2017/1/1

スタンフォード 最強の授業

2つめは、皆さんが仕事で成功するためには、リーダーシップ講座で「こういうふうにやりなさい」と教わった方法ではなく、現実的にうまくいく方法を身につけなければならないことです。実際、セミナーや研修などで教えているのは、現実ではうまくいかない方法ばかりなので、実践的ではありません。

世界をさらに繁栄させ、効率的にしていくためには、「効果的でない方法」を続けていてはだめなのです。

佐藤:日本でもリーダーシップをテーマとしたセミナーや講座は数多く開催されています。そこで教えられていることは、本当に全部、効果がないのでしょうか。

フェファー:全く効果がないとは言い切れませんし、全部ウソというわけでもないでしょう。ただし、こうしたセミナーでは、こういう世界だったらいいなという希望的観測を前提にリーダーシップを教えていますから、そのまま実行すると必ず失敗します。現実と向き合い、現実的な方法をとって、初めてリーダーとして成功できるのです。

もしあなたが社内で何か改革をしたいと思ったとしましょう。改革をするには、それなりの権力が必要です。権力を得るためには、出世しなくてはならない。そのためには確実に出世する方法を知っておかなくてはならないのです。

トップ企業の経営陣、アジア人は2%

佐藤智恵(さとう・ちえ) 1992年東京大学教養学部卒業。2001年コロンビア大学経営大学院修了(MBA)。NHK、ボストンコンサルティンググループなどを経て、12年、作家・コンサルタントとして独立。「ハーバードでいちばん人気の国・日本」など著書多数。

佐藤:フォーチュン500社のうち、最高経営責任者(CEO)と経営幹部に占めるアジア人の比率はわずか2%だそうですね。なぜ日本人やアジア人はグローバル企業でリーダーとして正当に評価されていないのでしょうか。

フェファー:アジア人は一般社員としてはとても優秀なのです。特にエンジニアや研究者としては、非常に高い評価を得ています。ところがそこから出世していくのに、皆とても苦労しています。調査結果によれば、その理由は彼らの出世方法が非効率的だからだそうです。

アジア人は自分で自分を売り込むことをしませんし、社内で目立とうとは思いません。欧米人と比べるとアグレッシブさが足りないですし、権力がある人のようにふるまうのも下手です。だから、グローバル企業では相応な評価を得られないのです。

佐藤:欧米人のように賢くふるまえば、もっと出世できるはずだということですね。

フェファー:そうです。こうしたニーズに応えて、スタンフォード大学経営大学院では、アジア系リーダーを対象としたエグゼクティブ講座を開講しています。授業では、欧米流の職場環境でどのようにうまく生存していくかを教えています。欧米企業においては、特に立ち居振る舞いが重要なのです。エグゼクティブは存在感を示し、力強い印象を与えなくてはなりません。そこが日本企業とは少し違っているところかもしれません。