ正直に回想できるビリー・ホールという人物に出会えたことへの安堵感です。これまで誰1人、どのビートルズ本の著者も、彼への取材を試みたことがなかったのです。なぜでしょう。とにかく彼に取材を申し入れたのは私が初めてで、頼まれた彼は快く取材に応じてくれました。たまたま私が初めてだったのですよ」

これまでの定説では、ジョンと両親との別れは「5歳の頃、父にブラックプールへ連れ出されたジョンが、両親のどちらと暮らすのかの選択を迫られ、いったんは父を選んだものの、母が涙を浮かべてその場を立ち去るのを見て、母の後を追った」というものだった。ルイソンは、このエピソードを現場にいた父の友人の証言などを基に再検証。「その場ではそもそもジョンの親権をめぐる両親の争い自体が存在せず、ジョンは母の手でリバプールに連れ戻され、再び伯母のミミに預けられた」という事実を解明しているのだ。ジョンはこの時期に受けた心の傷を、1970年に「マザー(母)」という歌に託したのだが、それは事実をそのまま歌ったものではなく、ジョンが抱え続けていたトラウマを昇華させたものだったのだ。

『ザ・ビートルズ史』では、こうした驚きの事実が次々と登場してくる。読み終わると、これまで培ってきたビートルズ観が大きく変わることは間違いないだろう。

さらに本書のユニークな点は、ビートルズの歴史をただの事件の連続として描くのではなく、基本軸にビートルズの音楽的成長を描くという視点がしっかりと据えられていることだ。メンバー4人が若い頃にどんな音楽に触発され、どんな音楽を歌いながら音楽家としての道をきわめていったのか。彼らが夢中になっていた音楽に包まれながら、その足跡をたどることができる。そして、その足跡と音楽的成長こそが、世界の音楽を変えるビートルズ・サウンドの誕生物語であると同時に、4人の耳がとらえたポピュラーミュージックの歴史そのものともなっているのだ。

歴史というと、堅苦しく感じてしまう人もいるかもしれない。だが、ビートルズのメンバーが生まれ成長し、ビートルズとしてデビューする時代の音楽の歩みを、4人の目を通して体験できるというふうに捉えれば、『ザ・ビートルズ史』の内容は全編から音楽があふれだすビートルズ成長物語と言い換えることもできるだろう。

46年ぶり公式映画で貴重映像を発掘

昔々、といっても1970年のことだが、ビートルズ解散のレクイエムであるかのように公開された映画『レット・イット・ビー』を有楽町の映画館で見た。スクリーンには年老いてしまったビートルズが淡々と演奏をする姿が映し出され、彼らの音楽はこれで聴き納めなのだろうか、と思ったことを今でも鮮明に記憶している。

それから46年を経た16年9月22日、ビートルズの新作公認映画『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』が劇場公開された。遠いあの日の思い出を胸に、初日の最初の回に六本木ヒルズの映画館で鑑賞した。スクリーンいっぱいに弾けるビートルズは、まるで今も活動を続ける現役のアイドルグループであるかのようだった。ビートルズの発するオーラを、これほど強く感じ一身に浴びたのは初めてのことだ。

『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』は03年に構想され、12年にザ・ビートルズ・ライブ映画プロジェクトとして公表され、16年に劇場公開された。企画から公開までに、実に13年を要したプロジェクトということになる。当初の計画ではビートルズのライブ映像をたっぷりと使った映画ということだったが、最終的には監督ロン・ハワードの意図が前面に出たドキュメンタリー作品として仕上げられた。

内容は変化したものの、この間、世界中に埋もれていたビートルズの映像や写真の収集が進められ、徹底した素材発掘と事実検証に基づいてビートルズのツアー時代の歴史が描かれた。その意味では、こちらはしっかりと事実検証された映像版のザ・ビートルズ・ドキュメンタリー第1部とみなすことができるだろう。

この映画には初登場の映像や音源も多数含まれている。一例を挙げておくと、ビートルズが米国の公演会場での人種隔離に抗議して公演中止を通告し、人種による座席の隔離をやめさせたときの貴重な映像も、歴史学者キティ・オリヴァーの証言を交えながらしっかりと挿入されている。

続編の製作が発表されているわけではないが、第2部"The Recording Years"が作られることを予感した人も多いのではないだろうか。

ブルーレイ/DVDは3タイプで発売

ちなみに日本の劇場で上映されたのは、インターナショナル版とは異なり、日本公演の部分が長めに使われた特別編集版だった。また、日本の警視庁が来日時に撮影していた映像が映画に使われ、初公開されたことも大きな話題となった。今回使用されたのはほんの4分間だけだが、最高のポジションで撮影された映像は、日本でのビートルズ旋風の様子をこれまで以上にリアルに伝えてくれる。未発表部分には7月1日夜の部の演奏シーンをとらえた貴重な映像も記録されており、いずれはそれらも日の目をみることを期待したい。

ブルーレイ/DVDとして発売された日本版は、映画の日本版本編を収録したスタンダード・エディション、それに110分の特典映像を加えたスペシャル・エディション、さらに本編のインターナショナル版などを加えたコレクターズ・エディションの3タイプが存在する。なお、劇場ではビートルズ最大のライブとされる1965年のシェイ・スタジアム公演映像がリストアされ、4Kの映像で併映され大きな話題となったが、そちらは今回発売のいずれのパッケージにも含まれていない。

また、このプロジェクトの一環として、ビートルズ唯一の公式ライブ盤『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』も最新のデジタル技術で再構築されて、初めてCD化され発売されている。こちらも30年ぶりの再発ということで大きな話題になった。

2つのプロジェクトをより深く楽しむ攻略本

最後に、この2つの作品をより深く味わいたい方に、『大人のロック!編 ザ・ビートルズ神話』(日経BP社)を紹介しておきたい。

『ザ・ビートルズ神話』では、『ザ・ビートルズ史 誕生』の著者であるマーク・ルイソンが自らの著書を語るロングインタビューを巻頭に掲載。Part 1では「ザ・ビートルズ神話 書き換えられた歴史」と題して、これまで事実検証されることなく語り継がれてきたビートルズの神話や伝説を紹介し、今日ではそれらがどのように書き換えられたのかを、ルイソンの新しい成果を紹介しながら検証している。

また、Part 2では「ザ・ビートルズ ライブ映画プロジェクトの全貌」と題してドキュメンタリー映画『ザ・ビートルズ EIGHT DAYS A WEEK - The Touring Years』を特集。このプロジェクトを立ち上げたマシュー・ホワイトのインタビューをはじめ、日本公開の裏話や世界での反響なども紹介。さらには、この映画で使われた映像と音声をほぼ完璧にリスト化しており、映画で使われた映像と音の詳細をより深く知りたい人には最適のガイドとなっている。

30年ぶりに再発されたビートルズ唯一の公式ライブ盤『ライヴ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル』についても、どこがどのように変わったのかを聴き比べることもできるコンピューター解析を使った詳細なガイドを掲載。例えば「ヘルプ!」では、従来はイントロの2小節だけが8月30日の演奏で、それ以降は8月29日の演奏に切り替えられていたが、今回の編集では続く5小節も8月30日の演奏が使われていることなど、音源マニアが驚く話も含まれている。

     ◇     ◇     ◇     

2017年は、ビートルズ・デビューから55年。デビュー時には女の子たちを絶叫させるアイドルにすぎなかったビートルズが、ほんの数年でポピュラーミュージックを変革するアーティストへと成長し、今や音楽史にとどまらない社会を変革した歴史的存在になりつつある。我々は、時代を動かしたビートルズというグループが、今まさに人類の歴史に新たな1ページを刻む瞬間を目撃しているのかもしれない。

ひろた・かんじ 1952年愛媛県松山市生まれ長崎育ち。山梨県立大学講師などを経て,作家・現代史研究家。日本文藝家協会会員。『大人のロック!』(日経BP社/ビートルズ関連)、文藝別冊(河出書房新社/ロック関連)、ムック版『MUSIC LIFE』(シンコーミュージック/ビートルズ関連)などの執筆・編集・監修などを担当。主な著書に『ロック・クロニクル/現代史のなかのロックンロール(増補改訂版)』などがある。

大人のロック! 編 ザ・ビートルズ神話 (日経BPムック)

著者 :
出版 : 日経BP社
価格 : 1,728円 (税込み)

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