もうすぐ2016年が終わります。今年も本当に多くの家計相談をお受けしてきました。家計相談が世の中の人たちに認識され広がってきたのか、毎年、家計相談の件数が伸びています。家計相談の内容は年によって傾向が変わります。今年の傾向を大きく捉えると、「守り」だけではなく「攻め」にも関心が出始めてきた年だと率直に感じます。
■投資への関心高まる
今年は日銀によるマイナス金利の導入や年初からの株価変動などの影響か、投資に関心を持つ人の裾野が広がってきたように思います。今までコツコツと預貯金を増やしてきた人たちも、「銀行口座に預けっぱなしでいいのか……」「何かすべきなのではないか……」と不安を抱き、投資に関心を持ち始めたのでしょう。
とはいえ、投資にはリスクが伴うということをほとんどの人は知っているので、投資に興味を持ちながら「本当に自分がやってもいいのかよくわからない」「どのように始めたらいいのかわからない」「そもそも、投資とはどういうことなのかがわからない」と、行動に移せなかった人も多くいました。
逆に投資のリスクについて学び、個人型確定拠出年金(DC、愛称iDeCo)や少額投資非課税制度(NISA)などの税制優遇に魅力を感じ、投資を始めようと動き出した人も多くいました。これらの非課税制度だけでなく、自分でネット証券を比較検討して課税口座を開設し、コツコツと投資と向き合っていこうとする人もよく目にしました。
ただし、今年についていえば、株式市場も為替市場も非常に値動きの激しい年でしたので、投資を始めたくても尻込みしてしまったという人も少なからずいたようです。個人型DCやNISAにはメリットだけではなくデメリットがあります。知識を持たずに始めることはお勧めしません。今年も学ぶことが大切な年だったといえるでしょう。
今年6月に発売になった私の著書『はじめての人のための3000円投資生活』(アスコム)が発売半年で38万部のヒットとなりました。超初心者向けで、投資の考え方や始め方などについて書いた本です。
「何かをやらなければ、このままの状態ではダメなのではないか。でも、損はしたくない。老後資金にも不安がある」――。このような風潮を背景に本が売れたのではないかと思っています。投資に対する意識の高まりが相談内容にも如実に表れた1年になりました。
■年の差婚家計と晩婚家計
属性としては「年の差婚の夫婦」や「晩婚・晩産の夫婦」も目立ちました。
年の差婚の夫婦の相談内容で多かったのは今後の生活についてでした。10歳近く、もしくはそれ以上の年の差があるご夫婦は「夫がもうすぐ年金生活に入るのに、妻は働くことに消極的」「子どもはまだ高校・大学を控え学費がかかるのに、妻に働いてくれとは言えない」「妻にもっとしっかりと家計管理をしてほしいのに、無駄遣いすら指摘しづらい」という状況に陥っている家計が多かった印象があります。
晩婚・晩産の夫婦はある程度年をとってからお子さんをもうけているため、教育費が必要なころに老後資金の不足に気がつくなど、大きな資金需要の時期が重なってしまうという相談が多かったです。共働きで必死に頑張っているのに、子どもの受験準備で塾などにお金をかけすぎ、いざ進学となると入学時の納入金を出すのも一苦労というご夫婦もいました。
どちらのケースもまずは、「今できることをしっかりやる」ことが、家計を強くするために必要です。そして夫婦で、または家族でお金について話し合い、問題点を共有することも非常に重要だと感じます。
■偏見は捨てよう
どのような状況にある家計でも、「家計を見つめること」が改善への第一歩になります。まずは現状と向き合い、今の状況を把握することが大切なのです。
また、投資をするかどうかは別にして、これからの時代は「食わず嫌い」はできるだけ避けたいものです。「投資は危ない」「投資は金もうけをしたい人だけがするもの」といったような偏った先入観はとっぱらい、まずは正しい情報を把握した上で利用するかどうかを判断しないと、賢明な選択とはいえないでしょう。
投資のみならず、お金や家計管理について知識がなかったり、誤解したりしている人は2017年を乗り切れないのかもしれません。年末年始はお金についてのご自身の姿勢を考え直すよい機会です。
