17年のトレンド、気負わないエレガンスの目指し方
宮田理江のおしゃれレッスン
2017年のおしゃれはエレガンスと楽観が同居するテイストが人気を博しそうです。世界のモードを方向づけるパリコレクションでは、17年春夏向けにレディー感とガーリーさをミックスしたような装いが提案されました。イタリアの老舗ブランド「VALENTINO(ヴァレンティノ)」のショー会場に現れたセレブリティーたちもそういった気分を写し込んだ着こなしを披露。アイキャッチーでありつつ、品格を帯びた思い思いのアレンジは「気負わないエレガンス」のロールモデルといえそうです。
ロマンチック・ディテールは別ムードに合わせて
シャツやブラウスの袖で着姿にウィットを利かせるアレンジが支持されています。これまで袖はストレートが主流でしたが、近ごろは肩口をふくらませたり、袖先を裾広がりにしたりと、ボリュームで遊ぶ趣向が盛り上がってきました。女優のジェシカ・アルバさんがまとったシャツは、手首から先がフレアスカートのように開いてロマンチックな風情。鐘のような形はベルスリーブと呼ばれ、人気が復活しています。
レーススカート越しにシャツの裾を透かし見せて縦長イメージを強調。縦縞のシャツはオフィスでもおなじみですが、こういったたおやかなスカートと組み合わせれば、別の表情を引き出せます。ムードの違うウエア同士のミックスは、こなれた着こなしへの近道。手持ちワードローブの着回し力アップにもつながります。さらに2017年は「赤」が再評価される気配。こちらも今から取り入れておきたくなります。
ジェンダーミックスもエレガントに仕上げる
アートディレクターのソフィア・サンチェス・デ・ベタクさんは、透かし模様のきれいなロングスカートをチョイス。腰のあたりでストライプと刺しゅう柄を重ね合わせています。足元はブーツでドレスダウン。ジェシカ・アルバさんの着方とも共通しているのは、メンズ風味の縦じまシャツとフェミニンなレーススカートを響き合わせる「ジェンダーミックス」の味付け。お仕事仕様のシャツを多彩に着回す際のヒントになりそうな「男女混合」のさじ加減です。
実はこちらのシャツはジェシカさんと同じようなベルスリーブ。しまの太さは違えど、白地に水色ストライプである点も同じ。でも、こんなに異なる着映えに仕上がっています。1着を別ムードで何通りにも着こなすスタイリングのお手本のよう。よく見ると、ジェシカさんはシャツのボタンを多めに開けていたのに対して、こちらは上まできっちり留めて、ケープ風の掛け巻き物をオン。視線をぐっと上に引き上げています。
大きめの柄を効果的に利用
両肩を露出するオフショルダーは2017年も勢いが続きそう。やや大胆な肌見せをためらう人もいますが、素肌に近い色を選べば、目立ちすぎない見え具合に。さらに、肩から離れた位置に、割と目をひく柄をあしらうと、視線が肩周りから離れます。ファッションリーダーとして名高いオリヴィア・パレルモさんはトップスのボーダー(横じま)柄と、スカートの植物柄で着姿を弾ませています。露出が気になる場合は透ける薄物をかぶせて調節してもいいでしょう。
かつては複数の柄や模様を組み込むと、モチーフ同士がぶつかってうるさくなってしまうといわれたものです。ところが、近ごろは「柄on柄」というコーディネート技として、むしろ上級者の好むアレンジに昇格。ダイナミックなフラワーモチーフは17年の注目トレンドです。花柄は愛らしい印象を持たれがちですが、堂々とした大きめ柄で打ち出すと、モダンアートのような見栄えに。ハイウエスト部分にたっぷりギャザーを寄せ、無造作にベルトの端を垂らした演出が伸びやかで優美な景色を生んでいます。
主張のあるディテールで印象的に
SNS上での見栄えの面白さがファッションでも重視されるようになり、ちょっと「過剰」なボリュームがブームになってきました。オーバーサイズの上をいく「エクストリーム(極端)シルエット」は、おしゃれに茶目っ気を添えてくれます。ポーランド出身の女優カシア・スムトゥニアクさんが着た、指先まで隠すほどのスーパー長袖のニットトップスは、子どもが大人のセーターを着たときのような愛くるしい雰囲気を生んでいます。
透かし模様を施したカットワークのスカートは上品なたたずまい。ウエストは少しだけ切れ込ませてお腹をチラ見せ。肌をのぞかせた面積はほんのわずかなのに、程よくフェミニンさを印象づける上級者技です。黒と白でまとめたシックなカラーバランスですが、単調に見えないのは、エクストリーム袖とカットワークのおかげ。ディテールに少しの主張を盛り込むだけで着映えにこれほど深みが出るという好例です。
17年のファッショントレンドは全体的に「若返り」が進みます。幼く見えないガーリーさが多くのランウエーで提案されていて、「ヴァレンティノ」の17年春夏コレクションもフレッシュなムードに包まれました。イタリアを代表するブランドだけに、気品を大切にしながら、ポジティブでさわやかな風情をまとわせています。エレガンスを基調にした装いを好む「エレ女」が日本でも増えてきたという流れもあり、節度や上品さを軸にしつつ、若々しさや遊び心を差し込んだスタイリングは17年に広く支持されていきそうです。
VALENTINO http://www.valentino.com/jp
ファッションジャーナリスト、ファッションディレクター。多彩なメディアでランウエーリポートやトレンド情報、リアルトレンドを落とし込んだ着こなし解説などを発信。バイヤー、プレスなど業界での豊富な経験を生かした、「買う側・着る側の気持ち」に目配りした消費者目線での解説が好評。自らのTV通版ブランドもプロデュース。セミナーやイベント出演も多い。著書に『おしゃれの近道』『もっとおしゃれの近道』(学研パブリッシング)がある。公式サイト:http://riemiyata.com/
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