あけましておめでとうございます。2016年はみなさまにとってどのような年だったでしょうか。17年はよりよい年になることをお祈りしています。
新年にあたり、きょうは「守る」ことについて話をしてみたいと思います。
私たちが運用している「ひふみ投信」と姉妹ファンド「ひふみプラス」のコンセプトは守りながら増やすというものです。守りながら増やすというとよく誤解されるのですが、基準価格が「下がらない」という意味ではありません。
株式相場はまったく下がらず、右肩上がりで上昇することはあり得ません。価格変動は相場にはつきものです。海岸で波が押し寄せたり、引いたりするように、相場も上昇したり、下がったりします。人間の呼吸にも似ています。息は吐かなければ吸えないし、吸わなければ吐けません。相場の下落は悪いことではなく、次の上昇の準備です。また相場の上昇は次の下落の準備です。
「守り」とは資産変動を抑えること
それでは、そうした中で「守る」とはどういうことか? それは運用する資産の変動率を抑えることを意味します。
具体的には相場全体の値動きを示す東証株価指数や日経平均株価と比較して、運用する資産の変動率を小さくすることです。相場が下げるときにそれよりも運用資産の下げを小さく収めれば、それは「守った」ということになります。
私は大学を卒業してから27年間ファンドマネジャーを続けています。なぜ27年間続けることができたのかといえば、運に恵まれたことを否定しません。相場に勝つには実力だけでなく運も必要だからです。
ただし、とても大事なのは、投資で成功するには運の要素が多分にあることを自覚することではないかと考えます。私の印象では、運用に失敗したり、ファンドマネジャーを辞めていったりした人たちは自分の実力や才能を過信していた人が多かったと思います。
現実問題として、常に運を味方に付けることはできないでしょう。ただし、せっかく運に恵まれても自ら自滅してしまうことはあります。それは運を実力と思い込み、必要以上のリスクを取ったり、努力を怠ったりすることです。
運用の世界は頑張ればすぐに結果が出るほど簡単なものではありませんが、努力をしないとほぼ確実に失敗をします。生き残るために大事なことは致命傷を負わないことです。大きなけがをしても、時間をかければ回復する傷なら必ず挽回できます。しかし、致命傷を負ってしまったら挽回はかないません。
「致命傷」を負わないことが大切
守りながら増やす運用も同じことです。つまり、致命傷を負わないことです。具体的にどう運用するかというと、私は自分の相場観に沿わない銘柄も一定数保有するという形で実現しています。要するに、自分の予想している方向と相場が逆に行っても、大きな損失を負わないようにポートフォリオを組んでおくのです。
自分の見通し通りの結果になったら、相場観に沿わない銘柄を持っていることで成績は若干落ちます。しかし、それはそれで良いのです。投資の世界では、下げのときに「いかに損をしないか」が重要なので、上げ相場で多少成績が落ちても長期で見れば安定した運用成績につながります。
致命的な失敗をしたがゆえに、私よりも優秀なファンドマネジャーたちが市場から去っていきました。失敗せずに生き延びるというのは、個人投資家であってもビジネスであっても同じでしょう。そのためにはいまの自分の戦略や見通しを過信せず、予想外の事態が起きたときに備えて目配りをしておくことが重要だと思います。
成功しても所詮、運だと思って謙虚になり、失敗しても運が悪かったと諦めて、くよくよしないことが大切だと思います。野球でいえば、打席に立ってバットを振り続けていればヒットを打てることもあります。致命傷を負わずに生き残り、打席に立ち続ければ、必ず次のチャンスがめぐってきます。