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年金は老後のためだけならず 新成人、未納は避けよう

2017/1/8

 1月9日は成人の日。毎年多くの男女が20歳を祝うが、成人に伴い国民年金への加入という新たな義務も生まれる。老後だけではなく、いざというときの生活を支える公的年金の役割を若者だけでなく親たちも一緒に考えて対応しよう。

 「大切なお知らせ」「20歳になったら国民年金」。新成人は誕生月の前月、こう書かれた封筒を受け取る。差出人は日本年金機構。封入された加入案内には「20歳以上60歳未満の日本国内にお住まいの方は、国民年金に加入することが義務付けられています」とあり、手続きの流れや保険料を記してある。「国民年金被保険者資格取得届書(20歳適用)」も同封されている。

■大学生「未納」3割

 この書類を提出すると年金手帳や国民年金保険料納付書が送られてくる。保険料は現在、月1万6260円(2016年度)、年間では20万円近くになる。

 案内をもらった側の対応として考えられるのは「保険料を納める」「猶予や免除の申請をする」「手続きをせず、保険料を払わない」(図A)だろう。大学生が公的年金についての考えや方策を発表する「ユース年金学会」(昨年11月開催)で報告されたアンケート(帝京大学の学生が6大学の1760人に実施)では、20歳以上の大学生は国民年金保険料を「支払っている」が24.5%、「特例制度で猶予」が45.3%、「支払っていない」が30.2%という3つに分かれた。

 最も避けたいのが保険料を払わずに未納にすること。「学生の多くは公的年金の知識が少なく、お年寄りのための制度としか思っていない。きちんと手続きをすれば、一家の大黒柱でなくても遺族年金は出るし、障害年金も受け取れる」と社会保険労務士の望月厚子氏は指摘する。公的年金は老後の暮らしだけでなく、若くても障害を負った人や遺族の生活も支える。だが保険料を払っていないとそれも受け取れない。

 障害年金や遺族年金の支給には要件がある。障害基礎年金は20歳から初診日の前々月までのうち、保険料の納付済み期間(免除・猶予含む)が3分の2以上、または初診日の前々月までの1年間に未納月がゼロといった具合だ。「だれでも受け取れると思って相談に来て、要件を満たせずに驚く人もいる」(望月氏)。保険料を払わなければ老後に受け取る年金額も減るが、20代にとっては遠い将来の受取額より、ケガや病気のリスクの方が身近かもしれない。

 東京都内の大学に通っていたAさん(当時22歳)は精神疾患を患い、休学することになった。状態がひどく、精神の障害でも障害年金をもらえることを知った両親が年金事務所に相談したところ、年78万円台の2級の障害基礎年金を受け取れることになった。きちんと毎月保険料を支払っていたからだ。Aさんは復学はできていないが、年金を受け取りながら作業所で短時間働いているという。

 「本人が自分で稼いで保険料を払うのはなかなか難しい。経済的に余裕があるなら親が払ってあげるのが望ましい」と話すのは、ファイナンシャルプランナー(FP)の山崎俊輔氏。前出のアンケートでも「支払っている」の中には親が出している可能性がある人もいるだろうし、「支払っていない」と答えた人でも実は親が払っている場合があるかもしれない。20歳の年金手続きについて年金事務所などに寄せられる問い合わせも「親御さんからの方が多い」(日本年金機構)という。

■年170万人が利用

 親が代わりに払うだけでなく、就職するなどで独り立ちしたら返してもらうのもよい。どちらもその旨を本人に伝えておこう。「国民年金の保険料を払っておいたが、将来のあなたのためになる」などと話せば、本人の年金に対する意識が高まるだろう。親が未納だと子も未納になるとよくいわれる。最も身近な大人である親が年金に肯定的な姿勢を示せば、子どもに受け継がれるかもしれない。

 自分で払えず、親にも頼めない人は猶予や免除を申請する方法がある。承認されれば、保険料を払わなくても納付期間に算入できる。その代表が「学生納付特例」だ。大学や短大などの学生を対象に2000年度に導入された。利用者は年間170万人を超える。市町村の窓口などで申請をするが、手続きを受け付ける学校(学生納付特例事務法人)も徐々に増えてきた。

 「学生は納付特例、無職の人などは免除を申請すべきだが、特例は全く年金額に反映されず、免除も全額反映されるわけではない」とFPの山崎氏は注意を呼びかける。追納(10年以内)しなければ、将来もらう年金額は減ってしまう。学生納付特例は年度ごとに申し込む必要があり、2年1カ月分までさかのぼって申請できる。

 国民年金の加入は社会の一員になったひとつの区切り。親も交えて、適切な対応を選びたい。(土井誠司)

■前納すれば割引 控除の対象にも
 国民年金の保険料は前納すると割引がある(表B)。まとめて払う期間は6カ月、1年、2年などがあり、期間が長いほど割引額は大きくなる。払い方には現金払いや口座振替などがあるが、申し込みの締め切りに注意が必要だ(1年前納や2年前納の口座振替は毎年2月末日)。2年前納はこれまで口座振替しかなかったが、4月から現金払いとクレジットカード払いが導入される。
 国民年金の保険料は全額が社会保険料控除の対象となる。親が代わりに払った場合は親が控除を受けられる。2年分を前納すると、納めた年に全額控除するか、各年ごとに控除するかのどちらか選ぶことができる。

[日本経済新聞朝刊2017年1月4日付]

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