夜の本気ダンス 人気上昇、踊りたくなるギターロック
2008年に結成した夜の本気ダンスは、16年3月にアルバム『DANCEABLE』でメジャーデビュー。バンド名に「ダンス」と入っているように、体が自然と踊り出す楽曲が持ち味の4人組ロックバンドだ。昨年は約25本の音楽フェスに出演、5月にさいたまスーパーアリーナで行われた「VIVA LA ROCK」では、1万人収容のステージが入場規制となるなど、注目度が増している。
踊れる曲というと、打ち込みを多用するバンドが多いなか、彼らはシンプルなギターロックから生み出すグルーブ感にこだわっている。そのためベースとドラムは、リズムをすべて合わせるのではなく、あえて半拍遅らせるなど、微妙にズラす工夫をしている。
フロントマンでギターボーカルの米田貴紀は、「ズレから生まれる違和感が大切で、それが聴き手の耳に引っかかることで、曲の世界に引き込むことができるんです」と語る。
ボーカルに関しても、「岡村靖幸さんの歌い方から学んだんですが、ボーカルもひとつの楽器となるよう、聴いていて気持ちよくなるリズムやビートを心がけて歌っています」(米田、以下同)。これらを積み重ねることで、独特のグルーブ感を生んでいるのだ。
そんな彼らがメジャーデビュー後、初のシングル『Without You/LIBERTY』をリリースした。両A面の表題曲は対となるような作品だ。『Without You』では、陰のイメージ漂う新しいスタイルに挑戦。耳に残る印象的なギターリフから始まるものの、Aメロはあえてじらすように低いトーンで進み、ドラマチックに盛り上がるサビは、どこか悲しさもあるメロディーに米田のリズミカルな歌声がからみつく。ただ、Aメロではベースを響かせ、サビでは普段より細かくドラムを刻むなど、彼らの真骨頂である踊れる一曲に仕上がっている。
一方、『LIBERTY』は、冒頭から派手なギターが鳴り響き、わずか45秒でサビに到達。跳ねるようなドラムをベースが追いかけるようにうなる、ズラしを効かせた、従来の彼ららしい明るい一曲となっている。
メジャーデビュー以降、若者を中心に客層が広がっているが、ライブ会場には40代、50代のお客さんも増えてきたという。
「ASIAN KUNG‐FU GENERATIONで、僕はロックに出合ったんですが、彼らのルーツをたどるなかでザ・ローリング・ストーンズやレッド・ツェッペリンも聴いて研究してきました。彼らのギターリフのように、聴けば一瞬で誰の曲なのか分かる音を鳴らせる、どの世代にも通用するバンドになることが目標です」
シンプルなロックで踊らせることに使命感にも近い思いを持つ彼らだけに、ファン層はこれからも拡大していきそうだ。
(「日経エンタテインメント!」1月号の記事を再構成。敬称略、文・中桐基善)
[日経MJ2017年1月13日付]
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