マネー研究所

Money&Investment

マイナス金利下の資産運用 変わり種投信も登場

2017/1/14

 日銀がマイナス金利政策の導入を決めてから1年近く。その後、金利は一段と低下し、債券などに代表される着実な利回りを確保する運用は難しくなった。元本の安全性を優先し、値上がり益より配当や分配金を重視する「利回り狙い」の投資家はどう動くべきか。買われた商品や運用成績などから改めて考えてみる。

 個人投資家の坂井敏夫さん(60)は昨年11月からの「トランプ相場」で利益の乗った投資信託などをすべて売却した。だが表情はさえない。「老後のことも考えると3%は利回りが欲しいが、投資したい商品がない」のが理由だ。

 マイナス金利の導入は個人投資家の「堅実運用」を難しくした。元本の安全性が人気だったMMF(マネー・マネージメント・ファンド)は運用を終了。銀行預金の金利は下がり、個人向け国債の利回りもルール上の最低水準に張り付いた。

■REIT人気に影

 少しでも高い利回りを求めようと個人の資金が向かった一つが不動産投資信託(REIT)やREIT型投資信託だ。投信残高の推移をみると、REIT型投信に多くの資金が流入する一方で外国債券型投信からは資金が流出する傾向が続いている。

 日銀がマイナス金利政策を導入した直後の昨年3月にはREIT型と外国債券型の残高が逆転。その後、双方の差は広がっている。REIT型投信への資金流入額は年間で2兆円を超え、リーマン・ショック以降で最高額となった。

 REIT型の人気を支えたのが高水準の分配金だ。特に海外のREITで運用する投信は分配金が比較的高いものが多く、年金代わりに受け取りたい高齢者からの支持が厚い。それ以前は外国債券型で運用していた資金がシフトしたとみられる。

 ただ、資産を移した結果、運用成績が改善したかといえば、そうでもないようだ。三菱アセット・ブレインズが運用する資産別に投資信託の運用利回り(年率リターン)をまとめたところ、2016年は軒並み10年以降の平均を下回った。

 特にREIT型投信の運用利回りは1.8%で過去7年間の平均(13%)を大幅に下回った。同じ年の国内債券型投信などよりも低い。

 足元ではREIT型投信の人気に陰りが見え始めている。米国で長期金利が上昇し、金利低下を追い風にしてきた運用成績が低下。分配金の引き下げが相次いでいるためだ。

 昨年11月には海外REIT型投信で残高が最大規模だった「USリート・ファンドB」(フィデリティ投信)が分配金の引き下げを発表。モーニングスターによると昨年1~11月に分配金を引き下げた海外REIT型投信は24本と、過去最多だった2009年(20本)を上回っている。

 利回り狙いの商品の選択肢が狭まる中で、設定が相次いでいるのが「変わり種」の投資信託だ。債券などに比べて高めの利回りが期待できるとされる。

 三菱UFJ国際投信の「マクロ・トータル・リターン・ファンド」は設定時に400億円強の資金を集めた、昨年のヒット商品の一つだ。空売りなどを活用し、相場の上げ下げにかかわらずプラスの運用を目指す「グローバル・マクロ」と呼ばれるヘッジファンドの運用戦略を取り入れたのが特徴だ。

 アセットマネジメントOneが10月に設定した投信は、株式に投資するものの値動きのリスクを一切排除して配当収入を追求する。投資先の配当利回りは約3%と主な先進国の国債利回りを大きく上回る。

 議決権がないかわりに多くの分配金を受け取れる「優先REIT」や、地震や台風など自然災害リスクなどを引き受ける「大災害債券」に投資する投信も登場した。

■高配当株も選択肢

 もっとも、こうした新しい商品には「投資家が思わぬリスクを背負う可能性がある」との指摘もある。野村アセットマネジメントの五月女季孝氏は「配当や分配金ばかりでなく、資産の値動きも勘案して利回りを考えるべきだ」と話す。

 楽天証券経済研究所の篠田尚子ファンドアナリストは多少のリスクを取れるなら「高配当株が選択肢になる」と話す。みずほフィナンシャルグループなど配当利回りが3%に達する銘柄は少なくない。高配当株に分散投資する投信なら、少額から投資しやすく、個別株よりも値動きのリスクを抑えやすい。

 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は投資の経験が浅い人の選択肢として変動金利型の個人向け国債(10年物)を勧める。元本割れがなく最低でも0.05%の利息が得られるのは「プロ向けの商品にはない魅力」。金利が上昇した際に実質的に大きく価値が下がる事態も避けられる。運用利回りが低下しても「無理にリスクを取る必要はない」と指摘する。

 より高い利回りの商品に資産を移せば、通常はそれだけ元本が傷つくリスクを負う。目先の利回りを追求した結果、必要以上に値動きのリスクを負うのは本末転倒だ。運用する資産を入れ替える際には自分が取れるリスクをよく考える。そのうえで、ある程度の利回りの低下を受け入れる必要もあるのかもしれない。(井川遼)

[日本経済新聞朝刊2017年1月11日付]

マネー研究所新着記事

ALL CHANNEL