タイガーマスクW対ダーク もう少し見たい虎の勇姿
1月4日、毎年恒例となった新日本プロレスリングの東京ドーム大会。テレビアニメから飛び出した「タイガーマスクW」が約3カ月ぶりに観客の前に姿を現し、タイガー・ザ・ダークと闘った。「2頭の虎」の攻防に会場に詰め掛けた大勢の観客がわいた一方で、タイガーマスクWがファンの記憶に残るレスラーになるには試合数の増加やライバルの存在が必要という課題も見えてきた。
昨年10月からテレビ朝日系列で放送が始まった「タイガーマスクW」(関東地区では毎週土曜深夜2時30分から)は、かつて所属した団体をつぶされた2人の若手プロレスラーがタイガーマスクWとタイガー・ザ・ダークになってマット界を牛耳る悪の秘密組織「虎の穴」に立ち向かうというストーリーだ。棚橋弘至、オカダ・カズチカら新日本プロレスのレスラーも登場する。
関東地区で年末に放送された第12話では、覆面レスラーのトーナメント大会に参戦したタイガーマスクWとタイガー・ザ・ダークがお互いの正体に気づかぬまま準決勝で激突。新日本プロレスの棚橋らと共同開発した必殺技でタイガーマスクWが勝利の凱歌(がいか)をあげる内容だった。
昨年10月10日の東京・両国国技館で衝撃のデビューを飾ったタイガーマスクWはすぐさま東京ドーム大会への参戦が発表され、タイガー・ザ・ダークとの対戦が決まった。タイガー・ザ・ダークに誰が扮(ふん)するのかにファンの関心が集まり、外国人選手を含めた様々な名前が浮上していた。
さて、タイガー・ザ・ダークの実力のほどはいかに? 先にリングに登場したタイガー・ザ・ダークはコスチュームから褐色の腕が露出。筋骨隆々、分厚い胸板も目を引いた。
試合が始まると、タイガー・ザ・ダークはロープから戻ったタイガーマスクWを軽々とジャンプしてかわしたり、リング下に落ちたタイガーマスクWにロープ越しの体当たりを見舞ったりするなど身体能力の高さをうかがわせた。さらに変形の卍(まんじ)固めや必殺技のツームストーン式パイルドライバーを見舞ってタイガーマスクWを追い詰めるなど、かなりの実力者であるのを観客に見せつけた。
もっとも最後は反撃に転じたタイガーマスクWが滞空時間の長いタイガードライバーを決めてタイガー・ザ・ダークをマットに沈めた。試合時間は6分34秒。コーナーポストからの宙返りなどお約束の「あいさつ」を済ませると、観客の声援にこたえながら東京ドームの花道を引き揚げていった。
今回も華麗な動きで観客を大いにわかせたタイガーマスクW。番組のストーリー展開から予想すると、次回の対戦相手は最大で最強の敵、所属団体をつぶしたイエローデビルに絞られそうだ。
イエローデビルに誰が扮するのかも大いに注目されるところだが、テレビアニメとの連動を目的にした「記念試合」の位置づけが続くなら、今後の参戦は残り少ないかもしれない。両国国技館でのデビュー戦も非公式の色彩が強い「第0試合」、新年を飾る最大のビッグマッチ、東京ドーム大会でさえ第1試合だった。
正体と推測されるプロレスラーの人気や実力、観客や視聴者へのインパクトを考えるとメインイベントに近いところで試合が組まれても十分といえる。試合時間も6分34秒では短く、15~20分程度の手に汗を握るような闘いを見てみたいと感じるファンも多いのではないだろうか。
ちなみにこの日は大会開始前に総勢14人のプロレスラーが闘う「バトルロイヤル」が組まれていた。オールドファンには懐かしい、伝説のプロレスラーも参加する新春恒例の試合で、初代タイガーマスク(佐山サトル)と激闘を繰り広げ、マスクはぎなどでヒール(悪役)に徹した小林邦昭も参戦した。
懐かしいテーマソングが流れ、リングアナウンサーから「虎ハンター、小林邦昭!」とコールされると歓声が上がった。回し蹴りや必殺技のフィッシャーマンズ・スープレックスを惜しみなく繰り出し、獣神サンダー・ライガーや4代目タイガーマスクのマスクに手をかけると、観客は大喜び。初代タイガーマスクが活動2年強と短期間にもかかわらず伝説の存在になったのはライバル、小林邦昭が一役買ったのをファンはよく覚えているからだ。
タイガーマスクは日本のテレビ史だけでなく、プロレス史にも名前を残す貴重なキャラクターだ。タイガーマスクWの参戦を増やしてライバルとしのぎを削るストーリーや、タイトルマッチへの参戦などを期待しているファンも多いのではないか。一つの試合を機にライバルが誕生する……。点が線につながってストーリーができるのもプロレスの面白さである。
新日本プロレスは4日、17年夏までのビッグマッチのスケジュールを発表した。創立45周年を飾るべく、東京、大阪、札幌などでの大会に加えて7月には米ロサンゼルスで2日間の大会も計画するなど世界最大のプロレス団体WWEに反撃する姿勢も見せている。
タイガーマスクWの参戦は現時点で明らかになっていないが、4月9日開催予定の両国国技館大会が有力視される。インターネットを通じて日本のプロレスが世界に瞬時に配信される現代だからこそ、タイガーマスクWも海外戦略の秘密兵器になりうるはずだ。
(コンテンツ編集部 苅谷直政)
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