つまりは「稼いだやつがたくさんもらう、以上」。随分と乱暴な制度だったと思いますが、当時はITベンチャーなんだし、それが当たり前だろうと思っていました。

手当たり次第のM&Aで多額の損失を出す

「一番きつかったのは、M&Aに失敗したことです」と話す

私が社長に就任した直後の2006年1月期には離職率が28%を超えましたが、社員が辞めていくこと自体には、そんなに危機感を覚えていませんでした。前社長について辞めていく人もいましたので、辞めたらまた人を雇えばいい、くらいの感覚でした。

一番きつかったのは、M&A(合併・買収)に失敗したことです。当時は他のIT企業も、ものすごい勢いでM&Aしていました。上場したら拡大するのが当たり前だと思っていましたから、サイボウズも手持ちの資金を使って負けずにM&Aするぞということで、1年半で9社買収。2005年1月期には29億円だった売上高も、2008年1月期には連結で120億円を超えるまでに拡大しました。

M&Aに関しては当時、担当役員が勧める会社の資料を見て、相手の経営者と面接し、特に問題がなかったらゴーサインを出していました。おおむね1日、短いのだと数時間で判断したものもあります。まさに手当たり次第、という感じでした。

拡大志向というよりも、それでうまくいくような気がしていたんです。しかし、結果的には買収した子会社の業績がさらに悪化。一部で大きな損失も発生してしまい、2度も業績を下方修正しなければならなくなりました。

「社長の器じゃない」と役員に退任を相談

矢継ぎ早に会社を買収したせいもあり、人手不足で社内はバラバラ。マネジャークラスを集めて話し合おうとしても、文句と愚痴の言い合いになってしまう。自分は社長の器じゃなかったんだと思い、「もう無理です、社長を辞めたい」と役員に相談しました。けれど、「辞めるのは簡単ですよ」と返されました。

当時はネガティブなことばかり考えていました。信号待ちをしながら、「あの車、私のところに突っ込んでこないかな」と思ったこともあります。死にたいと思っていることに自分でも驚いて、「ここまで追い詰められているんだな」と実感しました。

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グループウエア1本に命かける、と決意した