
あけましておめでとうございます。
本年の十二支は酉(とり)。ぜひ大空へ羽ばたくトリのような年になるよう望みたい。
昨年の日本株相場を振り返ってみると、年次ベースではまるで何も起こらなかった1年間のように見える。2016年年間(12月28日時点で15年末と比較)の騰落率はTOPIX(東証株価指数)はマイナス0.7%、日経平均株価はプラス1.9%である。
しかしながら、16年は春の日銀のマイナス金利政策導入、初夏のブレグジット(英国による欧州連合離脱決定)などのショックにより、6月末の時点ではTOPIXはマイナス19.5%、日経平均はマイナス18.2%も下落していた。
一方、米国のトランプ次期大統領の誕生により、年末に向けて相場は大幅に上昇。端的にいえば「行って来い」であった。1年を通すと大変目まぐるしい展開となった。株価の下落局面で潜在的な損失に耐えきれず、保有株式を手放した人もいるだろう。そうした人にとって16年は恨めしい年だったといえる。
「積み立て投資」の良さを知るべき
しかし、実は16年は日本株投資にとって好調な1年であったといったら信じてもらえるだろうか。それも高度な投資テクニック、複雑な金融商品、あるいははやりのフィンテック(金融とITの融合)を用いることなく、誰でも楽に2桁の収益を上げられた1年という事実があった。
「魔法」ではない。定期定額の「積み立て投資」である。15年の12月から毎月末に定額を12カ月買い付けた場合、収益は16年12月28日時点でTOPIXはプラス12.3%、日経平均はプラス13.9%になる。同じ1年でも15年12月に一括に購入して16年12月年末に評価した「スポット買い」では冒頭の通り、ほとんどもうけがない。
仕組みは極めて簡単だ。毎月定額を買い付けるということは、相場下落で購入単価が下がれば、より多くの口数を購入する。この口数が増えることが単価が回復したときに大きく利益貢献するのだ。
このことは、積み立て投資を実践している長期投資家にとっては常識的である。つまり長期投資家は相場が下がれば将来への楽しみが増える。しばらくして実際に相場が上昇すれば喜びとなる。
こんな簡単な、そして気持ち良い投資の存在にもっと大勢の日本人に気付いてほしい。こうした願いでファンドの運用会社を仲間たちと設立したのは8年前の09年1月だ。
30社に厳選投資する弊社の「コモンズ30ファンド」の16年の実績(12月28日時点)はプラス5.6%と市場平均を上回る。積み立て投資の場合は14.1%と日経平均と肩を並べ、6月時点ではマイナス15.7%と同指数より下げ幅が少なかった。ファンドの投資先である持続的な価値創造が期待できる企業には相場全体が大幅に下がるときに買いが入りやすいからだ。もちろん、過去の実績は将来の見込みを確実に示すものではない。ただ、昨年の「行って来い」のようなV字型の回復における期間では、一般論としてこの可能性が低くない。
しかしながら、長期投資家は単年度の運用収益に喜憂することがない。10年、20年、30年のタームで収益を考える。その期間中、何回か「ショック」が起きるだろう。また、楽観的な「ユーフォリア」も何回か発生する。そんな大揺れの「ローラーコースター」に乗りたくないと思うかもしれないが、このような相場の大波をスイスイと乗り切れるのが積み立て投資である。
17年度予算編成では社会保障分野が重荷となって歳出が増えるなど、政府の財政再建は手詰まり感が目立つ。相互扶助の制度は社会の要であるものの、自助の意識を高めることも不可欠だ。弊社の口座件数を年齢別で検証すると、全体のおよそ3分の2が30歳代、40歳代の現役世代及び彼らの子どもである。自分と子どもたちの将来の生活のために資金を準備している一般世帯だ。
新しい年が明けた元日であるからこそ、改めて考えていただきたい。「今日よりも、良い明日」のため、「自分が今からできることは何か」と。
2017年も何が起きるかわからない
世の中の先行きは今年も不透明だ。トランプ米次期大統領は市場の動きを意識しているに違いない。選挙中に、自分の支持者が喜ぶことを大声でほえたトランプ氏。選挙後の市場の陶酔感からして支持率を保つためにも市場は最重要であると考えているであろう。したがって、市場が喜ぶことを今後も大声でほえるだろう。
しかしながら、選挙でトランプ氏を支持した人たちが、トランプ氏のファミリー、彼が政権に任命している長官などの暮らしと、自分たちの日常生活との乖離(かいり)に目覚めたら、支持率が下がることは避けられない。また、同じように市場が期待を裏切られたと感じるようになったとき、その反動は大きい。
トランプ氏とイエレン米連邦準備理事会(FRB)議長との対立も不確実性が高まる要素だ。18年に再任がないと考える議長は、自分の任期中に金融緩和政策の正常化を意識するあまり、金利引き上げのピッチが高まるシナリオもあり得る。
17年の欧州に目を向ければフランスとドイツという統合を推進してきた二大国の選挙が控える。英国、米国で台頭している自国第一主義の影響は市場の不安心理を刺激するであろう。
要は、17年も波乱要因が多く、何が起こるかわからない。市場の方向性も見えないので、相場も荒れるかもしれない。そんな1年間を動じず、楽な気持ちで過ごす投資戦略とは何か。やはり昨年と同様、「コツコツ積み立て」ではないだろうか。