無線LANルーター 4×4など対応のお薦め3機種
自宅でパソコンやスマートフォン(スマホ)でインターネットに接続していて、通信速度やつながりやすさに不満がないのなら、当面、無線LANルーターを買い換える必要はない。だからこそ、もう何年も同じものを使っているという人が多いのではないだろうか。
だが、この数年で家庭内の無線LANの使い方はかなり変わっている。例えば動画配信サービスをよく利用するようになったり、家族みんながスマホを持つようになって同時にインターネットに接続することが増えたりしている。使い方が変わったことで、ネット接続が遅くなってきたと感じたり、つながりにくくなってきたと感じることはないだろうか? また、最近はスマホの機能が上がり、高速なIEEE802.11acに対応している機種が増えてきている。一方で無線LANルーターは11nまでしか対応していないと、せっかくの速度を生かせない。無線LANルーターを最新の製品に買い替えることで、これらの問題を解決できる可能性は高い。
迷ったら上位機種を買え!
無線LANルーターも値下がりが進み、最近は実売価格が3000円を切るような安い製品もある。しかしそうした安価な製品は、後述する通信規格が11nまでしか対応していなかったり、有線LANがギガビットイーサネット(1000BASE-T)に対応していなかったりするなど、スペックは低くなる。
無線LANルーターの交換は面倒だ。プロバイダーの設定を入力するのは面倒だし、自分だけでなく家族全員のパソコン、スマホ、ゲーム機などの無線LAN設定の面倒を見るのは骨が折れる。一度設置したら、そのまま何年も使い続けるという人が大半だろう。だからこそ、将来性を考えて、多機能、ハイスペックな上位モデルを購入することをお勧めする。上位モデルといっても1万円台で買えるものばかりなので、迷ったらいいものを買っておくのが正解だ。
○パソコンやスマホは現在主流のIEEE802.11acに対応しているが、ルーターは11nが対応していない
○ルーターがギガビットイーサ)に対応していない
○家族が3~4人いて、それぞれがパソコン、スマホ、ゲーム機などをネットに接続して使っている
○動画配信サービスや音楽配信サービスをよく使う
最新製品はMU-MIMOやビームフォーミングに対応
無線LANルーター選びのポイントは、「IEEE802.11ac対応」「4×4」「ビームフォーミング」「MU-MIMO」だ。現在無線LANで使われている主な通信規格は、IEEE802.11a/b/g/n/ac。まずチェックすべきは最新の規格で高速な11acに対応しているかどうかだ。その中でも後述する付加機能のMU-MIMOに対応し、アンテナ数が4×4、理論上の通信速度が11acで最高1733Mbps、11nで最高800Mbpsという製品が各社の上位モデルになっている。
11nでは、複数のアンテナで異なるデータを同時にやり取りすることで通信速度を向上させた。この高速化技術をMIMO(Multiple Input Multiple Output)と呼ぶ。MIMOではデータを複数に分割して複数のアンテナで同時に送受信する手順になっており、その分割した通信経路をストリームと呼ぶ。例えば、3個の送信アンテナで送り、3個の受信アンテナで受ける場合、アンテナ数は3×3、通信経路は3ストリームという表記になる。
11acではMIMOをさらに発展させて、無線LANルーターに複数の機器で接続して同時に通信できるようにしたMU-MIMO(マルチユーザーMIMO)が定められ、これに対応した製品が増えてきた。MU-MIMOは3~4人家族などで複数の機器を同時に無線LANに接続する際に効果を発揮する。
ビームフォーミングは、電波を全方位に送るのではなく、特定の機器がある場所に向けて集中的に送り、接続しやすくする仕組みだ。これまで電波が届きにくかった場所でも接続しやすくなり、実効速度(実際の通信速度)が向上する。
MU-MIMOやビームフォーミングは、スマホなど接続する機器側も対応している必要があるので、対応機器を使っていなければ活用できない。対応しているかは、機器のスペック表などで確認できる。iPhone 6以降など最新のスマホには対応している機器が増えており、今後さらに広がりそうだ。このため、将来対応機器に買い替えたときのことを考えて、これらの付加機能に対応した製品を選んでおくと安心感は強い。
有線LANは、ギガビットイーサに対応している製品を選びたい。たとえ無線LANの通信速度が速くても、外部のインターネットと接続する有線LANが低速な規格のものだとボトルネックになるからだ。大半の製品は1000BASE-Tに対応しているが、低価格のモデルは、通信速度が最大100Mbpsの100BASE-TXまでしか対応していないこともあるので注意しよう。
厳選のお薦め3機種はこれだ
無線LANルーターの人気メーカーは、NECとバッファローだ。最新トレンドを押さえた無線LANルーターは、これらメーカーのラインアップの中でも上位のモデルで、価格は1万円台前半~2万円になる。
製品を選ぶとき、スペックと合わせて考慮すべきなのが本体の大きさ。本体が大きく、アンテナも外部についた製品は置き場所を取る。現在の主流はアンテナを内蔵したコンパクトな製品で、棚などに置いて使うことも壁に掛けて使うこともできるものだ。設置場所を考えて選ぼう。なお、価格は2016年12月9日時点のもの。
迷ったら主要機能を押さえたコレ
実売価格:1万8000円前後
NECの「Aterm」シリーズは、無線LANルーターの定番シリーズ。その中でも「Aterm WG2600HP2」は最上位モデルだ。価格は他社の製品より高いが、11ac対応で4×4、MU-MIMO、ビームフォーミング対応と、トレンドをすべて押さえている。5GHz帯と2.4GHz帯の混雑していない周波数帯へ自動で振り分けて通信速度を落とさないようにする機能も備える。アンテナ内蔵でコンパクトなのも特徴だ。
コスパ重視ならコレ
実売価格:1万3300円前後
アイ・オー・データ機器の新ブランド「PLANT」から発売された無線LANルーター。11ac対応で4×4、MU-MIMO、ビームフォーミング対応と、最新トレンドを一通り押さえたハイスペック機ながら、1万円台前半で購入できるコストパフォーマンスの高さが魅力。アンテナ内蔵でコンパクトなのも特徴だ。
単身または2人暮らしならコレ
実売価格:1万5000円前後
バッファローの「AirStation」シリーズも、無線LANルーターの定番シリーズだ。11ac対応で4×4、MU-MIMO、ビームフォーミング対応のモデルとしては最上位の「WXR-2533DHP2」があるが、幅316×高さ161×奥行き57mm(アンテナ除く)とかなり大型で、アンテナも外付けなので、置き場所を取る。「WSR-2533DHP」はMU-MIMOには対応しないが、それ以外はWXR-2533DHP2並みの性能を持ち、コンパクトなのが魅力。単身者など同時に接続する機器の数が少ない場合は、MU-MIMOがなくても問題ない。
(IT・家電ジャーナリスト 湯浅英夫)
[日経トレンディネット 2016年12月12日付の記事を再構成]
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