2020年、火星で酸素生成 NASAが挑む居住への第一歩

日経ナショナル ジオグラフィック社

2017/1/29
ナショナルジオグラフィック日本版

火星研究基地のイメージ。長期におよぶ居住計画では、この図のような基地の完成形を目指し、インフラを整備していくことになる。(Kenn Brown/Mondolithic Studios)

人類が火星に降り立ったとき、そこに建設する基地、あるいは住居は、どのようなものになるのだろうか。火星の住まいに求められる条件とは何だろうか。

まず火星は、気温の差が極めて大きい。赤道付近の気温は30℃前後だが、極付近ではマイナス140℃の超低温になる。なお悪いことに、火星の土壌には甲状腺の機能に悪影響を与える有害物質の過塩素酸塩が高い濃度で含まれている。人にやさしい場所とは言いがたい。さらに、大気がうっすらとしかないため、火星の地表で活動する人間は、致死的なレベルの宇宙放射線にさらされることになる。地球のようなオゾン層はなく、大気圧も総じて低いため、地面には常に強い紫外線が降り注ぐ。宇宙医学の専門家は、火星での探査作業に携わる宇宙飛行士たちの放射線被曝(ひばく)に関して以前から警鐘を鳴らしている。

宇宙建築家や宇宙技術者は、これらすべての要素を考慮したうえで、火星での住居を設計しなければならない。最初の仕事は、どうやって呼吸するかを考えることだ。火星の大気濃度は地球の約100分の1。これは地球で言えば海抜30キロメートルに相当する。しかも、大気の95パーセントは二酸化炭素(CO2)で、純粋な酸素はほとんどないも同然である。

酸素や水を作り出す

「それでも幸運なことに、1個の二酸化炭素分子には酸素原子が2個ずつ含まれています」と語るのは、マサチューセッツ工科大学(MIT)ヘイスタック天文台のマイケル・ヘクト氏だ。「電気が十分にあれば、CO2から酸素ガスを作り出すことは可能です。実際に植物は年がら年中その仕事をしているでしょう!」

2020年に予定されているNASAの火星探査車ミッションでは、植物が酸素を作り出す過程を再現できる「MOXIE」と呼ばれる特殊な装置が搭載されることになっている。MOXIEは火星大気中のCO2を集め、電気分解で二酸化炭素を一酸化炭素(CO)と酸素(O2)に分解する。2020年の火星ミッションでMOXIEがうまく機能することが分かれば、火星で酸素を量産し、さらに地球に帰還するためのロケット燃料となる液体酸素を作り出せるようになるかもしれない。

MOXIEはこれまでにない種類の試みだとヘクト氏は言う。彼の言葉を借りれば、MOXIEは「本来なら地球から持っていくはずのものを、自然界にあるもので代用する技術」ということになる。次の問題は、人間が生命を維持するために十分な量の水が火星で手に入るかという点だ。

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火星の資源で基地を拡張
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