「どんな時も起床時刻は変えない 」 プロの体調管理術人気トレーナー・中野ジェームズ修一さんのカラダメンテ術(2)

日経Gooday

青学陸上部の成長の一翼を担ったフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一さん。(写真:室川イサオ)
青学陸上部の成長の一翼を担ったフィジカルトレーナー・中野ジェームズ修一さん。(写真:室川イサオ)
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

仕事にオフタイム、生活の質を上げるには健康な体でいることが大切だ。それを実現するために自らが実践している方法を、卓球の福原愛選手や、箱根駅伝で3連覇を果たした青山学院大学陸上部のフィジカルトレーナーを務める中野ジェームズ修一さんに聞くシリーズの2回目。第1回「『1日30品目は過去の話 人気トレーナーの14品目食事術」で自らが実践する「14品目食事法」について教えてくれた中野さんが今回披露してくれるのは、健やかな体づくりに欠かせない「生活リズムのつくり方」だ。

起床時刻はどんな時も変えない

特定のスポーツの選手に対するフィジカルトレーナーの仕事は、その競技や選手のクセに合わせて、必要な筋肉や持久力をどうやって高めるか、また、ケガをしないようにトレーニングしていくかといったプランを提供することです。スポーツに直接必要なスキル、技術について指導することはありません。つまり、私たちの仕事は、競技で好成績を得るために必要な、高度な動きや技術を可能にする「体のベース」をつくり上げる手伝いをすることなのです。

同じように、スポーツ選手以外の方々には、日常生活を健やかに送れるだけの体力を維持するための、または、趣味のスポーツを存分に楽しむための体づくりのアドバイスをしています。もちろん、クライアントによっては、ダイエットやシェイプアップが目的の方もいます。

アスリートやチームはもちろん、それ以外の方に対しても、私は基本的にクライアントの都合に合わせて仕事をします。また、取材や講演、国内外への遠征の同行なども多く、フィジカルトレーナーはみなさんが思っている以上に、時間的に不規則な仕事です。健康な体づくりのお手伝いをしている人間がこんなことではいけないとは思いますが、気がつくと、1日17時間働いていたなどということもありますね(笑)。

「どんなに遅く寝ても、朝は決まった時間に起きる。これが大事です」(写真:室川イサオ)

そこで私が、前回紹介した「1日14品目を食べる」に加えて気をつけているのが、「スケジュールが変わっても起床時間は変えない」ことです。前日に夜遅くまでセッションがあって、次の日が午後からの仕事だとしたら、早く起きる必要はないように思いますよね。でも、そんな日も含め、私は毎朝6時には起きています。寝るのは早い時で夜11時、遅ければ12~1時になるのですが。

起床時間が日によって変わると体のリズムが狂い、たいてい体調を崩してしまうのです。トレーナーが体調を崩すと、クライアントに迷惑をかけてしまうので、起床時間だけは守り、生活のリズムを変えないことを重視しています。ですから私の寝室は薄いカーテンを引いているだけで、朝はできるだけ太陽の光で起きることを心がけています。冬は日の出が遅いので少し困りますけどね。

サーカディアンリズムを乱さない生活が体調を維持する

人間には、サーカディアンリズムという約24時間周期で変動する生理現象があります。それに合わせた生活をするのが、体調を崩さないためには大切なのです。ただ厄介なのが、厳密に24時間周期ではないということです。どこかのタイミングで調整しないと、だんだん夜型のリズムに変調していくのです。そこで大事になるのが、朝、太陽の光を浴びること。こうすることで、脳内物質であるセロトニンが分泌されます。それによって体が活性化し、リズムの狂いを修正することができるのです。

このサーカディアンリズムは、概日リズムや単純に体内時計などともいわれますが、調整方法を覚えると時差ボケの予防にも役立てることができるんですよ。

例えば海外遠征に同行する時、飛行機に乗った時点で、日本は昼間でも、現地があと2時間で夜中の12時になるとします。その場合、私は睡眠導入剤を利用してでも寝ることにしています。その時点で現地時間に合わせておくと、時差ボケせずに済むんです。到着してから私が時差ボケで参っていると、選手に適切なアドバイスができませんからね。逆に日本を出発するのが夜で現地が朝や昼であれば、頑張って寝ないようにします。時差ボケをフライト中に調整してしまうのです。

ただ3年ほど前に1週間休みをもらって、完全なプライベートでロサンゼルスに遊びに行ったときは失敗しました。自分が以前住んでいた場所ですし、仕事でもないので、先ほど言ったような調整をせず、飛行機の中で映画を観て過ごしたのです。そうしたら滞在中、ずっと体がだるくて。帰国してからも、少しの間、おかしな感覚が残って、調整に時間がかかってしまいました。やはり、リズムを崩さないようにすることは大切です。

就寝前に脂肪分が多い食事をしない

睡眠の質を高めるという点で言うと、スケジュールの関係で夕食が遅くなってしまった場合、脂肪分が多い食事はとらないようにしています。脂肪は1gで9kcalと非常に効率の良いエネルギー源ですが、どうしても消化吸収に時間がかかってしまうからです。

例えば夕食にサーロインステーキを食べたとします。すると、たんぱく質も多いですが脂身も多いので、消化するのに4時間半から5時間もかかります。そんなものを寝る直前に食べてしまうと、内臓は朝起きるまで働き続けることに。当然、エネルギーも使われるので、自分では寝たつもりでも体が休まりません。結果、サーカディアンリズムも崩れてしまいます。

私は夜遅い食事の時には、低脂肪のものを満腹にならない程度に食べますね。一番多いのが、レトルトのおかゆやゼリーといった消化しやすいもの。これは体脂肪を増やさない、つまり太らないようにするためにも大切です。

【夜遅くなったときの食事】
× 脂肪分の多いもの(サーロインステーキ、揚げ物、ポテトチップスなど)
 低脂肪で消化しやすいもの(おかゆ、ゼリーなど)

何も食べないまま夜遅くまで働くと、帰宅後についつい食べ過ぎてしまうものですが、その「むちゃ食い」が睡眠を台無しにし、体のリズムを狂わせます。ほんの少しの気持ちの切り替え、心がけで体調を崩さずに済むので、忙しい人ほど体のリズムをもっと意識してください。

(ライター 松尾直俊)

この人に聞きました

中野ジェームズ修一(なかの ジェームズ しゅういち)さん
フィジカルトレーナー/米国スポーツ医学会認定運動生理学士。1971年生まれ。日本では数少ない肉体面と精神面の両方を指導できるトレーナー。卓球の福原愛選手など日本のトップアスリートだけでなく、高齢の方の運動指導も行う「パーソナルトレーナー」として活躍。日本各地での講演も精力的に行っている。近著に「青トレ 青学駅伝チームのコアトレーニング&ストレッチ」(徳間書店)、「世界一やせる走り方」(サンマーク出版)など多数。

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