N
オリパラ
スポーツイノベーション

2017/1/17

スポーツイノベーション

普通の感覚では手が出せない価格での取引がまん延すると、ファン離れも起きかねない(金券ショップの店頭)

観客の利便性向上につながる技術革新を

入場システムの技術革新はイベント主催者にとって救世主となるが、利用客の側に立つと別の風景も見えてくる。急な仕事でライブに行けなくなったから、友人に譲りたい。観劇の付き添いが父から母に変わった――。顔パス入場の例外にどう対応するかなど、今後の課題は多い。

そもそもチケット転売が問題視されるようになってきたのは、譲渡や転売という行為そのものよりも、その異常な取引価格に原因がある。転売サイトでは定価1万円以下の人気グループの公演チケットが10万円を超す高値となっているケースが多数見つかる。

定価と転売価格の差益は、主催者側には一切入らない。さらに普通の感覚では手が出せない価格での取引がまん延すると、ファン離れも起きかねない。

転売価格高騰の背景には、オークションやフリーマーケット、2次流通サイトといったネットを使った販路が整備されたことが背景にある。商品購入希望者に広く提示でき、座席位置が良いときは価格を競わせることで高収益が得られる。転売そのものを商売にする「転売ヤー」も増えているもようだ。

音楽ライブ市場は拡大している。ぴあ総研(東京・渋谷)によると、15年は5119億円と過去最高を記録した。CDなどの音源の販売が低迷する音楽業界にとって、ライブは重要な収入源だ。EMTGの冨田義博社長は「興行に関わるお金が音楽業界に還元されることが重要」と主張する。

利用客が求めるのは、適正価格で使い勝手がいいチケットだ。大勢のファンをひきつけることができれば興行側も潤う。転売チケットを追放するだけではなく、観客の利便性向上に寄与するような技術革新がエンターテインメントの健全な発展につながる。

(広沢まゆみ、新田祐司、諸富聡)

高額チケット転売問題 希少な公演チケットは高値で転売されやすい。従来から金券ショップを中心に売買されていたが、ネット上で数多くの取引サイトが開設され転売しやすい環境が整った結果、一部のチケットが極端に高い価格で取引されるようになっている。
 背景には「転売ヤー」と呼ばれる人たちの存在がある。定価と転売価格の差益で荒稼ぎしようとする個人・業者だ。主催者は転売禁止規定を設けるケースが多いが、守られていない。公共の場でのダフ屋行為は都道府県の迷惑防止条例などで取り締まれるが、ネット上では明確な禁止ルールはない。

[2016年12月26日付日経産業新聞]