新生iDeCo、公的年金にプラスでゆとりの老後iDeCoをマネーハック(1)

個人型DCの愛称「iDeCo」を発表する元プロテニス選手の杉山愛さん(右)と橋本岳厚生労働副大臣(9月、厚労省)
個人型DCの愛称「iDeCo」を発表する元プロテニス選手の杉山愛さん(右)と橋本岳厚生労働副大臣(9月、厚労省)

あけましておめでとうございます。今年もお金の常識を疑ったり、発想を転換したりすることで、新しい時代のお金との付き合い方を考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

さて、今月のテーマは1月にスタートしたばかりの「iDeCo(イデコ)」という制度です。「何それ?」と思っている人、知らないと損をしますよ。

15年目の大リニューアル

2017年1月、個人型確定拠出年金と呼ばれていた制度はiDeCo(イデコ)というニックネームを得てリニューアルすることになりました。iDeCoは個人型(individual-type)確定(Defined)拠出年金(Contribution pension plan)の略だそうです。

個人型確定拠出年金は02年1月からスタートした制度でしたから、15年目の大刷新ということになります。今回は「現役世代なら原則、誰でも入れるようになる」という大きな変化があり、ざっくり数えても2500万人が新規対象になります。

具体的には、毎月の積立額の上限は次のようになります。

(1)自営業者など(国民年金の第1号被保険者)…月6.8万円(国民年金基金の掛け金との合計で)

(2)会社員(企業年金などがない)…月2.3万円

(3)会社員(企業年金などがある)…月1.2万円

(4)公務員…月1.2万円

(5)専業主婦など(国民年金の第3号被保険者)…月2.3万円

最低5000円から1000円刻みで積立額は決められます。

会社員でも企業型の確定拠出年金にすでに加入している場合は、会社が認めた場合(制度変更が必要)に限って、iDeCo加入ができます(積立額の上限は月2.0万円。企業年金ありの場合は月1.2万円)。

ポイントは税金の免除

誰でも入れるようになったということだけがiDeCoのすごさではありません。iDeCoの本質を簡単に言い切ってしまえば、

「自分の老後のためにお金をためる人は、国は税金を免除するので、制度を使った方が得ですよ」という仕組みです。

まず、毎月積み立てるお金(掛け金)については所得税や住民税がかかりません(所得や住民税の控除の状況によるが、税率は15~20%あるいはそれ以上のことも)。さらに、積み立ててきたお金を増やした利益(利息や運用益)にも税金がかかりません(原則20%課税)。つまり積み立て段階と運用段階のダブルで非課税になります。

一方、退職後の受け取り時には税金がかかりますが、現役時代より税率が低いため、受取額はゼロもしくは低額で済みます(一時金受け取りの場合は退職所得控除、年金受け取りの場合は公的年金等控除の対象)。

仮に月1.2万円を22歳から60歳まで積み立てると、元本は547.2万円になります。所得税と住民税の実質負担率を20%と仮定すれば(所得や住民税の控除の状況で実際には一律ではない)、109万円も税負担が軽減されることになります。

運用益が年平均3%とすると、最終受取額は976.3万円まで増えます(口座管理手数料として毎月500円引かれたと仮定)が、これも20%課税されると855.0万円までしか増えません(税金で引かれる額は121.2万円)。

要するにiDeCoを使えば、「人生で200万円以上税金を納めずに済み、その分、自分の老後に使ってよい」という老後を豊かにする仕組みなのです。マネーハック的に考えても、これほどおいしい話はありません。

公的年金を補う存在

こういう制度をスタートさせるにあたっては、必ず国民年金や厚生年金といった公的年金について、批判的な意見が出ます。実際、「公的年金は破綻するのか」とか「公的年金だけでは生活できないのか」という声もあります。しかし、iDeCoはそもそも、公的年金を代替する制度ではありません。

少子高齢化、特に長寿化が進展する中で世界中の国が公的年金の制度維持に悩んでおり、保険料を上げるか、受給開始年齢を遅らせるか、給付額を減らすかの選択を迫られています(あるいは3つの選択肢を組み合わせることもあり得る)。当然ですが、どれも国民の痛みが伴い、実行は簡単ではありません。

公的年金には、老後の基礎的な生活費をまかなう程度の役割の維持が求められますが、それ以上の豊かさを求めるのは難しくなっています。このとき考えるべきは「基礎的な生活費は公的年金に、ゆとりや豊かさの備えは自分で」という発想の転換です。

公的年金の縮小傾向と同時に世界的トレンドとなっているのがまさに、自助努力による老後の積み立てを行う制度の提供です。日本でその「器」となるのがiDeCoです。公的年金とiDeCoの組み合わせによって、バラ色老後の実現を目指しましょう。

今回はiDeCoのイントロダクションでしたが、今月は5回にわけて、iDeCo活用術を紹介してみたいと思います。関連書籍に書かれていないようなヒントや最新情報も含めてお話できればと思います。お楽しみに。

マネーハックとは ハックは「術」の意味で、「マネー」と「ライフハック」を合わせた造語。ライフハックはITスキルを使って仕事を効率よくこなすちょっとしたコツを指し、2004年に米国のテクニカルライターが考案した言葉とされる。マネーハックはライフハックの手法を、マネーの世界に応用して人生を豊かにしようというノウハウや知恵のこと。
山崎俊輔(やまさき・しゅんすけ) 1972年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。AFP、消費生活アドバイザー。企業年金研究所、FP総研を経て独立。退職金・企業年金制度と投資教育が専門。所属は日本年金学会、東京スリバチ学会。近著に『お金が「貯まる人」と「なくなる人」の習慣』(明日香出版社)『誰でもできる 確定拠出年金投資術』(ポプラ新書)などがある。趣味はマンガ読みとまちあるき(看板建築マニアでもある)。Twitterアカウントは@yam_syun。ホームページはhttp://financialwisdom.jp

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