VRゴーグルが「おまけ」 万円切りスマホは使える?
戸田覚のPC進化論
UQコミュニケーションズから発売された「Alcatel IDOL 4」は、VRゴーグルが標準で付いてくる、これまでにはなかった面白いパッケージだ。SIMフリースマートフォン(スマホ)として、VRヘッドセット付きで3万円台半ばで発売されている。
価格は、初期費用の1万600円(SIMパッケージ3000円+端末代7600円)と、月額2780円の「ぴったりプラン」(データ通信2GB、無料通話最長90分)または月額3780円の「たっぷりプラン」(データ通信6GB、無料通話最長180分)を選択することになる。大手キャリアに比べると割安だが、格安スマホの料金体系としては標準的だろう。
「Alcatel」というブランド名の知名度が、あまりにも低くなってしまったのがちょっと寂しい。「どこのスマホを使ってるの?」と聞かれて答えても、知らない人がほとんどだろう。元々はフランスの大手通信機器メーカーの名前だったが、現在は中国のTCLコミュニケーションがAlcatelブランドで製品を製造・販売している。
それにしても最近は、3万円程度で買えるスマホでも高級感が増していて驚かされる。Alcatel IDOL 4も金属+ガラスのボディーで安っぽさは感じられない。前面と背面がガラスで、金属を挟んでいるようなスタイルだ。背面のロゴがミラー調になっているのは何となくチープに感じるが、デザインや完成度は、価格を考えれば妥当だと思う。
スペックは並で指紋センサー非搭載
Alcatel IDOL 4のボディーはなかなかコンパクトで、本体サイズは147×72.5×7.1mm。僕が愛用しているファーウェイの「P9」は145×70.9×6.95mm。実用上はほぼ同じ程度と考えてもいい。にもかかわらず、写真で見るとAlcatel IDOL 4がやや大きく見えるのはデザインの差だ。
Alcatel IDOL 4はQualcomm Snapdragon 617のオクタコアCPUに3GBのRAMを搭載し、ストレージは16GB、背面カメラは約1300万画素、バッテリーは2610mAh、液晶は5.2型で解像度はフルHDだ。
スペックは並だが価格を考えれば妥当なところ。Antutuベンチマークの値も見るべきポイントは皆無なのだが、体感上遅く感じることはなかった。とはいえ、何年も使い続けるつもりのユーザーにとっては、将来的な処理速度に懸念が残るところではある。
僕が思うAlcatel IDOL 4の最大の弱点は、指紋センサーを搭載していないことだ。僕が日常的に使っているスマホには全て搭載されているので、慣れ切っているというのもあるだろうが、非搭載では不便すぎて買う気になれない。あとは、ボディーを覆うガラスが滑ること。テーブルの素材によってはするりと滑って落ちてしまいそうだ。
逆に優れているのが音声で、スピーカーは高音質で音量も大きめ。この点は上位機にも負けていないと思う。
カメラの反応は良く、スナップには十分
1300万画素の背面カメラも妥当なところだ。カタログ値で0.1秒以下というオートフォーカスも反応が良く、使っていて気持ちがいい。
デュアルレンズのP9と比べるとさすがに分が悪いものの、スナップ写真レベルなら画質が気になることはないはずだ。最近は2万~3万円程度の端末のカメラもなかなかのクオリティーになっている。これより上を狙いたいなら、もう少し高級な5万円クラスのモデルを選ぶべきなのだろう。
なお、JBLブランドのイヤホンも付属するのだが、こちらはちょっと見た目がチープ。音が悪いというわけではないが、僕としては使う気にはならないだろう。
VRはコンテンツが弱いのが残念
肝心のVRゴーグルは、他社のと同様にスマホの画面を2つのレンズを通して見る仕組み。スマホもセットしやすく、使い勝手も上々だ。スマホを収納するケースとして使えるのが面白いところで、ふたを開けるときには心がくすぐられる。
アプリはGoogle Playからグーグルのアプリ「Cardboard」をダウンロードするのだが、これはちょっとつまらない。「Galaxy Gear VR」のような充実した独自コンテンツを提供してほしいところだ。また、自前の「Galaxy S7 edge」でVRを体験してきた僕としては、解像度や色合いにはずいぶん違いを感じる。Alcatel IDOL 4の場合は液晶かつフルHD(1920×1080ドット)なので、有機ELでWQHD(2560×1440ドット)のGalaxy S7 edgeと比べると、やや暗くざらつきも感じられるのだ。
とはいえ、「ちょっとVRを楽しんでみたい」といった程度のユーザーにはお薦めできる。これまでに僕が体験したスマホのVRは長時間使いたいとは思えなかった。目が回るし、疲れるからだ。少なくともゲームを長時間プレーするのは無理がある。現段階のVRでは、そう感じるユーザーがほとんどだろうから、あまりコストを掛けたくないのではないか。そういう意味では、おまけ的に考えられるAlcatel IDOL 4のVRセットは好ましい。
1963年生まれのビジネス書作家。著書は120冊以上に上る。パソコンなどのデジタル製品にも造詣が深く、多数の連載記事も持つ。ユーザー視点の辛口評価が好評。近著に、『一流のプロから学ぶ ビジネスに効くExcelテクニック』(朝日新聞出版)がある。
[日経トレンディネット 2016年12月20日付の記事を再構成]
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