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認知症疑いの親 運転をやめてもらうコツは

日経Gooday

2016/12/30

説得してもうまくいかない場合に、鍵を隠すなどして、やめさせることに成功したケースも(c)Andres Rodriguez-123rf
日経Gooday(グッデイ) カラダにいいこと、毎日プラス

 認知症が疑われる高齢者による自動車事故のニュースが増えている。もし自分の親が事故を起こしたらどうしようと心配になる人も少なくないだろう。事故を起こしてしまう前に運転をやめてほしいが、まだしっかりしている人に運転をやめろとは言いにくい。どのタイミングでやめてもらうのがいいのか。また、具体的にどう説得すればいいのか。認知症の人と家族の会全国本部の副代表理事でもある川崎幸クリニック院長の杉山孝博さんに話を聞いた。

■運転をやめてもらうタイミングは?

 「認知症と診断されたら、免許は返上しなければなりません。もちろん、安全のために、認知症の兆候が出た段階で運転はやめてもらう必要があります」と川崎幸クリニック院長の杉山孝博さんは言う。

 ただし、認知症は今日から認知症と区切れるものではない。徐々に進行していくため、認知症になっても周囲が気付きにくいケースも少なくない。運転をやめさせるタイミングとして、見逃してはならない変化は何だろうか。杉山さんによれば、次の8項目のうち、ひとつでも当てはまれば、やめさせるタイミングになるという。

杉山先生の話を基に編集部で作成

 こうした兆候に注意しつつ、例えば、壁をこすってしまったり、標識を見落としたりなど、本人が運転に不安を感じた時に「危ないから運転をやめようね」と、説得すると比較的うまくいくことが多いそうだ。

■運転をやめさせるコツはあるか

 認知症の疑いがある親に「人身事故でも起こしたらどうするの?もう運転はやめたほうがいいよ」と言っても、「何年運転してきたと思っているんだ。ばかにするな」と聞き入れてもらえないケースも少なくないだろう。どうすればいいのだろうか。

 「危ないから運転をやめろと言っても、認知症になると頑固になって、特に介護者である身近な家族の言うことはなかなか聞いてくれなくなります」と杉山さんは話す。

 ではどうすればいいのか。

 「家族の言うことに耳を貸さない人でも、友人や医者の言うことは聞いてくれる場合は多いので、友だちや主治医から話してもらうのも一案です」と杉山さん。孫に「心配だから」と言ってもらうことで、やめさせられたケースもあるという。

 一方、説得してもうまくいかない場合は、車のバッテリーを上げて「故障して動かなくなった」と言い、あとは「修理に出した」と隠してしまうケース、あるいは車のキーが見つからないようにするケースなど、半ば強制的にやめさせることに成功した例もあるという。

 「様々な人に説得してもらっても、聞き入れてもらえない場合には、強制的に車から引き離してしまうのもやむを得ません。無理に運転をやめさせると、認知症が進むのではないかと考えるご家族もいるようですが、認知症はいずれ進むものです。それに、事故は起こしてからでは取り返しがつきません」と杉山さんは話す。

 もちろん、認知症の疑いがあっても高齢者が運転をやめられない理由には、「運転するのが好きだから」だけでなく、「運転できないと生活や仕事が成り立たないから」というものもある。地域によっては車がないと「買い物に行けない」「病院に行けない」「友だちと会うこともできない」となってしまう。そうしたケースを考えると、認知症になった高齢者に自動車の運転を諦めてもらう一方で、それに代わる交通手段といったインフラも、急ぎ整備していく必要がある。

 その話はまた別の機会に譲るが、まとめとして強調したいのは、運転をやめさせるには、認知症の疑いがある高齢者の気持ちを理解して、その人その人にあった対応をすることの大切さだ。これがダメなら、別の方法、それもダメならまた別の方法というように、やめてもらうまで根気よく続けることが重要だ。

【認知症の疑いがある高齢者が免許返納できない主な理由】
1.車に乗るのが楽しいから
2.生活や仕事に必要だから
3.運転に自信があるから
4.免許が身分証明書代わりだから
【運転をやめさせるための工夫】
1.車がなくても生活に支障がないように整備する
2.運転の仕方、事故への不安をさりげなく話して自発的に運転をやめるよう促す
3.車を壁にこすってしまったり、標識を見落としたりして、本人が運転に不安を感じた時に、危ないから運転をやめようねと、説得する
4.免許を返納すると、「運転経歴証明書」を申請できる。これが身分証明書の代わりとなることを説明する

(ライター 伊藤左知子)

■この人に聞きました

杉山孝博(すぎやま・たかひろ)さん
 川崎幸(さいわい)クリニック院長。1947年愛知県生まれ。東京大学医学部付属病院での内科研修を経て1975年川崎幸病院に内科医として勤務。1998年9月川崎幸病院の外来部門を独立させて川崎幸クリニックが設立し院長に就任、現在に至る。公益社団法人認知症の人と家族の会(旧呆け老人をかかえる家族の会)全国本部の副代表理事、神奈川県支部代表。公益社団法人日本認知症グループホーム協会顧問。「これでわかる 認知症」(成美堂出版)、「認知症の人のつらい気持ちがわかる本」(講談社)など多数。

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