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ファンが愛した「勝ち気なレイア姫」C・フィッシャー

日経エンタテインメント!

2016/12/30

映画『スター・ウォーズ』(SW)シリーズのレイア姫役で知られる女優のキャリー・フィッシャーが2016年12月27日にアメリカ・ロサンゼルスで亡くなった。60歳だった。23日にロンドンからロサンゼルスに向かう飛行機内で心臓発作を起こし、病院で治療を受けていた。

2016年7月17日、ロンドンで開かれたファンの祭典「スター・ウォーズ・セレブレーション2016」に参加したマーク・ハミルとキャリー・フィッシャー(右)。(c)REX FEATURES/アフロ

フィッシャーは、レイア姫役で演じた行動的で勝ち気、ユーモアやウィットにも富んだプリンセスというキャラクターが見事にハマり、世界的な人気者になった。その印象があまりに強烈だったため、女優としては他に代表作となる出演映画に恵まれなかったが、SW後はむしろクリエイターとしてその才能を開花させた。ドラッグにおぼれて復活する女優を主人公に書いた自伝的小説や、自らの半生を題材にした独り舞台を生み出すなど、創作活動は多岐にわたり、内容も高く評価された。芸能一家に生まれ、幼い頃から起伏に富んだ人生だった。

■「自分にも、レイア姫と共通する性格」

キャリー・フィッシャーの波瀾(はらん)万丈の人生を振り返ろう。数多くのヒット曲を生み出した歌手エディ・フィッシャーと、『雨に唄えば』の女優デビー・レイノルズの娘として1956年にカリフォルニア州ハリウッドで生まれた。大物カップルの娘として脚光を浴びたのも束の間、彼女が2歳の時に父エディと女優エリザベス・テイラーが不倫関係となり、両親は離婚。彼女は母の元で暮らす。

15歳の時に母が出演するミュージカルでブロードウェイデビューを果たし、75年に『シャンプー』の端役で映画デビュー。77年の『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』の出演が2作目だった。

「同世代の素晴らしい女優がいたので、私が選ばれるとは思わなかった。レイア姫は勝ち気な性格だけど、私もそういうところがある。はにかんだお姫様なら、私は選ばれなかった。人物に合わせた配役なの」(ドキュメンタリー番組『夢の帝国 スター・ウォーズ・トリロジーの歴史』)と、フィッシャーは当時を振り返っている。

SWファンは、ハン・ソロと常に反目し合うも次第に引かれ合う「勝ち気なレイア姫」を愛した。だから『エピソード5/帝国の逆襲』で、ハン・ソロが囚われの身となり、別れ際にレイア姫が「愛してるわ」と告白する場面は、多くのSWファンがお気に入りにあげる有名なシーンである。

レイア姫役で一躍スターとなったフィッシャーだが、この名声は彼女に無力感を抱かせることにもなる。「妙な感じで有名だった。だって私は子ども向けのマンガのキャラクターだったのよ。ぜんぜん、他の仕事のプラスにはならなかった」(ジョン・バクスター著『ジョージ・ルーカス』より)。

ルーカスは、彼女をミュージカル映画『グリース』(78年)の監督に推薦したが、起用されなかったという。80年に『エピソード5/帝国の逆襲』、83年に『エピソード6/ジェダイの帰還』とSWシリーズ2作に出演するが、77~83年にかけて他に出演した映画は『ブルース・ブラザース』(80年)、『Under The Rainbow』(81年、日本未公開)の2本のみ。この間、ハリソン・フォードは出演作が相次ぎ、『ナバロンの嵐』(78年)、『ハノーバー・ストリート/哀愁の街かど』(79年)、『地獄の黙示録』(79年)、『フリスコ・キッド』(79年、日本未公開)、『レイダース/失われたアーク』(81年)、『ブレードランナー』(82年)と6本に出演したのとは対照的だった。

フィッシャーは77年から付き合い始めた歌手のポール・サイモンと83年に結婚するもわずか1年で離婚。ドラッグにおぼれるなど、すさんだ生活を送る。

■自伝的小説の執筆きっかけ、創作活動へ

転機が訪れたのが87年。自伝的小説『崖っぷちからのはがき』を発表する。ドラッグから抜け出そうとする女優を主人公に、大女優の母親との親子関係を交えて描いたもの。小説はベストセラーとなり、映画化にあたっては自ら脚本を担当。90年に『ハリウッドにくちづけ』のタイトルで公開される。主人公を演じたメリル・ストリープがアカデミー賞主演女優賞にノミネートされ、作品自体も高い評価を受ける。

以降フィッシャーは、映画のスクリプトドクター(脚本の書き直し担当)として『天使にラブ・ソングを…』(92年)や『ウェディング・シンガー』(98年)に携わったり、テレビシリーズ『ヤング・インディ・ジョーンズ・クロニクル』(93年)や『ロザンヌ』(97年)の脚本を執筆するなど、裏方として活躍の幅を広げる。

女優業にも積極的に取り組むようになり、『恋人たちの予感』(89年)、『ソープディッシュ』(91年)、『オースティン・パワーズ』(97年)などの映画に出演。テレビドラマにも『ヤング・スーパーマン』(05年)や『アントラージュ★オレたちのハリウッド』(10年)などにゲスト出演している。

映画のアカデミー賞でのノミネート歴はないものの、テレビのエミー賞では2度ノミネートされている。08年に『30 Rock/サーティー・ロック』でドラマシリーズ部門のゲスト女優賞と、10年に『Wishful Drinking』でバラエティー、ミュージック、コメディースペシャル部門の作品賞候補となっている。『Wishful Drinking』は自らの半生を独り舞台として全米各地で演じた演劇作品。エミー賞でノミネートされたのは、有料チャンネルHBOがその舞台を題材にドキュメンタリー番組としたものだ。自伝的小説『崖っぷちからのはがき』同様、レイア姫役でスターに上り詰めるまでやその後の薬物依存などを、赤裸々に、だがユーモアたっぷりに演じている。

■32年ぶりにレイアを演じて、ファン感激

16年11月には回顧録『The Princess Diarist』を発売。「『スター・ウォーズ』撮影中の3カ月間、ハリソン・フォードと不倫関係にあった」と明かし、世界中を驚かせた。

そのSW最新作となる、『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』(15年)では実に32年ぶりにレイアを演じた。銀河宇宙の支配を目論むファースト・オーダーに立ち向かうレジスタンスの将軍となっていたレイア・オーガナは、出演場面こそハン・ソロと比べて少なかったが、堂々とした立ち居振る舞いがレイア姫をほうふつとさせ、ファンを喜ばせた。

なお、『スター・ウォーズ/エピソード8(仮題)』(17年12月15日公開)の撮影は既に終えていたという。スクリーンでレイアを見られるのは、これが最後となる。

レイア姫で、女優としての輝かしいキャリアの幕を開けたキャリー・フィッシャー。晩年になり、再びレイアとしてSWに戻って来てほどなく、その幕を閉じることになったのも運命の巡り合わせだろうか。勝ち気なレイア姫の勇姿は、映画史、そしてファンの脳裏に永遠に残り続ける。冥福をお祈りする。

(ライター 相良智弘)

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